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第六話 暮れ

全話大幅に改稿していたので少し遅くなりました。

ストーリーにほとんど影響はありませんが、見ていただけると嬉しいです。

 鳥達が一斉に羽ばたいたことに驚き、空を見上げると日が沈みかけていた。


 うわぁ、これは本格的に寝る場所を探さないと大変なことになるぞ。と言っても寝る場所あるのか?

 多分野宿だろうな、少なくともベットで眠るなんてことは絶対無いだろう。せめてそれなりに安全なところで寝れたらいいんだけどな。寝てる間に殺されるとか最悪だろ。


 智明は今頃どうなってるんだろうなと想いながら空を見上げて歩いていると、木の根っこに躓く。


「ワッ、危なグハッ」

 頭から勢いよく倒れる。

 しかも、運の悪いことにここは坂道であった。

 そのままボールの様に転がり落ちる。


「ぐばばば、あがっ、誰がば、グヘッ」


 色々な物にぶつかりながら転がっていたが、巨大な木に打ち付けられていきなり止まる。


「お…お、止まった…うぅ……」

 瀕死状態で呻く。



 «能力(スキル)"打撃耐性"を取得しました»



「イテテテテ。おっ、これでコケたかいがあったってもんだよ。ウィンドウでも見てみようか」


 ゴキュッ


 説明しよう、この音は俺が立ち上がろうとして足を挫いた音である。我ながら、どんな挫き方をすればこんなふうになるんだってくらいの惨事。大惨事。


「うをぉぉぉぉ!!!痛ーーーーっ!!!!」



 «能力(スキル)"痛覚耐性"を取得しました»



 もう倒れたままでいいや。どんだけひ弱なんだよ、俺は。

 と瀕死の身体に更に追い打ちをかけられた(かけた)俺は泣く泣くこの状態のままウィンドウを見てみる。



 【個体名:ミカゲ=ウスイ

 種族:ゴブリン LV2

 危険度:G

 状態:正常

 HP:1/7

 MP:0/0

 筋力:1 体力:2 スピード:2 瞬発力:3 知力:5386

 能力(スキル):毒耐性LV2 麻痺耐性LV1 打撃耐性LV1 痛覚耐性LV1】



 おお、もうスキル4つか。こうして見ると、耐性ばっかだなー。て、やばっ、HPが1じゃん


 慌てて、左手に持っていた薬草を残り全部食べる。

 ウーム、薬草のスースーする苦みと食人植物の胃液の酸っぱさがうまい具合にマッチして想像を絶する不味さだ。てか最早死ねる。


 回復しようとしてるんだか死のうとしてるんだか分からない位不味い薬草(食人植物の胃液風味)を死力を尽くして飲み込む。



 «個体名"ミカゲ=ウスイ"が全快しました»


 はぁ、痛みが取れた。

 マジで俺弱すぎね?うん


 前から思てたんだけど全快するって実はあの薬草って凄いんじゃないか?

 今更ながらそう考える。

 というより、そう思ってたなら節約しとけよ、俺。

 三回で両手いっぱいに持っていた薬草全部使うとか、どんだけ無駄使いしてんだよ。


 まあ過ぎたことだしな、いつか見つけたら拾っとこう、と持つものがなくなった両手で伸びをしながら呟く。



「体調も良くなったし、本格的に寝床探しといこうか」

 綺麗な夕日が映える赤く染まった空を見上げながら、呟く。


 木の幹に穴とかあればいいのにな。



 少々歩いていると、早速その条件に一致するような所を見付けた。

 正確言えば木の下に穴が空いていたのだが。


「おお、俺運良いな」

 と言って、早速洞穴の中に入る。


 狭いなと思いながら、四つん這いになって穴の中を進んでいると急に道が開けた。



 ふう、大変だった。

 とギリギリ立てるかなというくらいの高さの所で座って一息ついた。


 ここを生活の拠点にしようかと思ったが何か違和感を感じ、辺りを見回す。


 ギロッ


 不意に視線を感じてその方向を向き目を凝らすと、鈍く光る二つの眼球が暗闇の中浮かび上がってきた。


「ひいっ」

 ゴブリンに初めて会った時の怖さを遙かに凌駕する恐怖に体が固まって動かなくなる。


 ――う、そ、だろ……。体が動かねえ。こ、こっち来るな。

 俺の願いを無視して熊らしき生き物はこっちを睨み付けてゆっくり進んでくる。


 ――やめろ、く、来るんじゃねえ。

 そう願った瞬間、俺の願いに反するように熊らしき生き物が俺に向かって飛びかかってきた。 



 «能力(スキル)"恐怖耐性"を取得しました»


