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キョトンとした千鶴の声をほのかは無視した。
「理事長の息子なんで、仲良くしといて損はないですよ」
「えへへ~」
千鶴はほのかの必死なフォローを褒められたと思っているらしい。
「勉強できるんですか?」
小枝子は気になったので聞いた。
「できると思いますか?」
「……いいえ」
「正解です。理事長の息子だからここにいる学校一のバカです」
(いいのかそれで)
「他の学校に行かせるのは心配、というお気持ちわかりますよね?」
「それはすごく」
2人の会話の真意がわからない千鶴は不思議そうな眼でほのかを見ている。
「お母様はオレのこと大好きだからなー、別の学校だとさみしいって言ってた」
「ソウデスネ」
ほのかのつっこみが雑になってきた。
「食券や学費毎月差し上げるんで、ぜひかまってあげてくださいね」
「わかりました」
小枝子は即答した。
会話としてはだいぶおかしいのに、突っ込みはそこにいなかった。
「小枝子、オレと仲良くしよー? さんつけなくていいぞ?」
可愛い可愛い顔をして、千鶴は甘えるように言う。
「うん、毎日来るね(だから食べ物ちょうだい)」
「小枝子さん考え漏れてます」
ここに来れば、色々もらえるのなら、悪い子ではなさそうだから構うぐらいどうってことない。求愛されようが、さしたる問題ではない。小枝子にとっては慣れている。
こうして、2人は強引に出会った。
千鶴は馬鹿な子供だった。小枝子より年上だったけれど、どうも算数レベルがわからないらしかった。理由を聞いてみたら「内緒」って言われた。ほのかさんはコッソリ「身体がすごく弱くて学校にいった事が最近までなかったので」と教えてくれた。納得。今は安定しているらしい。色の白さも、薬の匂いも、だからか。
「千鶴は何で女装してんの?」
「? じょそう?? おれじょそうしてるのか?」
「えっ??」
「千鶴さん、小枝子さんは何で女の子の恰好してるのって言いたいんですよ」
(大丈夫かな、この子)
「あーそれはな、可愛いからだ。お母様が似合ってるって買ってくれるんだ。かわいいか?」
嬉しそうに今日の白いフリルシャツとロングフレアスカートを見せてくる千鶴に小枝子はうなずくしかなかった。本人は別に女装のつもりじゃないらしい。




