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輪廻転SHOW!魔王の息子  作者: 月のそうま
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指名依頼なのです

夜、『涼風亭』の食堂でマルガレーテをムースが慰めていた。


「お金、貸しますよ、マルガレーテ……」


チビチビと酒を舐めながらムースが言う。

マルガレーテは酒のグラスを抱え込むようにして、ぽつりぽつりと否定を言葉にする。


「ダメだ……ウイングに装備は自分で稼いだ金で買ってこそ、と話したのだ……ここでムースに借りを作ったら、いざという時に動きが鈍るかもしれない……そんなのは自分が許せない……」


「まったくもう……素直にウイングにプレゼントしてもらっても良かったじゃないですか……男性からのプレゼントを貰って使うなんて、マルガレーテならよくあることでしょう?」


途端、マルガレーテがグラスを呷るとその顔が真っ赤になる。

それは酒のせいだけとは言えない反応だ。

ただでさえ白磁に喩えられる白い肌が薄紅で染まる様は、新雪に落ちる桜花のようで、男でなくとも見とれてしまう。

だが、その肝心のマルガレーテは飲み干したグラスを両手で抱え込むようにすると、震えるような声で言う。


「ム、ムースと一緒にするなっ……わ、私はそんなにモテないんだ……プレゼントをくれるような相手など……」


その反応が驚きだったのか、ムースは素直に質問する。


「あら?まるでプレゼントを貰ったことがないみたいな言い方……アールタイルさんは良く色々とくださるじゃない……」


「違う!あれはパーティーの皆で使ってくれというから、貰うのであって、言わば先輩冒険者から後輩冒険者への激励じゃないか……。

それにアイツはいつも新しい装備を買ったとか、凄い獲物を取ってきたとか、自慢話をしてくる。

私達への発奮材料になればと思っているんだろうが……どれだけ悔しい思いをしたことか……。

あ、話が逸れたが、私個人でプレゼントを貰ったことなんか……ないんだ……誰からも……」


「え……?」


マルガレーテは男女間のそういった感情には疎いのか、貰った物をプレゼントと認識していない部分がある。

装備品の類は人間関係を冒険に持ち込みたくないからと断り、薬草、薬品類は恥ずかしがった男たちが、良ければ皆さんで……と口添えしてしまうためパーティーに対する贈り物として認識、お洒落な小物などは根無し草の冒険者だからと受け取らない、食事を奢るといえば、施しなら結構だ、と返してしまう。

杓子定規で不器用な女なのだ。

さらにいえば、アールタイルは自慢してくる頼りになるけどウザイ先輩くらいの認識でしかない。


クールビューティで鳴らしたマルガレーテに告白しようという勇気のある者はこの町にはいない。

美人過ぎて気後れしてしまうということらしい。

結果、マルガレーテの女性としての自己評価はかなり低いのだった。


ムースはこの自己評価の低さを覆すことから始めるしかないと、どう話を切り出すか考える。


そんな時、『涼風亭』のウォーレンが、いかにも見習い冒険者という少年を伴ってやってくる。


「ご歓談中に申し訳ございません。

ギルドからの伝言があると、こちらの方がお越しになっています……」


少年は律儀に頭を下げると話し始める。

その顔は町で五本の指に入るパーティーを前にしているからなのか、美人を前にしているからなのか、はたまた『涼風亭』のような高級宿に気後れしているからなのか、緊張が隠せないという面持ちだった。


「び、白夜の蒼炎に指名依頼が入ったので、明日の昼にギルドまで、ご、ごそ、ご足労して、来て欲しいそうです……」


「ふふ、そう緊張しなくていい。

明日の昼にギルドだな。了解したとギルドに伝えてくれ」


マルガレーテは自然な笑顔でそう言った。

少年はそれに当てられたのか、顔から火を噴きそうなほど真っ赤になって、どうにか「……はい」とだけ答えると、ギクシャクした足取りでギルドへと帰っていった。


ムースは、マルガレーテのこの自然な笑顔に何人の男たちがノックアウトされたことかと思いながら、マルガレーテにその自覚がないのだと考えると、世の男性陣にいたたまれない気持ちを抱くのだった。