 唐突に謎の声は空気を読まずいつも通り無機質に告げる。

 しかし、俺にはそれが救いになった。その声のおかげで弾かれた様に止まっていた身体が動き出した。


 すぐさま止まっていた身体をひねり、間一髪で小熊とおぼしき動物の鋭い爪を避ける。

 と同時に出口へ向かって走り出す。


 くそっ、通路が狭くなかなか進めねえ。


 慌てて進んでいると出口が見えた。

 追い付かれると思ったが、なんとか穴から脱出した。



 何故かあの動物が出口の近くまで追ってこなかったから逃げきることが出来たけどな……。


 はあ、危なかった。

 しかし、こんな時間帯に巣にいるってことは子供とかじゃないのか?

 もし、さっきの熊っぽいやつが子熊だとしたら親はどれだけ強いのだろう?

 息を整えつつ考える。


 ここに居たら何が起こるか分からず怖いので休むのもそこそこに、また移動し始める。



 長々と歩いていると、少し木の開けた所に行き当たった。

 その中心に神聖な空気を醸し出している一本の巨大な木が立っていた。

 上の方に霧のようなオーロラのようなものがかかっている。


「わあ、でっけえな」

 雰囲気に圧倒される。


 地球上にある木でいうとガジュマルの木みたいな感じだった。


 ここに来る途中で沢山見た襲ってくる植物みたいな魔物も何故かこの木の周辺には入ってこようとしない。

 多分この開けている場所は魔物が入ってこれないようなエリアなんだろう。

 と言いつつ俺も魔物なのだが……。

 よくわからんが、この木の周りに俺しか魔物がいないということは事実だ。

 だからと言って木の直ぐ奥でこっちを睨み付けないでくれ、植物っぽいやつよ。

 俺、威圧だけで軽く死ねるから。


 ここを寝床にするのが一番良いんじゃないか?寝てる間に魔物に襲われないか怖いからあんまり寝たくないし今は別に眠たくないけど、明日眠たかったせいで殺されるとか限界まで起きて倒れたところを狙われるとか、悲しすぎるしな。

 そう思い、念のため周りや木の隙間を調べてみても何も無かったので、もう辺りは暗いしここでとりあえず一晩過ごそうかと腰を下ろす。


 辺りが完全に暗闇に包まれ、代わりに星が眩しい程明るく輝き出す。

 木の根っこを枕にして寝転がってからも、もしかしたら魔物が襲ってくるかもしれないことと異様に静かなことが最初の方は不安で寝付かないようにしていた。

 だが、この世界でも同様に輝く月のような星を見上げて今日起こったことなどを考えていると不思議と心が落ち着き寝ても良い気がしてくるのだった。



 いつの間にかよく分からない部屋に居たと思ったら、気が付いたら森のなかに居て、怪物に出会っては逃げ、人に出会えたとおもえば襲ってきたから逃げ、結局は自分が怪物だったてな。信じられねーよな。


 その後は毒キノコを食べて死にかけ、食人植物に襲われては死にかけ、転んでは死にかけ...ってよく生きてたな、俺。運良くてほんと助かった。下手すりゃ何回死んでたかわかんねーぞ。一回しか死ねないけど。


 そういえば、俺が居なくなった後、元の世界のみんなどうしてるのかな。悲しむか捜すかしてくれたら嬉しいけどな。まあ、捜しても見つからんけどな。両親には申し訳ないよなー。せめて生きてることでも伝えたいんだけど。

 はぁ、皆のところに帰りたいなー。


 智明は今頃何してるんだろうな?どうせアイツならちゃんとこの世界のどっかで生きてるんだろうな……。



 こうして目を閉じて思いにふけっているうちに、俺はいつの間にか眠りに落ちていった。

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