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輪廻転SHOW!魔王の息子  作者: 月のそうま
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究極矢と大地の牙なのです

三マワリ〈日〉目、樹海の目印となっている『シム湖』を越える。

ここまで着いてくる冒険者はいないので、ロックの講義は終わりだった。

『シム湖』辺りまで来られる冒険者は基本的に自分たちなりのルートを持っているものである。

狩る獲物によって『シム湖』周辺では一気にバラける形になるのだ。


「またどこかに雷牙槍地竜ヴァジュランダドレイクの死骸でも落ちてないかねえ……」


『シム湖』を横目に『深緑の狼』リーダー、ロックが呟く。

『深緑の狼』はミルキルからいち早く情報を買って、あの時は随分と儲けた。

濡れ手に粟のようなことは滅多にないが、稀にはあるのが樹海というものだった。


「ふむ、このメンバーなら雷牙槍地竜ヴァジュランダドレイク狩りを試みるのも悪くないかもしれんぞ?」


『砂塵の爪』リーダー、アールタイルがそんなことを言うが、ロックはすぐに否定する。


「よせやい、そんなこと言うのはアンタんとこぐらいだよ……」


「おい、コイツと一緒にすんな!」


「まったく、アールタイルだけだよ、そんなアホなこと考えるのは……基本、俺たちゃ、堅実・確実がモットーなんだぜ!」


『砂塵の爪』の冒険者たちは口々に心外だと言う。

アールタイルはその禿頭に青筋を立てるが、全員気にした様子はない。


「お前ら……」


「ははっ!相変わらずアンタら仲いいな……」


ロックはそんなトップパーティーの余裕ぶりに、適わないなと笑うのだった。


四マワリ〈日〉目、遺跡発掘隊は『白い沼』を越える。


「ここから西に直進する。川があるはずだ。

さすがに『魔物の吹き溜まり』があった場合は迂回する予定だが、ここから先はほぼ未知の領域。

全員、心してくれ!」


先頭を進む『風界の鷲』リーダー、ライアスが全員に声を掛ける。

隊列も少し変更して、『風界の鷲』、『白夜の蒼炎』、中堅パーティー三組、輜重隊である新人パーティー『風精団』、『大地の牙』と続き、その輜重隊の両脇に古参パーティー三組が着く、後列は『砂塵の爪』、『深緑の狼』という並びになる。

グラディス老は中堅パーティーの中程に下がらされた。


「ウチとそちらとで斥候を出したいがいいか?」


ライアスがマルガレーテに声を掛ける。


「いいだろう……ミルキル、頼む」


「あいよ!」


ミルキルが前に出る。


「僕も行くです」


ウイングが弓を手に名乗りを上げる。


「わかった。ミルキル、ウイングと行ってくれ!」


マルガレーテが許可を出す。


ミルキルとウイング、『風界の鷲』の男斥候は三人で前に出る。

全員、手には弓を持っている。

半キザミ〈時間〉も進んだ時、ウイングの精霊たちによるソナーに引っかかるモノがあった。


「ちょっと待つです……」


ウイングはソナーの指し示す方向に指を向ける。

前方五百ミョーン〈メートル〉に動く影がある。


「よく、見えたな……」


男斥候が目を凝らす。


「でかいな……慎重に近付こう……」


ミルキルが目配せして、小走りになりながら近付いていく。

残り二百ミョーン〈メートル〉程で、それが何なのか分かってしまう。


「うわ……槍地竜スピアドレイクじゃんか……」


「よし、一人戻って知らせてきてくれ……」


男斥候が指示を出す。

ウイングはそれを受けて、本隊に駆け戻る。


「前方五百ミョーン〈メートル〉に槍地竜スピアドレイクなのです」


「一体だけか?」


ライアスが聞く。


「一体だけでこっちに向かって来てるです」


「よし!全体止まれ!

