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不死王の嘆き ~死神から呪福を貰い転生しました~  作者: 藤乃叶夢
第二章 ゼファール王立学園 入学
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三十七話 第四の眷属ドライ~不穏な気配.

「《ファイアボール》!」


 アレクの唱えた火属性の中級魔法は通路の先から現れたゴブリンの集団をまとめて火だるまにした。燃えて全滅したゴブリンから魔石を抜き取ってアレク達は先へと進む。そんな主に眷属から嘆きともつかない言葉が零れる。


「主殿一人で十分なのではないのか?」

「まぁまぁ、楽出来てる内が華ってさ。ツヴァイの旦那は堅苦しく考えすぎですよ」


 アレクの前を歩く二体の骸骨騎士から、そんな会話が聞こえてくる。


「ドライの言う通りだね。それに、二人が居てくれるから魔法が打ち放題なんだよ」


 そう言ってアレクは二体目の骸骨騎士の方を見やる。二層辺りから一度にわいてくる敵の数が目に見えて増えた所為で、もう一体スケルトンを呼び出す事にしたのだ。

 呼び出したのは両手剣を持つ《スケルトンソルジャー》である。

 ツヴァイは少し堅苦しいので、少し軽い感じをイメージしてしまったのだが、現れた骸骨騎士は少し以上に性格が軽すぎた。


『あんたが俺の主か? まだ餓鬼じゃないか』


 召喚後、開口一番にこう言われ、アレクは唖然とした。ツヴァイとアンなどは目に見えて怒ってしまい、一触即発の空気となったのは記憶に新しい。

 名前はドライと名付け、一応は眷属の仲間入りをしたのだが……。 慣れてくると、今度はアンを口説いたりアレクをからかったりと、言動が軽過ぎるドライにアレクを含めたメンバーは振り回されていた。


(良く言えばムードメーカーなんだろうけどなぁ)


 一週間も共に居ればそれにも慣れても来る。それに、一件軽薄そうなドライだがその実きちんと働いてくれる。ツヴァイとの連携もしっかりと取って、アレクへと近づく敵は全て防いでくれていた。やる事はやるので、段々とツヴァイもアンも認めて来たようだった。


「それにしても……この数日二層ばかりですが、些か敵が弱すぎですね」


 ドライを呼び出した時を思い出していたアレクへアンがそう言って溜息を吐いた。確かに今のアレク達に対してだと、弱すぎるのは否めない。とはいえ、本来は一年生のチームが潜る前提なのだから仕方が無い事だろう。この二日程は、明らかに過剰な火力で殺す、通称オーバーキルと言う戦い方をしていた。


「学園での力を得るという目的自体は達成できそうだけど。冒険者としてやっていくにはまだ実力が足りていないし仕方ないかな」


 アレクはそう言って近づいて来た魔物を風魔法の一撃で吹き飛ばす。実際は、補助魔法によって全身の能力を一時的に引き上げる事は可能で、同世代の魔法使いになら勝てるだろうという思いもある。だが恐らくガルハートには一本も当てれないだろうし、魔法の練度でもミリアには負けているだろう。

 この二週間でミリアから属性魔法の中級と、身体強化の魔法を教わった。一応、授業やチームでのダンジョンアタック中には使わないように言われている。何しろ覚えている魔法で言えば二年生に匹敵するのだ。


「それでも、卒業までに盗賊団の情報だけでも調べたいところだけど」


 そう呟いたアレクの周囲に、普段より高い魔力が渦を巻く。雰囲気の変化に気付いたツヴァイとドライが何事かと振り向いたのを見て、アレクは何でも無いと首を横に振る。

 毎週のようにシルフの気まぐれ亭へと働きに出ているのは、決してお金の為だけではない。もう一つの目的としては、酒場へと集まってくる情報の収集だ。

 様々な職に就いている人達や、偶にやって来る旅人などからそれとなく情報を仕入れているのだ。


(今のところめぼしい情報はないけどね……)


 過去に何度も現れては、略奪と虐殺を繰り返す盗賊団『濡れ鴉』。この半年近くは全くと言うほど現れたという話が聞こえてこなかった。騎士団のレベッカともこの前会ったのだが、目ぼしい情報は無いとすまなそうに謝っていた。

