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七十話 事故か事件か

「遭難ですか? 集団行動の最中なのに?」


 アレクはそのような状況に陥る状況が想像できなかった。

 首をかしげているアレクにミリアは、可能性は少ないがあり得るのだと説明した。崖や川での転落による遭難、もしくは単独行動を行いはぐれた場合などだ。


 ただ、この付近には高低差の大きな崖はなかった筈であり、川も小川程度の大きさの筈である。であるならば、誰かが故意に集団から離れて戻らなくなったのだろうとミリアは自分の推測を口にした。

 いずれにしろ、この場で推測を口にしていても事態は好転しないと判断し、二人は一番近い場所に居る学園の関係者に接触すべく移動する事にした。


「先生! それにアレク君!」


 百メートルほど移動すると、最初の生徒に遭遇することができた。幸いにも同じAクラスの女生徒のグループだったようで、突然現れた二人の姿に驚きながらも、アレク達であるとわかると、ほっとした表情で駆け寄ってきた。


「私が離れている間に何があったの? 詳しく説明してちょうだい」


 ミリアが尋ねると生徒は状況を話してくれた。


 二人が皆と別れた後、Aクラスの生徒は無事に付近を移動しているCクラスへと合流を果たす。Cクラスの担任教師に事情を説明し、指示を仰ぐと、今居る野営地まで行動を共にする事になった。

 その後、本体であるBクラスへ状況を連絡すると、事態が落ち着くまでこの場で待機するようにとの通達が来た。しかし、四十名が一カ所で休むような広い場所が無く、仕方が無いので野営できそうな場所を探すことにし、分かれて行動していたそうだ。


「そうしているうちに、クラスの女子が数名居ないことに気づいたんです」


 姿が見えなくなったのはヴィーチェル・ラテンナと、彼女と同じチームのアイーダ・アグネーゼという女生徒だという。 


「どうしてこうも次から次へと問題ばかり……」


 ミリアは頭を抱えそうになる。それも当然だろう。エルフに襲撃され、その問題を解決したかと思えば生徒が行方不明になっていたのだ。それも、第三王子の許嫁とされるヴィーチェルともなれば尚更だ。

 しかし、頭を抱えている暇は無い。ミリアは気持ちを切り替えて今後の対応について頭を巡らせる。その横でアレクはと言えば、何か考え込むように腕を組んでいた。


「アレク、二人の捜索にまた貴方の力を借りたいのだけど――。どうしたの?」


 そんなアレクの様子に気付いたミリアは訝しげに首を傾げる。


「いえ、ヴィーチェルさんとアイーダさんって単独行動をするような性格じゃない筈ですよね?」


 アレクの問いかけにミリアは頷く。説明をしてくれた女生徒達も同様だ。


「しかもどちらか一人ならともかく、二人同時に迷子なんていうのは……ね」

「まさか、何かトラブルに巻き込まれた可能性が?」


 意味ありげな物言いにミリアは更にその端麗な眉をひそめた。アレクが絡んでいるとなると、より一層厄介なことになりそうな予感がしたのだ。


「貴方たちは捜索に戻ってちょうだい。すぐに私も行くから」


 ミリアは女生徒たちへそう言うと、その場にアレクと共に留まる。女生徒の姿が離れたのを確認してから、ミリアはアレクへとむき直した。


「それで? 何か心当たりがあるのね?」


 白状しなさいとばかりに詰め寄るミリアに、アレクはカストゥールの家へと眷属を忍び込ませた経緯を話して聞かせた。すでに眷属の事を知られている為、手段について隠す必要も無い。


「なるほど、そこでヴィーチェルの事を調べていたらしき書類が出てきたのね……。でも、それだけじゃ今回の原因がボレッテン家にあるとは言い切れないわよ?」


 ミリアも当然カストゥールの素行の悪さについては聞き及んでいた。だが、伯爵家の令嬢であり第三王子の許嫁であるヴィーチェルに手を出す程愚かだとは思えなかった。


「まあ、そこは可能性があるって程度ですね。僕は二人を捜します。先生は全体の指揮を取りながら、念のためカストゥールの動きを探って貰えませんか?」


「それは良いけど……もし誘拐されたのだとすれば犯人が近くに居る筈よ。一人で行動するのは危険じゃない?」


 ミリアの懸念はもっともだ。何しろつい先程もエルフを攫った誘拐犯と一戦交えたばかりなのだから。


「あの人達くらいの強さだったら無理せず様子を見るだけに留めますよ。でも、だからといって二人を見捨てる訳にもいかないでしょ?」


 ヴィーチェルは言わずと知れた伯爵家の令嬢であり、アイーダもそれ程爵位が高いわけでは無いけれども貴族の家の娘である。この二人に何かあれば、担任としてミリアが責任を問われるだろう。


「それに、ヴィーチェルさんに用があって攫ったのだとすれば、彼女は無事かもしれないけれどアイーダさんの方が危険です」


 アレクにそうまで言われると、ミリアとしては首を縦に振るしかない。自身の責任が問われるのは別に良い。だが、教え子に危害を加えられるのは許容しがたかった。


「分かったわ。その代わり、アレクと連絡を付けられる眷属を一体置いて行きなさい。そして二人を見つけたら直ぐに私に教えて」


 ミリアの言葉にアレクは頷き、アンを連絡係としてミリアと共に居させようと喚び出す。


「アン、ちょっといい?」

「はい。お父様」


 突如として現れた半透明の姿に、眷属に慣れつつあったミリアも流石に驚きを隠せなかった。それでもツヴァイやドライの時もそうだったが、叫び出さないのは流石だなとアレクは思った。


「半透明……この子も眷属なのね。どんな物質で構成されているのかしら」


 ミリアは研究者の眼で、じろじろと舐め回すかのようにアンを見ていた。その視線に耐えきれなかったのか、アンは怯えた表情でアレクの背に隠れた。


「先生、アンが怖がってますよ。幽霊を怖がらせるって凄いですね」


 アンがアレクの影に隠れた所為で非常に残念そうな表情となったミリアに、アレクは呆れた声を掛ける。そして、時間が無い事を思い出しミリアにアレクの能力を説明する事にした。


「研究用が欲しいなら後で別なのを召喚しますから、アンには手出さないで下さいね」

「分かったわ。でも、後で研究用に一体回してね?」


 アレクから受けた説明を聞き、ミリアの研究者としての興味が尽きないのか先程に増して熱い視線をアンに向けていた。


「では、行動を開始しましょうか。アンとは念話でやり取りが出来るので、先生も何かあればアンを通して伝えてきて下さい」

「わかったわ。アレクも十分気をつけて」



 ミリアはそう言って生徒をとりまとめる為に駆けていった。

疲れから頭が回っていない……後で修正を加えるかもしれません。

おかしな箇所があれば感想欄にてご指摘お願いします~

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