第十一話
原因。
俺はそれを、周りの人間が天才すぎる事による自分への嫌悪だと思っていた。
実際、それも正解だろう。
しかし、今回連がおかしくなった理由は、また別のものだったとしたら?
今まで俺がしてきた事は、無駄に等しい。
正しい答えは、本人に聞かなければ分からない。だから僕は、その場を作った。
早見連。天才一家に生まれたただ一人の凡才。お前の才能は、なんだ?
決まってるだろ?そんなの。
「では、解決編と行きましょうか」
4月の下旬。いつもの第四多目的室。
メンバーは俺、春、赤羽、文さん、そして、連。
連は最後までここに来ることを嫌がった。しかし、自分で説明しなければ意味はないと、俺は判断した。
「では、まずはじめに、連がおかしかった理由から」
淡々と俺は言い始める。
俺はポケットにしまっておいたある写真を手に取った。
それは、連が道路工事のバイトをしている写真だった。
その場の全員が悟った。
「連は、バイトをしていたからおかしかった。帰りが夜遅くになったのもそのせいです」
連は、足を震えさせていた。
「なるほど、うちはバイト禁止ですからね」
春の目つきが鋭くなった。当たり前だ。生徒会副会長が校則違反を見逃すわけにはいかない。
だが、理由を知れば、きっと春も見逃してくれるだろう。
「まさかアンタ、お母さんのために……?」
文さんのこの察しの良さはさすがというべきだろうか。連は黙って頷いた。
そう、連は母親に誕生日のプレゼントを買うために、バイトをし、お金を貯めていた。誰にも言わなかったのは、万が一学校にバレた時、家族に迷惑がかかるからである。
春が一歩前に出る。
「……どんな理由があろうとも、しっかり罰は受けてもらうからね」
連は唾を飲む。
「部活動禁止二週間。加えてパーティの準備をすること」
春は幼馴染に対して、あまりにも罰にならない罰を与えた。
連は驚いたようだった。驚きすぎて喉から声は出ないみたいだが。
春は厳しい事で有名だった。例えば廊下を走っている生徒を見かけたら1F廊下の掃除を一人でやらせたり。
その春から漏れた甘い判断は、誰も損をしないものだった。
春が言ったのはつまり、部活を休んでしっかり祝ってやれと言う事である。
二週間後、連は久しぶりに部室に顔を出した。といっても、GWがあったので部活の回数自体も少なかったのだが。
「ありがとな、響」
珍しく連が言ったその言葉は、ただの常人のそれだった。
しかし俺は胸の中で呟く。
分かったろ?お前の持ってる、才能ってやつ。