前方に槍地竜スピアドレイクが一体いる。こちらに向かって来ているらしい。ウチとアールタイル!お前のところで対処しよう。他はこの場で待機だ!」


「待て、斥候でミルキルが残っているんだ、私たちも行かせてもらうぞ!」


マルガレーテがライアスに言う。


「……仕方ない。認めよう」


ライアスが後方から来る『砂塵の爪』を待って、三組で前方に向かう。

走りながらアールタイルが言う。


「俺たちで尻尾を止める。ライアスのところは頭を頼む。

マルガレーテたちは腹にデカイのをお見舞いしてくれ!」


「いいだろう!」


マルガレーテが応える。

三組がミルキルたちと合流した時には、既に槍地竜スピアドレイクは百ミョーン〈メートル〉の辺りまで迫っている。


「私たちは腹だ。一気に行くぞ!」


マルガレーテがミルキルに声を掛けて、全員で走り出す。


「ボクはどうしたらいい?」


アキラが聞く。


「アキラは精霊魔法で後ろ足を狙ってくれ!」


マルガレーテが指示を出して、『白夜の蒼炎』は槍地竜スピアドレイクの左側に回り込む。

『風界の鷲』は正面で足を止めて、男斥候の弓と女魔法使いの風魔法で初撃を決めてから、槍地竜スピアドレイクの右側に少しずつ移動を始める。

『砂塵の爪』も、槍地竜スピアドレイクの右後ろ足に取りつくとアールタイルの大剣が唸る。

深々とめりこんだ大剣に槍地竜スピアドレイクが悲鳴を上げて、すぐ様尻尾が飛んでくる。

それを大盾持ちが弾くと、他の冒険者の槍が尻尾の付け根辺りを狙い始める。


槍地竜スピアドレイクの頭と尻尾が右側に向けられた瞬間、『白夜の蒼炎』の攻撃が開始される。

アキラが指で鉄砲の形を作ると、その指先に赤い光が生まれる。

その赤い光から放たれるのは火球で左後ろ足に着弾、爆発する。

左前足に取りついたモーリーがカタナを振るう。

硬い皮膚をものともせずに、斜めに剣閃が走った。

慌てて身体の左側を払うように槍尻尾が振るわれるが、カイトシールドを構えたマルガレーテがかち上げるようにそれを逸らす。

ムースとアリアの水魔法が巨大な槍となって、槍地竜スピアドレイクの腹部に突き立つ。

槍地竜スピアドレイクの頭が左側を向く。その口腔内にはマグマが渦巻いている。


「初めての究極矢・剣山なのです!」


弓を引き絞ったウイングから、その頭に向けて矢が放たれる。

究極矢・剣山と名付けられたソレは、鏃後方に斜め取り付けられた魔導器から火を吹く。回転力と推進力を増したソレは弓矢のくせに、直進する。かと、思えば中央部の魔導器が発動、幻影を生み出し分身する。

槍地竜スピアドレイクはその竜眼を見開く。


「なんだ、それ……!?」


追撃の弓を用意していたミルキルが呟く。

ソレは、ぎゅあぁぁぁんッ!と異様な音を発して槍地竜スピアドレイクの眉間に突き立った。と同時に鏃に仕込まれた魔導器が発動、冷たくも鋭利な氷の刺が数十本、槍地竜スピアドレイクの顔から突き出る。


