第3話「木の実を売る少女、ステラ」
ステラが代理人を始めたダンジョンは、掘立小屋しかない荒地に加え、資産は銅貨3枚。まっとうな魔王であれば経営を放棄するレベルである。
「うーん……どうすればいいでしょうか」
そんな不良物件もいいところだが、ステラは投げ出さずに打開策を求め悩んでいた。あれやこれやと書いてみては没にし、もう何枚目かわからない紙を丸めて捨てた。
「何か手を貸せることはないかのう?」
「その……何か売れそうな物があると助かります」
「うぬぅ……そうか。ならば森の中にある木の実を集めるのはどうじゃろう?」
「木の実ですか?」
それから一週間後。魔界の商店街の一角にて、木の実を売るステラの姿があった。
「木の実は如何ですか? 栄養価が高い木の実ですよー」
「……ステラ、貴女……何、しているの?」
そこにルーテシアが通りかかる。
「ほら、ダンジョンを整えるにはお金が必要じゃない?」
「そ……そうね。それはそうなんだけど……」
「おひとついかが?」
そんな代理人としてはあるまじき働きぶりに、代理店は元々低かったステラの評価を更に下げていた。しかしステラが知るはずもなく、今日も木の実を売ってお金を稼ぐ。
「あの……お呼びですか?」
ある日、ステラはチーフに呼び出された。ガーゴイルのチーフは葉巻を咥えながら険しい表情をしている。
「お前……代理人としてのプライドは無いのかっ!?」
「えぇと……あります」
なぜ怒られたのかわからないステラは、怯えながらも次の言葉を待つ。
「もういい……お前は住み込みで働け。給料は魔王から直接貰うといい」
それは解雇宣言と同義だったが、ステラは通勤の無駄が省けて良かったと喜ぶ。
「ありがとうございます! これからも頑張ります!」
ステラが元気良く飛び出すと、チーフは大きなため息を吐いた。
こうして、ステラはあの掘立小屋で生活することとなる。