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逆戻り

「すげえな、これ。皆あんたたちが倒したんだな」


 感心したように、しかし恐ろしそうに魔物を見ている。


「ああ、すまん。畑仕事をしていたら、草原の方がぱっと明るくなったような気がして、そっちを見たらすごい音と炎が上がっていてな。そっちに気を取られていたけど、よく見たら草原がトカゲだらけじゃねえか。助けなきゃってんで、そこら辺にいた皆でやってきたんだが、大丈夫か」


 レオンは天を仰いだ。


 魔物をやっつけようとしたんじゃなく、レオンたちを助けようとしたのだという。


「ありがたいが、俺たちは狩人だ。魔物が出たら、家に入れって町長に言われてなかったのか」

「ああ、なんかそういえば回覧が来てたかもしれない」


 町の人が周りに確認すると、確かに連絡は回っていたようだ。


「じゃあ、なんでその回覧を無視して外に出てるんだ」

「いや、あんた、子どもがいるのに助けないでどうするんだ」


 その子どもが魔物を町に行かせないようにとどめたのだが。


 レオンがこれ以上どう言おうか迷っている間に、町から馬車が何台もやってきた。


「大丈夫か!」


 降りてきたのは町長を筆頭に町でよく見かけた人たちである。


 レオンはまた天を仰いだ。俺は今朝、この人に言わなかったか? 魔物が出たら家の外に出るなって。

 思わずレオンが文句を言いそうになった時、鎮まったはずのハネオオトカゲが一匹、近くの町人に飛びついた。


「わあ!」


 びっくりした町の人が思わず振り回した鎌が、隣の人にかすった。


「危ない!」


 よけた人が別の人にぶつかり、騒がしくなったところで、生き残っていたハネオオトカゲが動き始め、何匹か羽を広げ、動く気配を見せた。しかし、その頭は人や町の方ではなく、草原の南の方を向いている。


「ひいっ」


 集まっていた人が逃げ惑っている。


「移動が始まる。町の方向とはずれているから、落ち着いて!」


 レオンが片手を上げて、近くの人に聞こえる程度の声で呼びかけた。今大きな声を出して魔物の注意を引き付けてはまずい。そして注目を集めるように片手を上げた。


 声などほとんど届いていないだろう。


 それを見て導師も、ファルコも、残りの面々も片手を上げてこっちを見るようにと合図した。


 気が付いた人々が動きを止め、それが次々と人々に広がった。


 皆の動きが止まった時、一匹のハネオオトカゲが飛び上がった。


「ひっ!」


 誰かが叫んだが、レオンが片手を上げたまま魔物を静かに見ている様子を見て、口をつぐんだ。


 やがてハネオオトカゲは、次々と飛び上がると、街道沿い、町の南の方に飛び去って行った。


 最後の一匹を見送って、レオンは腕を下ろし、力を抜いた。


 終わったのだ。


「いったい何が……」


 呆然とする町長に、導師が話しかけた。


「我らが町を出てすぐに、ハネオオトカゲの大量移動が始まろうとしている気配が見えた。移動するだけなら、その間家に閉じこもっていればいずれは去っていく。しかし、だからと言って放置しておくわけにもいくまい」


 導師は倒れているハネオオトカゲを憂鬱そうに眺めた。


「そこで我ら一行の魔術師であるハルが大きな魔法を撃ちあげ、町の方向に行こうとする魔物を引き寄せた」

「あの炎と音は、その小さい魔術師さんのものだったか」


 最初に駆け付けた町の人がハルを感心したように見たので、ハルは軽く頭を下げた。


「思ったより多くのハネオオトカゲがいたが、何とか大部分を倒し、残りは今のように南下していった。もう大丈夫だろう」


 ほっとしたような空気が広がった。


「さすがに疲れた。出立を一日伸ばしたいが、いいだろうか」

「もちろんです。昨日までの活動で町に貢献しただけでなく、今日からは町を救った英雄です! とにかく町に帰ってゆっくり休んでください」

「ありがたい」


 それは本当にありがたかった。


「あの、さっき鎌にやられた人、俺が見ます」


 リクが一歩前に出た。


「俺、まだ魔力が残ってるから」

「ありがとう」


 少しだが血が出ていた町の人はほっとしたような顔をした。

 それを見て、ショウも一歩前に出た。


「では、帰る前にハネオオトカゲの解体の方法を……」

「ショウ」


 ファルコが厳しい声を出した。これ以上無理をするなという警告だ。


「でも、お肉が無駄になっちゃう」


 そのショウの言葉にあたりに和やかな空気が漂った。


「そうか、深森のお人には、この恐ろしい魔物は肉に見えるってことか」

「え、見えるも何も、肉と資源ですから」


 町の人たちはトカゲをしげしげと眺めると、ショウに提案した。


「一匹だけやり方を教えてくれ。残りは町の皆でやるよ」


 ショウはファルコを見た。ファルコはそれくらいならと肩をすくめた。


「いいか、だいたいの魔物は去ったが、小さいトカゲ、スライム等、小さい魔物もいつもより多いのは変わらない。誰か町に行ってポーションを十分に用意して、よく周りを見て怪我に注意しながらやってもらいたい」


 レオンが大きな声で指示を出す。


 それぞれがすべきことをすると、結局深森一行は町に逆戻りになったのだった。



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