「ギャゴッ……」


急に身体中の力が抜けた槍地竜の頭が落ちる。と、同時に槍地竜スピアドレイクはその場にくずおれるように倒れた。


「おお……さすがサー・カヤーさんが究極と名付けるだけはあるです!」


ウイングは一人、はしゃいでいた。

慌てて飛び退く近付いていた面々、どうやら誰も巻き込まれずに済んだようだった。


「な、何が起きた……?」


理解できないライアスが顔を強ばらせて、恐る恐る槍地竜スピアドレイクの頭を覗き見る。

竜眼はあらぬ方向に向けられ、完全に死んでいた。


「さすがだな!もう倒したのか!」


アールタイルも回り込んでマルガレーテたちを褒め称えようとして、途中、固まる『風界の鷲』の見詰める先を見て、固まった。


『白夜の蒼炎』では、アキラ以外の全員がまたか、という顔で頭を振っていた。

ミルキルがウイングを見る。


「ウイング……それ……えげつないな……」


「十本で百ジンしたのです!」


「なんか……グロいね……」


アキラが感想を口にする。アキラにしてみれば、そもそもの基準がないので、特に固まるということもなかったようだった。


「エフェクトが超かっこよかったです!」


ウイングが感動を口にする。


「ま、まあ……早くカタが付いたのは良かったな……誰も怪我などなかったし……」


マルガレーテがなんとかそう言った。



末端価格三ジンと五十ルーン、一グト〈キログラム〉当たりの槍地竜スピアドレイクの肉の平均である。

冒険者はまず手が出ない高級食材だが、食べたことがないというのはアキラと新人パーティー『大地の牙』のメンバーくらいだろう。


『大地の牙』の元見習い少年ことレーザが荷車に積まれた肉を物欲しそうな顔で見ている。

同じく『大地の牙』でレーザと共にマルガレーテの査定を受けた元木こりのプションが、肉の塊をどすんと荷車に置いた。


「すげーよ!槍地竜スピアドレイクの肉の塊だよ!」


「そんな、すげーのか?」


プションが不思議な顔をしている。


「このひと塊で、売ったら二十ジンにはなるぞ!」


レーザは知ったような口調で偉そうに肉の塊を叩く。


「それは……すげーな。あのウイングって奴の弓矢で一発なんだろ。ボロい商売だな」


ぶっきらぼうにプションは言うが、その瞳は憧れに輝いている。


「バカ!俺たちが槍地竜スピアドレイクを倒そうとしたら、命が百個くらい必要なんだぞ!」


「そうよ!あのウイングさんは精霊魔法の使い手で、その上『白夜の蒼炎』でただ一人メンバーになれた男の人なんだから、あんたたちとは元が違うのよ!」


『大地の牙』の女性メンバー、リンが言う。

リンは『白夜の蒼炎』で風呂を借りたのをきっかけに、すっかりウイングのファンになってしまったようだった。


「そうそ、それに料理も上手いし、力持ちなのよ!

一昨日だって、剣熊ソードベアを片手で持ってきちゃうくらいなんだから、元々の素質が違うのよ!

……ああ、美味しかったなあ、燻製塩の肉串……」


リンに続くのは同じく『大地の牙』の女性メンバー、ミサルだ。

少し不満そうな顔を見せてプションが言う。


「俺も、怪力だぞ」


「たぶん、あれじゃないか?

シキシロさんみたいに若く見えるけど、どこかで長年冒険者やってたとか?」


レーザも女性陣が余りにもウイングを褒め称えるのが不満だったのか、そんなことを言う。


「彼が言うには十六くらいだったと思いますよ、年齢。

冒険者としても慣れている風ではありませんしね、私と違って……」


シキシロがレーザの後ろから営業スマイルを浮かべて言う。

ただし、目は笑っていない。


「あ、シ、シキシロさん……!?」


レーザが青くなっていた。


「まあ、ロートルから言わせて貰えば、常識破りなところはありますが、このシューティの町にも新しい風が吹いたってことでしょうかね?

