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不死王の嘆き ~死神から呪福を貰い転生しました~  作者: 藤乃叶夢
第二章 ゼファール王立学園 入学
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二十八話 ダンジョンと魔物について.

「今日の授業は、ダンジョンと魔物についてです」


 週が明け、登校したアレク達に対してミリアはそう言って授業を始めた。今まで魔法や武器の扱いについては学んできたが、魔物について言及するのは初めてである。


「まず、入学初日にダンジョンについてお話ししたのを覚えていますか? 学園で保有するダンジョンは安全のためチームを組んで入るのが規則となっていますが、毎年一人くらいは単独で潜る人がいます」


 そう言って、ミリアはアレクをちらりと見た。


(何でいつも、こういう話の時に僕の方を見るんだろう……)


 眷属を召喚して一人で潜ってみたいと思っていただけに一瞬どきりとする。


「先日の試験に合格したとはいえ、皆さんは未だ未成年です。ダンジョンに潜る際は教師か神殿の神官が必ず同行します。間違っても単独で潜ろうとは思わないでください」


 そうミリアは言うとダンジョンについての説明を始めた。

 学園が管理しているダンジョンは全十層である。

 なぜ敷地内にダンジョンがあるかといえば、元々ダンジョンがあった上に王都や学園が建てられたのだという。


「ゼファール国内には大小あわせて四つのダンジョンがあります。そして、魔物はそのダンジョンから現れるのです。となれば、ダンジョンを見張ることで地上へ魔物が這い出してくることのないよう管理しているのです」


 要するにダンジョン内で発生する魔物を間引いているのだとミリアは説明した。


「だとすれば、ダンジョンの入り口を塞いでしまえばいいんじゃないですか?」


 生徒の一人がそう問いかける。それに対してミリアは首を横に振って否定した。


「過去に同じような事を考えて実際に行った例があるの。結果はダンジョン内に魔物が溢れ、塞いだ入り口を破壊して地表へ魔物が大量に這い出てきたらしいわ。おまけに出てきた魔物は以前よりも強力な個体ばかり……全ての魔物が討伐され事態が終息するまでに周辺の五つの町が滅び、死者は一万人に及んだと言われているわ」


 その凄惨な話に生徒は皆顔を青くして押し黙った。


「このことは『大氾濫』とのちに呼ばれて各国の王や領主たちに伝えられたわ。貴方たちの中で領地を継ぐ人もいるでしょうけれど、拝領するときに改めて言われるはずよ」


 ミリアの言葉に何人かの者は真剣な表情で頷いている。彼らは将来父親の領地を受け継ぐ者なのだろう。


「先生。そうであれば、ダンジョンそのものを破壊することは出来ないんでしょうか? 例えばダンジョンの核となる何かがあるとか……それを破壊出来ないんですか?」


 そう発言したのはアレクだった。前世の知識の中にダンジョンが登場する空想物の小説や漫画があったが、それらには大概『ダンジョンコア』などと呼ばれる核が存在していたのを思い出したのだ。


「あら『コア』を知っているの? それについても過去に試行錯誤されているけれど結果としては全て失敗に終わっているわ」


 アレクの質問に対してミリアが答える。

 魔法や武器ではダンジョンの壁や床は破壊できないか、ある程度壊すことが出来ても一定時間で修復されてしまうようだ。また最下層には確かにダンジョンの中心となる『コア』のような物はあるらしいが、それを守る魔物が強大であること。仮に魔物を倒したとしてもコアに触れることは出来なかったのだそうだ。


「コアへ触れようとすると、とても強い魔力が噴出して近づけないそうよ」


 ミリアはそう言うと話題を変えた。


「さて、次は魔物についてです。魔物の特徴を知らないと、どんな弱い相手にでも負ける事があります」


 生徒の殆どは魔物など見た事は無い。これは貴族であるから街の外へと出ることが無いというものあるが、国の政策で人里周辺の魔物については、騎士団や冒険者によって優先的に狩られているからだ。


「魔物と普通の獣との違いは第一にその大きさです。第二に額に魔石が填まっていること。第三に目が白く濁っている事が特徴としてあげられます」


 ミリアは人間と魔物の違いについてアレク達に語っていく。

 魔物の多くは獣や虫の姿を模している。ネズミや猫のような小動物の姿からヒョウや虎のような中型の動物。芋虫のような姿やカマキリや蛇などその姿は多種に及ぶ。

 だが、通常の獣や虫と異なるのはその大きさである。

 芋虫などでも大きさは五十㎝ほどになり、カマキリなどに至っては二メートルにもなる。ネズミなども軒並み巨大化しているのだ。


 また、人型の魔物も存在する。醜い容姿をしたゴブリンを始め、巨大な体躯をしたトロール。中には体長五メートルを超す巨人タイプもいるそうだ。


「虫や獣の姿をした魔物は少数の群れで行動しますが、人型のものはその種族ごとに大規模な群れを形成することがあります。ダンジョン内ではないけれど、ゴブリンなどのランクの低い魔物ですが五十体を超える群れが見つかった記録もあるわ」


