第九話
春や赤羽が連や文さんのの幼馴染であるのは、単に親が知り合い、というか親同士が幼馴染だったからだ。
そして家も隣同士というまるでラノベのような幼少期だったそうだ。
夜に三つの家の真ん中に当たる早見家に忍び込み、そして親に見つかり怒られる。これがいつもの生活だったそうだ。
しかしその集まりに、連はほとんど参加しなかった。
連はずっと一人で滅多に帰ってこない父の書斎にいた。
その理由に関しては連以外には分からない。
はずだった。
早見文、神崎春、赤羽日向。
この三人が似ていたから、連は離れて、孤立していったのだ。
要はこの三人が、天才すぎたのだ。
某ラブコメのセリフを借りるなら、「出来ないやつの気持ちが分かるのは、出来なかったやつだけだ」といったところだ。
三人に出来ても、連には出来ない事だらけだった。
そしてそんな自分が嫌になり、連は無意識に、原因を取り除いたのだった。
入学してすぐ、俺と連は仲良くなった。
しかしきっとそこに、『友情』と呼べるものはなかったのだろう。
話すようになって少しして、連はポツリと言った。確か夏休みより少し前だった。
「明日、父さんが帰ってくるんだ」
普通に考えて、それは嬉しい事だろう。でも、連は普通ではなかった。
連は父親が嫌いだった。
天才である父親が。
そして、才能など何一つ持ち合わせてない自分も、嫌いだった。
ようは連は天才が嫌いで、自分のような凡才も嫌いという人間関係の偏食の激しい人間という事だ。
なら何故俺と仲良くなったのだろう。
それはまだ連から聞いたことのない事だった。
「日向の親の羽衣伯母さんはすごい人でね、日向が産まれてすぐに浮気した夫と離婚して以来、一人で育ててるんだ。収入もあまり多くないはずなのに、日向に不自由させないように頑張ってるところを何度も見てきた」
春は急に語り出した。
なるほど、だから赤羽は文さんに懐いていたのか。昔からよく面倒を見てもらっていたから。
「ちなみに日向の家は連のお父さんがお金を貸したしいよ」
持つべきはお金持ちの幼馴染、という事だろうか。
「でも日向は一人の時間も多かったからね、連のお父さんの書斎で本を読んでいる事も多かったみたいだ」
『みたいだ』という事は直接は見ていないという事だろうか。
ともかくこれで春の知っている連とその周りの事は聞き尽くした。
「で、僕に出来ることは、何かあるかな?」
俺はため息をつき、少し怒り気味に言った。
「二度と連に近づかなきゃいいんじゃないか?」