レーザくんも、そうなれるといいですね?」


「あ、は、はい……」


「さあ、あまりモタモタしていると、他のパーティーにご迷惑になりますよ。

無駄話もほどほどに、出発しますよ……」


慌てて準備を調えて荷車を押し始める『大地の牙』なのだった。



暫く進むと、次々に魔物が見られるようになる。

それは樹海の外縁部で見られる魔物が殆どで、特に遺跡発掘隊の道程を塞ぐほどのものはいなかった。


「川だ!川が見えるぞ!」


先行する男斥候が叫ぶ。


「やはり、あったか!」


グラディス老が駆け出す勢いだったので、中堅パーティーたちに抑えられていた。


本隊が川に差し掛かって、一度停止する。


「川を辿るなら北西だな……」


『風界の鷲』ライアスが言う。

あまり大きな川でもない。川幅は七ミョーン〈メートル〉ほどで、渡ろうと思えば渡れるという程度だ。


「爺さん、ここからは近いのか?」


『砂塵の爪』のアールタイルが聞く。


「文献によれば、この先に支流がひとつ、その先に滝があるはずじゃ!その滝の辺りに遺跡はあると書かれておる……」


「……つまり、距離は分からないということですね?」


グラディス老の言葉にライアスが応じる。


「まあ、そうじゃな……」


グラディス老は逸る気持ちを抑えるように言う。

ライアスとしては地勢が分かっているこの辺りで、本日は野営にしたいと考えているようだった。

少し戻れば拓けた場所もあった。

ただ、休むには少々早い時刻でもある。


「では……」


ライアスが本日はここまでと言おうとしたところを、アールタイルが被せるように言う。


「もう少し進んでみないか?水辺が危険なのは分かるが、大して消耗している訳でもない。

依頼を考えれば、遺跡探しにどれくらい掛かるかも分からん。

進める内に進むべきだろう……」


「だが……」


ライアスが反論しようとしたところで、さらにアールタイルが被せる。


「ライアス。安全なのもいいが、危険を恐れるお前じゃないだろ?

怖いのは責任があるからだ。

だが、新人も含めて、俺たちは冒険者だ。

最初から多少の無茶は織り込み済みじゃないのか?」


ライアスが迷っていると、少し離れた場所で騒ぎが聞こえる。


「よし!いいぞ!ウイング、引けっ!」


「分かったのです!」


この先に進むか決めるための小休止の間、ミルキルが矢尻に紐を繋いで、魚を獲っていた。

樹海の魚は生命力が強いのか、矢の一発程度では死なない。

そこで矢を銛代わりに無理やり釣り上げようということらしかった。


紐の先を握るのはウイングで、ミルキルの矢が刺さった魚を引き上げていく。

それを見守る女性冒険者たちがキャーキャーと歓声を上げていたのだった。


「あ、このピラピラはアイドル平目なのです!」


ウイングが持ち上げたそれは、地上で初めて釣ったアイドル平目より、二回りほど大きい。


「それはキーラという魚で、刺し身や焼きで食べると美味しいですよ!」


見ていたシキシロが注釈をつけてくれる。


「キーラ?このピラピラがキラキラだからですかね?」


「さあ?でも、美味しいですよ」


微笑ましいという顔でシキシロは見ている。


「よし、ウイング、次行くぞ、次!」


女性冒険者や新人冒険者が挙って川面に目を凝らす。

魚影を探そうというのだ。


それを見て、ライアスが呟く。


「ふん、元気は有り余っているようだな……。

ならば、もう少し進むか……」


「おお、それがええ!

