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不死王の嘆き ~死神から呪福を貰い転生しました~  作者: 藤乃叶夢
第二章 ゼファール王立学園 入学
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三十六話 眷属とのダンジョンアタック.

 夜九時を過ぎた頃、アレクは一人でダンジョンの入り口へとやってきていた。勿論、アレクの影の中にはアインとツヴァイが潜んでいるし、姿を消しているだけでアンも傍に居る。

 辺りは真っ暗で、遠くに寮の明かりが見えるだけだ。アレクは灯りを持たず、暗視能力に頼ってダンジョン前まで移動してきた。


(つくづく便利な能力だよな)


 アレクはそう呟きながら、危なげない足取りでダンジョンの階段を下る。

 入口を塞いでいる扉を開けて中へ入ると、早速アインとツヴァイを影の中から具現化させる。


「さて、灯り無しで行くつもりだけど。皆見えてるよね?」


 アレクが尋ねると、アンもツヴァイも大丈夫だと返事をした。アインも首を振って肯定の意を返してくれた。

 早速とばかりに、隊列を組んで奥へと進んで行く。先頭はツヴァイで、その足元をアインが追従する。アレクが最後尾を進み、その傍らをアンがふよふよと浮かんでいる。


 万が一にでも、この光景を他の学生が見たならば、腰を抜かしていただろう。それだけ、異様な光景だった。アインもツヴァイも眼窩が赤く光っており、唯一人間の姿であるアレクも同様に眼が赤く光っているのだ。

 そんな百鬼夜行も逃げ出しそうな一行は、徐々にダンジョンの奥へと進む。ツヴァイが歩く度に、骨と骨鎧がぶつかる音が暗闇に響く。それ以外の音が全く無い状態で暫く進むと、不意にアンが声を出して知らせる。


『前方の天井に、巨大蜘蛛ジャイアントスパイダーが二匹見えます』


 その言葉に、ツヴァイとアインが戦闘態勢を取った。アレクは先制攻撃をすべく、巨大蜘蛛へと魔法を撃つ。


「何時もは抑えて撃ってるからな。今日は人目が無いから思い切り撃てるぞ!」


 アレクは攻撃魔法を覚えてから一度しか本気で撃った事が無かった。たった一回で、ミリアに叱られ、アンには自重してくださいと叱られたのは苦い思い出だった。

 数か月に渡り、抑えて来たストレスをここぞとばかりに解き放った。


「久々の本気! 《ファイアアロー》!」


 暗闇に青白い炎が軌跡を残して飛んで行った。放った《火矢》は狙い通りに蜘蛛の魔獣へと着弾し、一撃でその全身を燃やし尽くした。


「よっし!」

「よし! じゃありません!」


 アレクがガッツポーズを取ると、アンがすかさず突っ込みを入れた。連携と戦闘訓練をツヴァイ達にさせるのが当初の目的と言っていたのに、一撃で沈めてしまっては意味が無いのである。


「大丈夫だって。もう一匹残ってるから……」


 アレクはそう言い訳をすると、言葉通り残った方の蜘蛛が床へと降りてくると、アレク達の方へと近づいて来た。

 蜘蛛を近づけさせまいと、ツヴァイが進路上に移動し、盾を構える。蜘蛛はツヴァイに向けて糸を吐き出すと、盾を絡めて奪い去ろうとしてきた。

 蜘蛛とツヴァイが引き合っている間に、その横からアインが駆け寄り蜘蛛の脚へと噛みつく。ひと噛みで脚の一本をもぎ取ると、蜘蛛の態勢が崩れて糸を引く力が弱まった。そこへツヴァイが近づいて剣で胴体を一突きにして、止めを刺した。


 初戦はアレク達の余裕の勝利だった。数か月間、愛玩動物扱いだったアインは、戦闘で役立った事に嬉しそうに尻尾を振っていた。

 その後も、順調に勝利を収めていったアレク達は、一層の守護者の間へと到達していた。


「やっぱり、道を覚えてたから辿り着くのが早かったね」


 一行がダンジョンに入ってから、たったの二時間で最奥へと辿り着いていた。昨日までの探索しながらに比べると、真っ直ぐ進むだけだった所為で、予想外に早く着くことが出来ていた。

 アレクが魔法を抑える必要が無かった事、そして前衛であるツヴァイとアインに至っては、怪我などに気を使わなくて良かった為、道中は余裕だった。


「この調子で、守護者も攻略しちゃおう」

「承知!」


 アレクの言葉に、ツヴァイが応えて扉を押し開ける。彼も数度の戦闘で経験を積み、当初よりずいぶん動きが良くなっていた。

 扉を開けたその先は、数日前と同じドーム状の広場だった。だが、以前と違い現れたのは一角兎ではなく、巨大な蛇だった。


「あれは、大蛇ですね」


 そう、奥で蜷局とぐろを巻いている蛇は、かなりの長さを持つ大蛇だった。胴回りは三十センチメートルはあるだろうか。大蛇は、アレク達侵入者に気付いたのか、ゆっくりと蜷局を解き、こちらへと向かって来た。


