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プロローグ

ふりふりひらひららんららるんっ

ふりふりひらひららんららるんっ

「夢子ちゃん、いらっしゃいませ~」

 春の陽気な空気に包まれた放課後のいつもの時間。この時間に、あたしはいつも最高の幸せを感じる。

「こんにちは、リナさん。新作見せてもらっていいですか?」

「ロマンチックメロディシリーズですか?」

「はいっ」

 ここは夢の花園。乙女の天国。

 ロリィタセレクトショップストロベリィパーティ。ここはあたし、夢子の癒しの場所。住んでる場所が田舎だから、ロリィタショップなんてものはない。ゴスロリもパンクも、何もない。一応は、リナさんのお店の隣に、ゴスロリとパンクを扱うお店があるけれど、それもセレクトショップだ。

 壁にはハートやリボンなどのロマンチックなデコレーションが施されており、ぬいぐるみなどが飾られている。ピンク色の壁がとてもかわいらしい。

 あたし夢子はピンク色のヘッドドレスを手にとって、試着した。

「かわいいですよねぇ、よくお似合いですよ~」

 リナさんが愛想よくそう言った。

「このイチゴの模様がたまらないですね」

 あたしはそれに心から同意する。

 ロリィタは、どんな薬よりもあたしを元気にする。メイドのバイトで疲れた後も、このお店に来るだけで元気になる。

 正直お値段はお高めだから、バイトのお金は全部ロリィタ服へと消えている。

 でもそれで困ることはない。

「えっと、これとこれ包んでください」

 とあたしはほしいものを指さす。

「かしこまりましたあ」

 鏡を見ながら、自分の黒いツインテールを整える。うんっ、今日も可愛いっ。

 でも何か、視線を感じるなあ。

「あの、お客様?」

 リナさんが誰かに声をかけた。ほんのりとインクのにおいに振り向く。

 長めの黒髪の、メガネをかけた男の子がいた。

「理想の女の子だ……」

 あたしを見て金魚のように口をパクパクさせて男の子はあたしをじっと見る。

「は?」

「僕の、漫画のヒロインのモデルになってください!」

 その男の子は鼻息荒くそう言った。

「ナンパ?」

 何この人気持ち悪いっ。

「違いますっ」

 あたしが露骨に嫌そうな顔をすると、男の子は慌てて弁解する。顔には汗がにじんでいる。

「っていうか冷やかし? 神聖な乙女の園を汚す人は、夢子許さないっ」

「いえ、実はカタログを買いに……」

「なんだぁ、お客様なの?」

 ここ、ストロベリィパーティでは、各ブランドのカタログも取り扱っている。だから、着ない人が遊びに来てもおかしくはないんだけど。

「ログがあれば、それも」

「かしこまりましたあ」

 リナさんは営業スマイルで動じない。

 対して男の子はゆっくりとお店のものを眺めている。

「さっきはごめんね? ロリィタ、好きなの?」

「すごくかわいいと思います」

 目をキラキラさせて男の子。

「ふぅん、着るの?」

 似合わなさそうだけど。細いから、スタイルはいいと思うけどさ、地味。

「着ませんっ、ただ自分の描く絵に着せたくて……」

 おずおずと恥ずかしそうに男の子。

「こういう服を着た女の子って、素敵ですよね」

「それは同意するけど、やんないよぉ、あたし」

 だからと言って、よく知らない人の漫画のモデルなんかやりたくないなあ、あたし。

「そうですか、それは残念です」

「ごめんね?」

「おまたせしましたあ」

 リナさんがカタログを持って現れる。そのまま男の子は会計を済ませて、名残惜しそうに出て行った。

「……なんだったんでしょう?」

 あたしが思わず尋ねる。

「絵描きさんにロリィタ服は人気ですからねぇ。絵に映えますし」

「あたし絵は描かないから……でもロリィタイラストは好き」

「先ほどのお客様も描かれるのでは?」

「……絵、見せてもらえばよかったかな」

 ちょっと早まったかなあ。

 もしかしたらめちゃくちゃかわいい絵を描くかもしれなかったのに。

「そういえば、今度こんなシリーズが出るんですよ。夢子さんお好きそうですよね」

「本当ですか?」

 そんなことを思ったのだけど、それは新しいロリィタ服のことであっさり忘れていった。


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