そうして翌日、『白夜の蒼炎』は昼前にギルドへとやってくる。

ギルド内でもひと握りのパーティーしか入ることを許されない個室への扉を開けて、全員が入る。

ウイングも既に何度か入っているが、やはり誇らしげな気持ちになる。

部屋は広めの空間に円卓が置かれ、調度品が飾ってある。

片隅に置かれたコンロのような魔導具の上では湯が沸いている。

感覚的には応接間のような部屋だ。


アリアとムースが全員分のお茶を入れて、円卓に並んだ『白夜の蒼炎』の面々が緊張を解すようにお茶を飲む。

今回の依頼人はギルド側からなんの説明もされていない。

お得意さんなら事前に説明があるが、新規の指名依頼の場合、余計な先入観を持たないようにと説明がない。

つまり、新規の依頼人だ。


まだ依頼人は来ていない。

ミルキルが気楽に口を開く。


「マルガレーテ、良かったじゃん!指名依頼なら依頼料は上がるし、上手くいけばオリハルコンの足甲、間に合うんじゃないか?」


だが、マルガレーテは少し浮かない顔だ。


「ああ、だが、依頼によっては期日が掛かったりすると、取り置きから外れてしまう……安心ばかりもしていられない……」


「あまり時間が掛かる依頼ならお断りすればいいじゃないですか?表の張り出し依頼も幾つか纏めれば稼げるでしょうし……」


モーリーが言うとマルガレーテ以外の全員が頷く。

しかし、マルガレーテはと言うと。


「期日の問題は私の事情だ。パーティーとして受けるかどうかは別の話だ……」


「でも、皆、納得していることですし、別にいいんじゃないですか?」


アリアが全員を代表するように言う。


「いや、それではわざわざ指名してくれた依頼人に申し訳ない。それに私たちの信用問題にもなる。

私の事情をパーティーの判断に差し挟むのは筋違いだよ」


マルガレーテの口調はやんわりとしているが、そこは頑なに譲る気はないようだった。


そうして話していると、依頼人側のドアがノックされ、ギルド職員に案内された男が入ってくる。

男は三十代半ばくらいで、平民服を着ているがどう見てもカタギには見えない。

筋肉質な身体つき、きっちりとした所作、まだシゲリ〈夏〉の始めだというのに日に焼けた肌。


マルガレーテ、ムース、ウイング、遅れてアリアが立ち上がって一礼する。

挨拶するのはリーダーのマルガレーテだ。


「はじめまして、私は『白夜の蒼炎』リーダー、マルガレーテです」


「ああ、噂はお聞きしている。

私はこの町の領主、シューティ様の配下でバーリアと言う。

見知りおいてもらいたい」


「へえ、子爵様の配下ね……」


ミルキルが意味ありげにバーリアを見る。


「こら、ミルキル、失礼だぞ。

申し訳ございません。ウチの者が……」


「いや、いい。

気にしないでくれ」


マルガレーテの謝罪を軽く受けて、バーリアが円卓につく。

ムースは手早くバーリアの分のお茶を用意して配膳する。

バーリアはこれに手を上げて礼をすると、全員に座るよう促す。


「さて、早速だが仕事の話をしたい。

いいかな。

君たちに依頼したいのは、子爵様の魔物狩りの随伴だ」


「つまり、護衛任務です?」


ウイングが聞くと、バーリアは不機嫌そうになりつつも答える。


「いいや、護衛には専門の者がいるから不要だ。

君たちに頼みたいのは、魔物の追い込みだ……」


「はあ?なんだそりゃ?」


ミルキルが意味が分からないという顔をする。


「ふむ、分からないか……つまり、貴族の方々は遊興としての狩りを嗜まれる。

その時に獲物がいつまでも見つからないのでは興醒めというものだ。

