表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロリィタちゃんと漫画家志望君  作者: 花野 りり
番外編 千鶴と小枝子のなれそめ
26/27

8

「姉さん」

「何ですか?」

「オレも学校行きたいんだが」

「そうですね、授業は無理ですが千鶴さん専用のお部屋を作りましょうね」

 ほのかは優しく言った。授業が受けれないのは、学力的な問題らしかった。仕方がない、千鶴はずっと家で療養していたから、年相応の学力など身についているはずもなかった。かといって今更小学校に通うのも嫌だ。ほのかもあまり千鶴に勉強をさせなかった。

 知恵をつけるのは、欲望を産むと考えていた事だからなのだから、千鶴はそれを知らなかった。ほのかが隠していたからだ。

「うんと可愛いお部屋にしましょうね。沢山の紅茶葉を用意しなければいけませんね。千鶴さんは紅茶がお好きですから」

 千鶴はよく、海外の紅茶を好んで飲んだ。香りを楽しんだ後、砂糖で甘く仕上げて、ゆっくり飲み干すのが好きだった。

「うれしいなあ。姉さんも一緒なんだろう?」

「もちろんです。私は貴方のものですから」

「姉さんは、面白い事を言うな。姉さんは、姉さんのものだろう?」

「私が望んで、貴方のそばにいるのですから、気にされなくても結構ですよ。貴方が生きてくだされば、それだけで幸せなのです」 

 まるで、自分が大層な人物のようだと千鶴は思った。それでもその気持ちが素直にうれしかった。


 しばらくして、保健室のとなりに千鶴の部屋ができて、千鶴はそこに通うようになった。保健室登校の生徒などがたまに遊びに来ては、話し相手になってくれたし、色々な人が顔を出してくれた。千鶴は退屈しなかったが、学校へ通う事でいっぱいいっぱいで外を出歩くことはなく、いつも窓から外を眺める程度だった。

 運動部の練習は、思わず目をそらして読書にいそしんだ。メルヘンチックな童話の世界が、特にお気に入りだった。どんなに弱い主人公も、特別な力や努力で認められる。そんな作風を好んだ。

 スカートからのぞく、細くて筋肉の足をみると、とてもじゃないが走りまわれないのだと実感した。だから、直に黒いタイツを履き、ふんわりとしたロングスカートを好んだ。レースを編んで自分で縫いつけたりもした。

 ほのかがわざわざ作ってくれることもあった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