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第十話

 原因を理解していないやつは、そもそも問題点すら分かっていない。問題すら見えていないのに、その元なんてみえるはずがないだろう。

 つまりこの場合、春は何も理解していない事になる。

 そしておそらく、文さんも。

 距離の近さというのは、メリットとデメリットを多く兼ね備える。

 近すぎると分からない事だってあるのだ。

 俺は、一人を救うために、全てを否定しなければならない。

 それが俺の、仕事だ。


 今最も大変な事は、連と話をする事である。

 しばらく部活には来ないそうだし、最近は家に帰るのも遅いらしい。

 帰りが遅いという事は、どこかに寄り道しているのだろうか。

 その場所自体は俺には見当もつかないが、一人、分かっていそうなやつがいる。

「というわけで赤羽、連はどこにいるのか分かるか?」

 文芸部の天才の一人であり、そしてその中で最も連を理解していそうなやつに聞いた。

「さすがに特定までは出来ない」

「ああ、候補だけ出してくれたらそれでいい」

 その日から3日ほど、俺は連を探し回った。赤羽が出した10個の候補も全て回ったが、連はどこにもいなかった。

 例えば連の行きつけの本屋や、公園。早見家から少し行ったところにあるコンビニも。

 連は本当にどこにもいなかった。

 しかし学校には来ていたので、一度つけてみた事がある。しかし気づくと撒かれている。文さんが発信機をつけても、いつのまにか取られていたそうだ。

 そしてまた数日が経った。

 俺は相変わらず連を探し回っていた。

 赤羽に追加で出してもらった候補を行ったり来たりでいつのまにか夜も更けていた。

 赤羽が一番可能性が低い場所としてあげた所に行き、今日は最後にしようと思っていた。

 連と赤羽は、昔から一人でいる事が好きだったから、昔ある場所を作ったそうだ。

 街の外れにある、今は使われていない建物。その屋上は、風が気持ちよく吹いていて、晴れの日は見晴らしもいい。

 近くの道路を工事しているようで、終始機械音が鳴り響いていた。

 昔よくここにきては日が暮れるまで本を読んでいたそうだ。感覚的には一人で、実際には二人で。

 会話もなく黙々と読書をしていたそうだ。

 空を見上げると、月や星が鬱陶しいくらいに輝いていた。

 そして屋上から街の方を見る。

 どうやら工事をしていたのはこの目の前のようだ。

 その中で気になるものを見つけた。

「あれは……?」

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