早く行こう!」


グラディス老がライアスの気が変わらない内にと急かすように言った。


隊列は川沿いにゆるゆると進む。

平坦な道がある訳ではないので、荷車の運行は中堅パーティーが助けている。

グラディス老は『白夜の蒼炎』のすぐ後ろを歩くことになった『砂塵の爪』が護衛に当たる。


夕刻が迫る中、一行の前には支流の分かれ目が見えている。

ちょうど正面に川の分岐点が見えていて、一行は扇状の地形にいることになる。


「全員、渡河するぞ!準備しろ!」


ライアスが号令を掛ける。

支流側に橋を掛けることになったようだ。

支流側は川幅がもう少し狭くなっていて五ミョーン〈メートル〉ほどだ。

元木こりのプションが樹海の中から木を選ぶ。


「こいつと、こいつ、あとはあっちの二本がいい」


「おお、分かるですか?」


横を着いて歩く、ウイングが聞く。

『大地の牙』レーザが、ライアスにプションを推薦した時に「おお、職人の仕事見たいです!」と手伝いを買って出たのだった。


「うん、真っ直ぐだけじゃなくて、上の方も太い。

あとは水の流れる音を聞く。コポコポしてると空気が入ってるから脆い。音がザーザーしてるのがいい」


コクコクと納得したようにウイングが頷く。

プションが方向を見て、斧を振るう。

コーン、コーンと良い音が響く。


と、ウイングのソナーに反応がある。

反応の方を見やれば、土がモコモコと動いていた。


騎士土竜ナイトモールですかね?」


「えっ?」


プションの護衛として一緒に着いてきた『大地の牙』の面々が辺りを見回す。

ウイングがモコモコする土を指で追いながら教えてやる。


「アレです」


見ればプションのすぐ側まて迫っている。


「プションっ!」


レーザが叫ぶ。

ウイングは冷静に見つめていた。


「ウイングさんっ!どうしたらっ!?」


リンの言葉を聴きながらも、ウイングはモコモコを見ている。


「遠距離攻撃を用意するです。初撃は僕が防ぐので、練習だと思っておもいっきりやればいいです……」


と、答えるやいなやウイングが音も無く駆け出す。

プションは何事かと、こちらを見ている。

モコモコはその背後で一度止まる。と思うと、一瞬、剣のような爪先が見えたと思った瞬間、土を吹き飛ばすように騎士土竜ナイトモールが伸び上がる。

プションが驚愕に目を見開く。

騎士土竜ナイトモールの長い爪が高々と頭上に光を放つ。

その時には、ウイングのキックが無防備に伸ばされた騎士土竜ナイトモールの土手っ腹に突き刺さった。


「ギュルラッ!?」


騎士土竜ナイトモールが吹き飛んで、それなりの太さがある木にぶつかって、その木をへし折るように止まる。


「今です!」


ウイングが声を上げる。


素早くリンがナイフを投げる。同じようにミサルが用意していた石弾の魔法が騎士土竜ナイトモールに飛ぶ。

レーザは慣れていなかったのか、まだ呪文を唱えている最中だ。

リンのナイフも、ミサルの石弾魔法も騎士土竜ナイトモールの鱗に阻まれ痛打にならない。


「ありゃ?ダメージいかないですね?」


ウイングがそれを見て首を傾げる。


「このおぉおおおっ!」


プションが斧を振りかぶって騎士土竜ナイトモールに向かっていく。

騎士土竜ナイトモールは立ち上がって、左腕を下から振り上げてプションを両断しようとする。

その左腕が振るわれる前に、ウイングの抜き打ちで放った魔剣サブナクがすれ違い様で騎士土竜ナイトモールの左腕を斬り飛ばす。

追いかける様に振るわれるプションの斧が騎士土竜ナイトモールの左肩から胸に掛けて、深々と打ち込まれる。


「プション、どけっ!火炎十字剣!」


レーザが放った初級の火魔法が騎士土竜ナイトモール目掛けて飛ぶ。

プションは慌てて、斧をそのままに火魔法を避ける。

騎士土竜ナイトモールの右足を縫い止める。


「ミサル!地魔法は効きが薄い!リン、突っ込むぞ!」


レーザが片手剣を抜いて走り出す。リンも刺突剣を抜いて続く。ミサルは別の呪文を用意し始める。


「良く見れば、そんなに早くないです!冷静にやれば大丈夫です!」


