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小枝子のクラスメイト評は「男とばっかつるむ運動神経のいい美少女」だった。
女子同士のグループはやれファッションだ、可愛さだの趣味だので決まってカーストがあり、酷く面倒に思えたから、小枝子は適当に好きなようにふるまっていた。計算して作る人間関係が煩わしく、苦手だった。協調性がないのかもしれなかった。
小学校の頃は男子といるのが自然で、当たり前だったけれど、身体が育っていくにつれ男女は平等ではなくなり、相手からは友人ではなく異性としての扱いを受けた。
今更女子同士の交流など、上手くできるわけもなく、それを当たり前に受け入れていくことで関係を壊さずに暮らしていた。
結果、小枝子の周りには友人以上恋人以上の男子がいっぱいたし、男子同士で小枝子の取りあいもあった。それがさらに女子の反感を買った。そして男子の保護欲を誘った。
けれども、千鶴と一緒にいるときは性別の壁があいまいになり、小学校の頃に戻ったような錯覚に陥った。見た目に振り回されているのか、相手ははっきり小枝子に求愛をしているというのに。おままごとに見えなくもないが。
「安藤さんって千鶴ちゃんと仲いいよね」
唐突にクラスメイトの女子にそう聞かれた。
「……千鶴ちゃん?」
年下の女子にまでちゃんづけられてるのか。仕方がない容姿だけど。
「女の子の憧れなの、千鶴ちゃん。黒髪サラサラロングで、まつ毛長くてお姫様みたい!」
「……うん?」
うっとりと語る女子に、小枝子はちょっと引いた。そいつは男だ。
「2年前から学校に籍はあったみたいだけど……めったに見かけないから、見れたらラッキーな妖精様なのに、いいなー。会話するとご利益あるんだよ!」
(じゃああたしはご利益ありまくりなんじゃ……)
千鶴はいったい何者だと思われてるんだか。人じゃないの?
「なかなか魔女がいてご利益にあり付けないって有名じゃん! 魔女に許可されし者にならないとご利益は受けられないの! 魔女にあったことある?」
「誰?」
「何か黒髪ふわふわ巻き髪のきつめの美人らしいけど……皆あったことないか、声しかきいたことないって! 声が低くて酒やけしたみたいな……男の人かと思うらしいけど、シルエットからして豊満な身体をした女性だって。何で魔女かは知らないけど」
それの人物像はあきらかにほのかであった。
魔女って。妖精を守る魔女って。ギャグか。
「安藤さんはお姫様ってより女王様? 女ボスって感じ。お姫様は千鶴ちゃんかなー?」
「だから?」
「……だから、はないんじゃないの? やっぱ安藤さんってつまんない~」
「で?」
早く話を終わらせてほしい。
そんなふわふわした話なんて、興味がないから。
幼稚園に上がって、母が死んで、弟が入院して。それからは、すべての時間が有限に思えて。無意味な癒しやだらだらした時間を過ごす自分を許せなくなった。
だからすべてを損得や利益で考えるようになってしまった。12歳の小枝子は、それを悲しいと感じることもなかったけれど。
(千鶴を見てると価値観狂う……)
あれぐらい、ふわふわ自由にふるまえたら、どんなに楽だろう。




