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故郷というものは

レオンは言い合いながらゆっくり歩いているファルコとショウに急いで追いついた。


「ファルコ、ショウ」

「レオン、おはよう」

「おはようじゃねえよ、ガイウス治っちゃってるじゃねえか」

「え? あ、忘れてた」


そうだった。導師にしばらく使うなって言われてたんだ。


「ポーチで浮かれてたもんな」

「しかたないでしょ! あとみんな笑いすぎだから」

「ポーチなんざみんな小さい頃から見てるからなあ。お前の住んでたとこホント変わってるよな」

「うーん、そうかな」


そうして3人で教会に行った。


「セイン様! いやいや、抱っこはなしで」


悲しそうな顔をしてもだめです。


教会では、癒しの訓練について説明を受けた。治癒師は基本的には黄色いたすきや帯をかけて歩く。それはいつでも治癒しますよという合図なんだって。だから治癒師には誰でも治癒が無料で頼める。特に若い治癒師には、経験を積むことが求められるので、積極的に治癒を行うことが推奨される。


「でも、見返りがないと困らない?」

「その場では報酬はもらわないよ。その代わり治癒を頼んだ人も、そうでない人も教会に寄付をする。その寄付は教会の運営や治癒師の派遣にも使うが、やはり治癒師に支給されるんだよ。見習いでもショウにもちゃんと月給が出るぞ」


救急車みたいなものかな。誰でも使えるけど、節度を守る。どんなやんちゃな人も、救急車には車線を譲るし。


「そして治癒師に不当な扱いをしたり、傷つけたりというのは厳禁だ。刑罰がある訳ではないが、みんなが見ているからな。つまり、治癒師は尊敬され大事にされてそこそこの収入を得る。そして義務として治癒の力をつくす。狩人など副業も可能。実際にはポーションもあるし、そこまで忙しくないよ」

「すでに狩人ギルドでやらかしてんだよ、ショウは」

「レオン、どういう事だ」

「ガイウスの膝を治しちまったんだよ」

「英雄のか、それは……良いことだが」

「口止めはした」

「ガイウスもまだ黄帯すら付けてない子どもに何をさせているのか。説教だな。ショウも」

「はい、すみませんでした」

「わかればいい」


そしてショウの1日の予定が決まった。


朝起きてファルコと剣の訓練。ジーナのお手伝いと朝ごはん。ファルコを見送って午前中は年少組へ。お昼を食べたらみんなで勉強を少し。その後教会で癒しの訓練という名の実習。夕方ファルコが帰ってくるまでジーナのお手伝い。


ちなみに、年少組とは10歳から14歳までの、ギルドの見習いの子どもたちだ。親が仕事の忙しい午前中を中心に集まり、薬草取りやスライム狩りをしたりする。基本的には教会に集合、のち町のあちこちで自主活動。教会では書き取りと計算だけ叩き込まれる。それ以上勉強したい子は湖沼に送り出す。


15歳から19歳までは各ギルドで成人までの職業訓練になる。


寿命の長いこの国では、必ずしも固定の家族で一生を過ごすわけではない。だからこそこの10歳から19歳の間で、地域にしっかりと根ざしてコミュニティの一員となることが大切なのだ。どこに旅立っても、戻ってくる場所として。


あちこちに旅に出る狩人も、子どもを育てるその10年間だけは、そうやって一つの地域に留まることが多いのだ。


「だからな、ショウ、心配するな。北の町が故郷になるよう、しばらくここで過ごそう」


その日の夕ご飯で、ファルコはそう話した。


「ファルコの故郷もここだから?」

「俺の故郷か。どこなんだろうな」


ファルコは寂しそうな顔をした。


「バカなこと言ってるんじゃないよ、あんたの故郷はここだろ!」

「まあな、そうだな。ガイウスとレオンにはホントに世話になったな。あー、導師にもな」

「あたしにもだよ、まったく、ファルコはやんちゃでね、聞きたいかい、ショウ」

「聞きたい!」

「待て待て、ジーナ、勘弁してくれよ」

「ふん、しょうがないね、ショウ、後でね」

「うん!」


ショウは本当には聞くつもりはなかった。やんちゃな話なら聞いてもいいが、辛かった話ならファルコだって聞かれたくないだろう。詮索してもしょうがないのだ。


さあ、明日からファルコも仕事、ショウだって忙しい毎日が始まる。今日もしっかり休もう。温泉に入って、ホカホカして、お休みなさい。




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