そこで、君たちが獲物を探し出して子爵様たちの御前まで追い込むんだ。

それを子爵様たちが仕留めるという訳だ」


ウイングはなるほどと思う。

つまり、前世で言うところのキツネ狩りの犬の役をやれという依頼なのだ。

魔王城に居た頃は、遊興で魔物を殺すという事はなく、魔物を倒すのは仕事という認識をしていた。

城の兵士も極北旅団の兵士たちも普段から魔物を倒して回っているので、遊びでまで魔物と対峙する必要性を感じていなかったのだ。

地下世界は狭く、魔物と生活圏が重なることが多いが、地上世界は広大で、当たり前に魔物と出会う訳ではないのだ。


「つまり、犬の役をやれと言うお話ですか?」


マルガレーテが問う。

ウイングは知らないことだが、この世界にもキツネ狩りはある。

樹海は特に魔物のホットスポットのような場所なので、この世界の動物は全て魔物なのではないかと思ってしまうが、そうではない。

魔物など滅多に見かけない、普通の自然というのもあるのだ。


「あとは食事会の配膳や馬の世話などだな……」


「あの、期間と報酬はどうなるんですか?」


アリアが恐る恐るという感じで質問する。


「期間は明日と明後日の二マワリ、報酬は全員で一万ジン、ただし、獲物の素材は全て領主様に帰属するものとする」


「ふーん、それはあたしたちだけで倒した獲物も取り上げられちまうってこと?」


「ああ、その分も含めての一万ジンだ。

魔物を追い込んで、雑用の手伝いをするだけでこれだけ払うんだ。

我欲を出されて、仕事を放り投げられてはかなわんからな……」


ジッと話を聞いていたマルガレーテが意を決したように、口を開く。


「バーリア殿、大変申し訳ないがこの依頼は受けられない……」


バーリアは動じることなくマルガレーテを見る。


「ほう……何故だ?」


「私たちは犬ではなく冒険者だ。

仲間にそんなマネはさせられない……」


マルガレーテは下を向いたまま答える。

だが、そこに口を挟んだのはムースだ。


「何言ってるんですか、マルガレーテ。

ほんの二マワリで一万ジンですよ!

取り置きの足甲にも充分に手が届きます。受けるべきですよ!」


「そうですよ!雑用とか私はむしろ得意分野です!

馬の世話も村にいた頃やってましたし、犬の鳴き真似だって上手いんですよ!

わんわんっ!」


アリアは勘違いをしている上に、鳴き真似は下手だった。


「しかし……」


「アオーンッ!」


ウイングも遠吠えをしてみせる。マルガレーテの言葉を遮ったのだ。

それから、バーリアに向き直ると真剣な表情になる。


「僕も犬役に異存はないです。

でも、どうして僕らへの指名依頼なんです?」


「それはもちろん、客人に見せる冒険者は見目麗しく、さらに実力があるならなお良いからだ」


「客人?つまり、子爵様だけじゃないですね?」


「ああ、明日は隣領のシミュレー伯爵も同道される」


「接待ですか。

しかも、シミュレー伯爵……もし、仲間に無体を働くようなマネをしたら、暴れるけどいいですか?」


またもバーリアは不機嫌そうにする。


「お前は貴族を馬鹿にしているのか?

子爵様はそのようなことをなさる方ではないし、それを許すような方でもない!」


「ふむふむ、つまり問題が起きたら暴れても不問にするという確約はできないと?」


「なんだと?」


「政治家の答弁みたいなあやふやじゃ困るのです。

バーリアさんがどれだけ信頼していようと、冒険者たるもの石橋を叩いて渡るだけの慎重さが求められるのです」


「配下の身でそんな確約ができる訳なかろうが!」


「おや?おかしいですね?