「アインもツヴァイも巻き付き攻撃だけは注意してね? 砕けそうだし」


 太い胴で締め付けられれば、ツヴァイと言えども砕け散ってしまいそうに思える。こちらへと向かってくる蛇の体長は十メートルを超えているように見える。


「この骨鎧はそこそこ丈夫であるので大丈夫だとは思う。だが……アインが一口で飲み込まれそうですな」


 ツヴァイはそう軽口を叩きながら、油断なく盾を構える。問題は、アインのサイズだと大蛇の太さに歯が立たない事だろう。

 どうしたものかと思っていると、不意にアインが一声鳴き身を震わせ始めた。

 徐々に変化していくアインの姿に、アレクは大蛇の事を一瞬忘れて見つめていた。アインの体長は元の七倍、一.五メートル程に変化していた。全体的に凶暴な姿へと変貌したアインの口は、アレクの頭くらいなら丸齧りできそうな大きさになっていた。


「アイン……だよな?」


 何を当然な事を言っているのだと自分でも思いながら、思わず口から洩れてしまった。巨大なボーンウルフとなったアインはアレクへと視線を向けると頭を下げて肯定の意を示した。


「お父様、今は大蛇を倒す時ですよ」


 アンの言葉にはっとして意識を戦闘へと切り替える。既に大蛇はツヴァイの目の前まで来ており、噛みつきを盾で防ぎながら、剣で攻撃を始めていた。


「よし、アイン! 全力で戦ってみて」


 アレクの言ったその言葉に、アインは素早い動きで大蛇の胴体へと噛みついた。胴体への攻撃に、大蛇はシャーと空気の漏れるような鳴声を響かせながら体をくねらせる。だが、アインの素早い動きは巻きつきの攻撃をするりと躱して、何度も噛みついてその身を削ってゆく。

 アレクは少し離れた場所で、徐々に動きが鈍くなっていく大蛇の姿を眺めていた。自分が手をだす必要性が感じられない程、アインとツヴァイの連携は見事だった。



 時間にしてたったの三分で、大蛇はその身を地面へと横たえ動きを止めた。戦いが終わるとアインの姿は元の手のひらサイズに戻り、アレクへと身をすりつけてきた。


「すごいね。アインの噛みつきも爪も予想以上の強さだ。でもなんで大きさを変化出来るんだ?」


 アレクはアインの頭を撫でながら呟いた。倒した大蛇は、ツヴァイが剣で魔石を抉り取っている所だった。

 どうやらアインは必要に応じて身体のサイズを変化させる事が出来るようだ。変化させた後は保有する魔力が大きく減るらしく、アレクが魔力を供給してやらねばならなかった。



 一層を攻略した事でこの日のダンジョン攻略は終えたのだった。

 人目につくことなく、夜中過ぎには部屋へと戻ったアレク達は、明日からの予定を相談する事にした。幸いにも、先ほどまでの戦闘の興奮が残っているのか、眠気が来ないのである。


「アインの身体が大きくなれるのはなんでだろうね。そのうちエテルノ様に聞いてみないとな。何か不具合があっても困るから暫くは巨大化は無しね?」


 アレクの言葉にアインはどことなく悲しそうにしている。そんなアインに、アレクは頭を撫でながらフォローの言葉をかけた。


「アインはそのままでも蜘蛛とか食いちぎってたじゃないか。中層になれば亜人系になるし、脚とかに噛みつけば十分役に立つよ」


 早く中層へと潜り、亜人と戦ってみたいとアレクは思っていた。しかし、そうなると火力がアレクだけとなる為、もう少し守りが欲しいと今日のダンジョンで痛感した。

 敵が複数でてくると、ツヴァイの横を抜けてアレクまで接敵されてしまう事が何度かあったのだ。


「ツヴァイの他にもう一体スケルトンを召喚するか。《リッチ》にも興味はあるけど、魔法職が増えても今は意味が無いし……」


 今日のダンジョンでアレクは、遠慮なく魔法を使っていたのだが、まだまだ余裕があった。枯渇までいけなくとも、それなりに減らすには手当たり次第に魔物を倒すしか無いのではないかと思えてくる。


「ダンジョンを手当たり次第に歩いて敵を倒すのでも魔力は足りるんだろうけど、移動が疲れそうだなぁ」


 そんな事を呟いている内にやっと眠気が襲ってきて、アレクは眠りについた。

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