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「鈴木」
「花籠です」
担任の言葉にあたしはすぐに言い切る。
こんな光景も、いつものことでクラスの誰も気にする様子はない。
「夢子、座らせていただきます」
「勝手に座れ」
言われるがままに自分の席へと座る。あたしの席には、レースのついたクッションが置かれている。千鶴ちゃんのお手製だ。
そこに、ふんわりと音を立てずにあたしは座る。
「今日は転校生を紹介する」
コホン、と担任がわざとらしく咳払いをする。
「入れ」
そう言われ現れたのは――。
「あ――――――!!」
「鈴木うるさいっ」
「花籠ですっ」
だって、転校生があのオタク(?)の男の子だったから……。びっくりするに決まってるじゃん!
彼は目にかかる黒髪を手でかき分けて、あたしを見た。
「あ……」
「なんだあ、知り合いか?」
「えっと……」
「初対面です!」
思わずあたしは否定する。何となく、あの出来事言いたくないし。
「そうか」
「知り合いに似てて」
「ハジメ……一テツオです。九州から来ました。転勤族なので訛りはないと思います」
本人が言うとおり、彼の話す言葉は流暢な標準語だった。
「地味~」
ぼそりとギャル系の女子が呟く。
確かにハジメは、地味だけど。
クラスでのポジションはきっと真面目系かオタクグループだろう。
そう思ってたのに。