バーリアさんなら確約するかどうか、自分で判断つけられるはずなのです」


「な、何を言ってる……」


途端にバーリアの勢いが減じる。


「まさか、子爵様の配下の方が言葉遣いを間違えたなんて言い訳しませんよね?」


「あ、当たり前だ!だから、何を言ってるんだお前はっ!」


「『お前は貴族を馬鹿にしているのか』、これは貴族が言う言葉です。

もし、バーリアさんが貴族ではなく、あくまでも子爵様の配下だと言うなら『お前は貴族の方々を馬鹿にしているのか』が正解です。

言葉遣いを間違えていないということなので、バーリアさんは貴族です。

ここから分かるのは、バーリアさんは子爵様の係累に連なるお方か、伯爵様の係累に連なるお方か……まあ、どちらにせよ確約できるお立場におられるということなのです……」


「クックック……おい、ウイング、そのくらいにしてやれ。

あんまり子爵様のご子息をいぢめると、それこそ不敬罪になるぞ……!」


ミルキルが漏れ出る笑いを堪えきれずに言う。


「アンタ、ダンマク様だろ?」


「なっ!?何故?

知っていたのか?」


バーリア改めダンマクは驚愕に目を開く。

ミルキルはニヤニヤしたまま答える。


「いや、知らなかったよ。

でも、ウイングの推理で当たったみたいな顔してたし、子爵様の息子でお忍びでこういう悪戯を思いつくのは、近衛兵長をやってるダンマク様くらいだろうなって思ったのさ」


ダンマクは黙ってしまう。


「アンタは度々借金の申し込みに来るシミュレー伯爵がウザイと思ってるんだ。

しかし、地位は向こうが上だし、この町は雷牙槍地龍ヴァジュランダドレイクとゴブリン狩りでかなり潤ったから、子爵様としても借金を断りずらい。

そこで、女好きと名高いシミュレー伯爵にわざと女を近付けて、子爵様のご不興を買うように仕向けたいと思った。

そこで白羽の矢が立ったのがあたしたちってことだろ?

違う?」


「ず、随分と自信過剰なんだな……」


「まあ、美貌には自信があるからな」


と、ミルキルはシナを作って投げキッスを飛ばす。


「それに、ウチのアリアにシミュレー伯爵の五男がちょっかい出して、法王様お気に入りの『涼風亭』を出禁になってる。

どっちにしろ問題が起きるだろうって狙いじゃねーの?」


「あれ?僕、その話ミルキルにしたですっけ?」


「いんや、アリア本人から聞いたのさ。

その噂を売りまくったのはあたしだけどな!」


「売ったですか?」


「ああ、金じゃなくて情報のやり取りでな。

話題のひとつも持ってないと、事情通たちとやりあうのは難しいのさ。あ、もちろん、アリアの名前は伏せたけどな……」


ミルキルがウイングを見ると、ウイングはまるで職人を目にしたような輝いた瞳をしていた。


「裏の世界……カッコイイです……」


ミルキルがやっているのは、前世でいうファンタジー物語のシーフなどの役割なのだろう。

『ニック防具店』を中心に独自の情報網を作ろうとしていたウイングからすると、先を行くミルキルが輝いて見えるのだ。


「あ、あの、結局、どういうことですか?」


よく分かっていないアリアが頭を捻っていた。


「つまり、犬役をやらせるのもわざと私たちが蔑まれるようにということか……」


マルガレーテは理解したのか、呟いた。


「えーと、分かりやすくいうと、バーリアさんは子爵様のご子息でダンマク様なのです。

ダンマク様は父親に借金しにくるシミュレー伯爵を上手く追い返せないかと思って、僕たちを餌にしようと思ったのです」


「え、そんなのヒドイじゃないですか!」


「ま、待て!確かにお前たちにはツライ役回りをやらせることになるが、そのための一万ジンだ。

それに、当たり前だが、問題が起きる前にすぐ取り押さえるつもりだぞ!