ウイングがアドバイスを送る。

弱った騎士土竜ナイトモールは確かに動きが鈍っている。

だが、鋭い右の爪は健在で左足で右足を庇うように、片足跳びのようにレーザたちに向かっていく。

プションは手放した斧の代わりに腰につけた鉈を抜いて、それを追いかける。

ウイングは振り向き様、頭上に氷の槍を魔法で浮かべて、いつでも援護できる形だけ調えて、見ていた。


飛びついたレーザが右腕の爪をじっくりと見る。

振るわれる爪を片手剣で受け、もう片手でそれを支えながら凌ぐ。

リンが騎士土竜ナイトモールの左足に刺突を繰り返す。

大きなダメージにはなっていないようだが、少しずつ動きが鈍っていく。

それを嫌った騎士土竜ナイトモールが渾身の力でレーザを吹き飛ばすが、リンに爪を振るおうとしたところに背後からプションの鉈が振るわれる。

右腕にプションの鉈を食らって、軌道がずれた爪がリンに当たるが、上手く革鎧の厚い部分で受けてダメージは最小限だ。

身体を回す騎士土竜ナイトモールだったが、今度は鉈を手放すことなくプションが距離を取る。


「風渾撃!」


ミサルの魔法が完成して、強力なエアハンマーが騎士土竜ナイトモールの胴体を撃つ。

騎士土竜ナイトモールはふらふらになりながらも、さらに身体を回してミサルを見る。


「ひっ……」


ミサルがそれに怯むがレーザがそこに立ち塞がる。


「ミサル!もう一発だ!」


果敢にレーザが突っ込む。ミサルはなんとか自分を鼓舞して、呪文を唱え始める。

勝敗を決したのはプションが背後から放った鉈だった。

首元を狙って放たれた鉈が騎士土竜ナイトモールの首に半ばまで埋まる。


「ギュリッッッ……」


騎士土竜ナイトモールがそれでも前へと動こうとする。


「う……うあああああっ!」


レーザが叫びを上げながら、片手剣を振り上げると、騎士土竜ナイトモールは倒れた。


「勝っ……た……?」


リンが呟く。


「……えっ?」


ミサルが呪文に集中していた顔を上げる。


「俺たち、強い!」


プションが空になった両手でマッスルポーズをして見せる。


「……」


レーザが無言で騎士土竜ナイトモールを見下ろしていた。


パチパチパチとウイングが拍手して『大地の牙』を称えていた。

頭上に浮かべた氷の槍はすでに消してある。

レーザと目が合う。ウイングはしっかりと肯いて見せる。


「う……うおおおおおぉ……!」


レーザが吠えた。


「おおーい!大丈夫かああ!」


ロックたち『深緑の狼』が駆けてくる。


ウイングが大きく手を振っていた。

ロックは場の惨状を見てから、ウイングを見る。


「お前がやったのか?」


ウイングはぶんぶんと首を横に振る。


「お前、一人の時は応援呼べって……」


ロックが苦言を呈そうとするとウイングが答える。


「やったのは『大地の牙』なのです!」


「はあ?こいつら新人だぞ?」


『大地の牙』は全員、誇らしげに、少し恥ずかしそうに笑っていた。

その時には『白夜の蒼炎』や『砂塵の爪』までがこちらまで来ていた。


「な……騎士土竜ナイトモール……」


アリアが驚いてウイングを見る。

ウイングはアリアに向かって言う。


「やっぱり奇襲攻撃さえ避けられれば、そんなに強くないですよ!」


「そうなの?」


アキラが聞くと、全員がウイングに一斉に言った。


「「「そんな訳あるかっ!!!」」」


ウイングは全員から怒られるのだった。


騎士土竜、弱いですね。

本来は騎士土竜は中堅パーティーが数組集まって、罠を仕掛けて、フルボッコするような魔物です。

硬い鱗と鋭い爪、物理攻撃に偏ったパーティーだと苦戦する……はず。

ちなみに、アールタイルは騎士土竜の鎧を新品で買って自慢してましたが、きっと物理だけでなく裏地に対呪装甲である魔法を使う魔物の魔法器官とか貼り付けたちょっといいやつなのでしょう。


頑張れ子供舌のアールタイル!

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