 例え人型である魔物の中で最弱と呼ばれるゴブリンでも五十体も集まれば町が一つ滅ぶ可能性がある。そして群れが大きくなるほど上位種と呼ばれる個体が発生している可能性が高くなる。

 通常のゴブリンは体長が一メートル程であるが、上位種のゴブリンジェネラルと呼ばれる個体ともなれば体長はその倍にもなる。そしてゴブリンの最上位のゴブリンキングともなれば、オーガにも匹敵する強さを誇る。

 万が一にもそのような群れが発生してしまえば中級冒険者だけでは対処できなくなる。ゴブリンと同数の冒険者に加え、上級冒険者が複数名必要となるだろう。それほどキングと呼ばれる個体は脅威なのだ。


「少なくとも学園のダンジョン内において上位種が発生した事はこの数十年無いわ。学生が潜る階層は一層から五層が多いけれど、六層以降に関しては定期的に冒険者を雇って間引いて貰っているの。長い間放置されているようなダンジョンであれば上位種が居る可能性があるから他のダンジョンに潜る時は注意が必要ね」


 学園のダンジョンには上位種が出現しないと聞いて生徒達から安堵の息が漏れた。発生する可能性がゼロでは無いが、その場合同行する教師か神官が対処する事になる。


「そして皆さんも知ってのとおり、魔物を倒すと魔石と呼ばれる結晶を手に入れることが出来ます。この魔石は魔道具を使用する際に必要となっていて学園でも買い取っています。額に埋まっている魔石をえぐり取り持ち帰るようにしてください。色によって買取額は異なるので購買にある一覧表でどの程度の価値があるか確認しておくように」


 これについてはアレクはバンドンから聞いていたので知っていた。ふと、ダンジョンに出る魔物はどの程度の魔石が付いているのか気になったので、ミリアへ聞くことにした。


「じゃあ、学園のダンジョンの一層に出る魔物の魔石は何色なんですか?」

「精々、白か黄色よ」


 アレクの問いかけに、きっぱりとミリアは答えた。それを聞いたアレクは失望の色が隠せなかった。てっきりダンジョンで得た魔石が収入に繋がると考えていたのだ。想定していた収入が得られないと思うと少し悲しくなる。


「二層以降の魔物なら薄い緑くらいはあるかもしれませんよ」


 落ち込んだアレクを見てミリアは付け加えた。だが、そもそも収入を得にダンジョンに潜る訳ではないのだと釘を刺す事は忘れなかった。戦う術を身に着ける為なのだと生徒達に言い聞かせる。


「ですから、目先の欲に囚われず生き残る事を第一に考えなさい。命と数枚の銅貨を秤にかけるまでもないでしょう?」


 そう言うと生徒達は納得して頷いた。アレクも残念ではあったが、力を付ける為なのだと思い直し頷くのであった。

 

「そして、亜人系は武器を扱う場合があります。あとは学園のダンジョンには居ませんが、魔法を使ったりブレスを吐く魔物もいます」


 この話に生徒達は驚き、ざわめきが広がる。ミリアはパンパンと手を叩き静かにするよう言うと、説明を続けた。


「魔法といっても女神エテルノが伝えた魔法ではありません。ですが、似たような魔法を使う魔物がいるのは事実です。攻撃系ばかりで阻害系や防御系を使わないのが救いですが、火力が高かったりするので注意が必要です。ブレスは巨人系や亜竜タイプに多いですね」


 何れにしろ、学園のダンジョンでは出ないですけど。と再びミリアは呟き生徒を安心させようとする。万が一にでもそんな魔物が出るなら、生徒をダンジョンなんかに入れる訳がないのだ。

 こうして、ダンジョンに出る魔物の種類や弱点。攻撃方法などを順に教えながら授業は続いた。当面は一層と二層なので獣型と亜人についての説明をアレクはひたすらノートに書き取っていく。


「また、魔物や魔獣は魔石の他に牙や爪、革などを剥ぎ取り売る事が出来ます。これらは道具や武器防具に使用するので学園の他、冒険者ギルドなどでも買い取りをしています。どの魔物から何を得られるかもしっかり覚えるようにしてください」


 魔物の解体については、これから数日座学と午後の実技で教えられる事になった。ガルハートが冒険者として経験が豊富なので、適当な魔物を冒険者ギルドから借り受け実演してくれるそうだ。

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