 決して少なくない人数である盗賊団が、全く痕跡を残さずに消えるものだろうか? アレクはそこに疑問を持っていた。部屋には地図を持ち込み、盗賊団が過去に現れたと聞いた場所にチェックを付けて法則性を模索しているのだが、全くと言っていいほど見当がつかめなかった。

 アレクは二の守護者を最大火力の魔法で消し炭にしてから、地上へと帰還していった。

 翌朝、布団で惰眠を貪っていたアレクは、部屋の扉を叩く音で目を覚ました。慌ててズボンを履いて扉を開けると、そこには暫くぶりに見るフィアが立っていた。


「おはよう、アレク君。もしかして、まだ寝てた?」

「久しぶりだね、フィア。いや、もう起きようと思ってたところだから」


 アレクは寝癖を直しながらフィアを中へと招き入れた。フィアは父親がまかされている領から母親が訪れていて、その間王都にある別邸へと行っていた筈であった。寮へと戻って来たという事は、母親は自分の領へと戻ったのであろうか。


「三週間ぶりかな。お母さんはもう自領へと戻ったのかな?」


 アレクが尋ねると、フィアはふるふると首を振り否定した。


「ううん。明日か明後日くらいまでは王都に居るわ。あのね、私が王都でどんな様子かを、お友達からも聞いてみたいんだって。でね、エレンとランバートに声かけてみたんだけど不在で……アレク君よければうちの母に会ってくれないかな?」


 フィアの頼みにアレクは戸惑う。フィアの母親という事は男爵夫人である筈だ。対して自分は平民であって会っていいのか、悩むところだった。

 アレクが悩むのに予想がついていたのか、フィアは慌てて言葉を付け足した。


「大丈夫! 母は私と一緒で身分とか気にしない人だから。誰も連れて行かなかったら、『貴方は王都で友達の一人も作れなかったの?』ってからかわれそうなんだもの」


 必死で頼んでくるフィアに、アレクは苦笑しながら頷く。フィアがここまで言うのだから、平民だからと面と向かって侮辱される事もないのだろうと考えた。


「それで、会うのは何時になるの?」


 特に予定も無いので、アレクはフィアへと尋ねた。フィアは、都合さえ良ければ今日の昼食でも一緒に食べないかと言われている事を告げた。時計をみると、朝九時でありまだ時間的な余裕はありそうだった。

 アレクは十一時に寮の前で待ち合わせをする事にし、一旦フィアと別れた。目が冴えてしまったので二度寝は諦めると、アンに軽めの朝食を作って貰い身支度を整えるのであった。

 待ち合わせの時間となったので、寮を出たアレクにフィアが気付いて手を振って来た。フィアは可愛らしい白のワンピースに水色のミュールだった。


「服似合ってるよ。何時もより可愛いね」


 そう言って褒めると、フィアは少しだけ頬を染めてありがとうと応えた。そう言ったアレクの服装は入学式に着ていた、少しだけ上等なブレザーとハーフパンツの恰好だ。


「ごめんね、こんな恰好で。きちんとした場所へ着ていく服が無くて」


 そう言ってアレクは謝るのだが、フィアは首を振って大丈夫だと告げる。


「大丈夫だよ! どこも可笑しくないし。それに変に着飾るような場所じゃないから」


 そう言って微笑むフィアに癒されながら、フィアの案内でザンバート家の別邸へと向かった。



 ところが、屋敷に近づくとどうにも慌ただしそうな雰囲気だった。フィアと顔を見合わせて足早に屋敷へと入ると、家令と思われる男性が慌ただしくメイド達に指示を出している場面に遭遇した。


「セバス! これは何事なの?」


 フィアの声にセバスと呼ばれた初老の男性が気付き、慌てて近づいて来た。


「リールフィアお嬢様! お帰りに気付かず申し訳ございません。少々問題が発生しておりまして。……そちらの方は?」


 セバスはそう言うと、アレクへと視線を向けた。フィアが学友だと説明すると、セバスは申し訳なさそうにアレクへと告げる。


「大変申し訳ありませんが、少々立て込んでおりまして。本日のところはお引き取りを」

「アレクは私がお母様に会わせる為に呼んだのよ? 良いから何があったのかお言いなさい!」


 普段のフィアからは想像も出来ない程、凛とした声だった。こうしていると貴族なんだなと、アレクは場違い的な事を考えていた。

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