表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

世界が動いた日

 ある日、そんな彼が休日の寒い日、出先で花を買っていた。

 彼女は1年近くずっと一緒に居たはずなのに、いつの間に彼女が出来たのかと、少しザワつく心を押し込めて、いつも通り彼の物に憑いて行った。

 よく晴れた寒い日、昨日の雪が残って、白くキラキラと反射をしていた。目が眩む思いがした彼女は思わず目を閉じた。

 次に目を開けると、彼女は一人で観覧車に乗っている彼の隣にいた。

「男が一人で観覧車とか不審者じゃん。」と思わず言ってしまったが、彼にはもちろん届くことはなかった。透明でもいいことあるねと言いながら、彼の隣に座りなおす。彼の手には、いつの間にか手に持っていた花束はない。

「分かった!告白失敗したのか!」

 そんな失礼極まりないことさえ言ったって彼にはもちろん届かない。

 そんなことはとっくの昔から分かっていて、彼女はわざと目の前で言っているのだった。

 …ただ彼の視界に入りたくて。

 どんな子が好きなの?

 その子はどんな子だった?

 その子はなんで君を選ばなかったの?

 君はこんなにもいい人なのに…と彼女は彼の向かい側に座りなおす。すると、いつも黙っている彼がふと

「全てに意味があるんだよ」

 と声を震わせ、静かに呟いていた。


 彼は家に帰り、彼女が憑いてから初めてお酒を飲んでいた。お酒が弱い彼は買ってきたチューハイを二缶出し、一缶飲みきった。

「お酒強くないんでしょ?二缶目も飲める?大丈夫?」

 そんなことを言う彼女の横を通り過ぎ、彼は本棚から何かを取り出し開いた。淡白で変化のない彼との生活で新しいものが出ることはほとんどない。新しい物にわくわくした彼女は彼の背後から覗き込んだ。

「っ…!」

 そこには彼女と彼が写っていた。

「私…?」

 お酒、観覧車、仏壇、カバン、ミサンガ、ネクタイ…

「全て私だ。」

 忘れていた記憶がまるでその忘れていた時間を取り戻すかのように、一気に押し寄せてくる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