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千鶴が疲れて寝たときに、ほのかがこっそり小枝子に言った。
「千鶴さんは、身体がひどく弱くてなるべく頭が良くならないように、外部の情報を避けて育てました。あまり欲を持たないように、他人と比べて辛くならないようにと。ですから、極端に世間知らずなんです」
「そうなんですか」
小枝子は淡々と言った。あまり興味がなかった。別に千鶴の頭が悪いところで、報酬がもらえるし、千鶴自身は好意はぶつけても悪意はぶつけてこなかったから。
男子といるのを見てもけして嫉妬することもしないし、取り立てて学校生活に支障はなかった。ただ、顔を一日出さなかっただけで、次の日小枝子が着たときに泣いたので顔は出すようにした。さすがに泣かれたことには正直引いた。小枝子からは、そのときは取り立てて千鶴に好意はなかった。
自分を好いている男子の一人。甘ったるい声と見た目のせいで、女子といる気分になったし、異性という認識が薄かった。今でも千鶴の性別に実感はない。
この前、胸元を触ってみたらキョトンとされて「何か付いていたか?」と聞かれた。何もついていなかった。平べったかった。けれども千鶴ぐらい細ければ、胸なんてなくても普通だと思った。さすがに全裸を確認するわけにはいかないけれど、やっぱり納得がいかなかった。一度スカートをめくろうとして、悲鳴を上げられたときは逆にやっぱ女子なんじゃないかという思いを強くさせた。そしてほのかに思いっきり殴られて怒られた。
千鶴は泣きじゃくっていたので、謝った。そんな風に、日常は過ぎて行った。
(いつでも千鶴はタイツ履くか、ふわっとしたパンツよね)
暑くないのだろうか、と思うぐらい、常に露出のない恰好だった。
「千鶴っていつもお昼少ないわよね」
いつも食堂のメニューにはないような、こじんまりとした小皿をちまちま食べている姿はダイエット中の女子のそのものだ。
「沢山は食べれないからな」
(あたし、少ししか食べられないの~ってやつ?)
「小枝子はいっぱい食べるな」
「これ普通の定食一人前だけど」
食は細いつもりはないけれど、千鶴がおかしいと思う。
「羨ましい」
千鶴は寂しそうに言った。
食べればいいじゃないなんて、返せないほどに。
「……食べれない分はあたしが食べてあげるから、食べたいものあったら言って。持ってきてあげる」
「本当か!?」
ガラス玉のように瞳をキラキラさせて、千鶴。
小枝子は、もちろんと定食をつつきながら言った。




