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第十二話

 5月。文化祭まで後2ヶ月ある。他の文化部からすれば。

 我が文芸部はと言うと、あいも変わらず修羅場だった。

 カラーはまだ1ページを出来てないし、漫画もペン入れを終えていないページが半分ほどある。

 小説の方はもうすぐ終わりそうだけど、仕上がるのはもう少し先になりそうだ。

 私は基本的に作業に参加していないから、部員達に任せるしかない。というか、作業量的には書類の整理とか印刷所への連絡とかしてる私の方が多いくらいだ。

 全く、部長なんて引き受けるんじゃなかった。めんどくさい事この上ない。それでもやっぱりお父さんとお母さんが出会った場所にいたくて、未だにここにいるわけで。つまり私もかなりの変わり者という事だ。

「春、この書類お願い」

 私と同様に春もかなり忙しいだろう。春は生徒会業務もあり、さらにこよ部活での作業もある。本当は私が自分でいっても良かったんだけど、そろそろ私もペン入れをしないと。

 漫画のペン入れだけは、私が自分でやると決めている。そうでもしなければ私は作業を全くしないと思うから。

 よく勤勉だの真面目だの言われるが、私は人一倍めんどくさがりなのだ。でも押しに弱いみたいで、結局なんでも引き受けてしまう。

 お父さんや連みたいにきっぱり断れたらいいんだけど、私には無理みたい。

「え?」

 部室を見渡すと、半分ほど行ったところで異様な光景があった。

 ものすごく早く、それでいて正確な線引き。荒々しく、でもわかりやすく、たった一コマで全てを物語っている。

 一体、誰が……?

「ええ!?」

 チラリと見えた名札には、西園寺と書かれていた。つまり、一年生である。

 何故こんな子がいるんだーー?

「あれは、天才です。紛れもなく、少しの傷もない才能です」

 いつのまにか背後に来ていた響くんがそう言った。

 そういえばあの子と響くんはこの部活に入る前から知り合いだった。なら、この事を知っていてもおかしくはない。

「ちなみに、あれも」

 響くんが指差した先には、同じく一年生、橘翡翠いた。

「……」

 その机に置かれた紙を見て、私は絶句する。

 圧倒的な色使い。細かく書かれた髪と目。完全な一枚のイラストだった。

 そして私はやっと思い立った。

 この部活、ヤバイ。

 天才すぎて、ヤバイ。

 あと半年、私の身体が持つか心配だった。

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