第十四話
「お待たせしました」
相変わらず時間ぴったしに翡翠は現れた。
しかし。
「……誰だお前……」
そこには見たことない女の子が立っていた。
黒髪で肩より少し短いくらいの長さの髪に、左耳の上に紺色の小さめのリボンをつけている。幼さが残る顔立ちで、翡翠とは違い眼鏡をかけていない。
まず髪の色からして違う。翡翠の髪は名前通り鮮やかな翡翠である。
そして服装もあまり翡翠が好まない色が派手なものだ。
よってこの少女は翡翠ではない……と断言できればよかったのだが、見れば見るほどに翡翠に似ている。顔立ちなんか瓜二つだ。
「だから、正真正銘橘翡翠です」
と言われても、ただ顔立ちが似ているだけの別人にしか見えない。
う〜んと俺が唸っていると、翡翠らしき少女はポケットからある写真を取り出した。
「仕方ありませんね。本人だと信じてもらえなければデートどころではありませんし」
その写真には、綺麗な翡翠の髪が、綺麗な黒に染まっていく様が写っていた。
……信じるしかなさそうだな。ここまでやって信じなければ、翡翠ならとんでもない暴挙に出る。この場合は何をしでかすか想像もつかない。
「じゃあ、行こうか」
水色のフリルのスカートを揺らしながら、意気揚々と翡翠は俺は前を歩く。
今日は、映画を見て、その後適当にショッピングでもという予定だったので、今は映画館に向かっている。
みる映画も決まっていて、チケットも前もって買ってあるので、ポップコーンを買って劇場に入るだけである。
見かけによらず大食いの翡翠は、なんのためらいもなくバター醤油味をLサイズで、しかも2つ注文した。
しかもホットドックまで買っている。
俺はというとキャラメルポップコーンのMサイズを買っただけなので、普通のド真ん中である。
少し目を離すと、翡翠はチュロスも買っていた。