実質、少し嫌な思いはするが、それだけで一万ジンが手に入る仕事だぞ?」


「いいんじゃないですか?

そういう事なら、協力してあげても……アリアが嫌な思いをさせられた相手なら、全力で潰しましょうよ!」


女の敵に復讐心を燃やすムースは俄然やる気になったようだ。


「あ、別に僕も反対はしてないですよ!

ただ、変なことされたら暴れてもいいって確約してくれたらの話ですけど?」


バカ貴族のやり方を見ているウイングもやる気を見せてから、ダンマクを見る。


「まあ、最初から全部話してくれてたなら、あたしも賛成だったんだけどね。

強いて言うなら、獲物の素材が全部持っていかれるのは納得いかないかな?」


ミルキルはそう言ってダンマクを見る。


「そうですね、姉さんたちがいいなら、私も問題ないです」


モーリーも納得する。


「あ、えと、あー……はい。

確かに依頼の仕方はだまし討ちみたいな形で、まだ少しわだかまりはありますけど、二マワリ〈日〉で一万ジンはこういう機会でもないと難しそうですし……」


アリアがチラチラとマルガレーテをのぞき見る。


マルガレーテはひとつ嘆息してから、ダンマクを見る。


「ダンマク殿、この状況でもまだ私たちに依頼をする気はあるか?

取り下げるなら今だぞ?」


「マルガレーテは甘いなあ、ダンマク様は今なら条件全部飲んで依頼するしかないじゃん。

依頼を取り下げたって、私たちは全部知っちゃってるんだよ?

ギルドに依頼に来たって記録は残るし、私たちがこのことを誰かに話しちゃう危険もある。そしたら……」


ミルキルがさらに言い募ろうとするのを途中で制して、マルガレーテが続ける。


「今、依頼を取り下げるなら、私が責任を持って皆がこのことを吹聴しないようにする。

いいか、ご領主様が決めたことが間違っていると思うなら反対するのはいい。

だが、策を弄して他人の意見を操ろうとしても、いいことはないぞ?

思いは変えられない。

それを変えられるのはご領主様自身だけだぞ?」


ダンマクはマルガレーテを見た。

それから、マルガレーテの瞳に宿る色にゆっくりと頷く。


「ああ、私は父にきっかけを与えたいだけだ。

シミュレー伯爵は地位に胡座をかいて、街の発展に尽力しようとはしない。

父が金を貸してやっても、遊興に使って消えるだけだ。

その状況は父も理解している。ただ、父が子爵になる時、伯爵の助力があった恩があるために、借金を断れずにいるだけなのだ。

今、私の言葉は父に届かない。

つまり、必要なのはきっかけなのだ。

私の戯れで貴君らにいらぬ不信感を与えてしまったことは詫びる。

この通りだ。

私が伯爵たちの横暴を止められなかった時は暴れてくれていい。

魔物の素材は折半にする。

この条件で改めて依頼したい。

受けて……くれるか?」


「分かった。『白夜の蒼炎』はダンマク殿の父上へのきっかけ作りの依頼を受ける」


マルガレーテは高らかに宣言した。


「まあ、正体を隠したのは変な疑いを持たれないようにするためだろうし、依頼内容を正しく伝えなかったのは素直に言ったら受けてくれないだろうって思ったからだろうから、戯れなんて言葉で隠さなくていいよ。

最初から素直に言われてたら、確かに断っただろうしね!」


「なるほど、そういうことだったんですね!」


ミルキルが全てをバラしたことで、ようやくアリアの顔にも納得が見える。

結果的に正体を隠したことも、依頼内容を誤魔化したことも裏目になってしまったダンマクからしてみれば、その辺りは自分の戯れが引き起こした不幸な事故ということにしておきたかったのだろうが、これでは貴族の矜恃も粉々である。


「お前はなかなかに毒気が強いな……」


ダンマクが引き攣った顔ながらも、少しだけ笑顔を滲ませて言う。

それにミルキルは、もう一度シナを作って。


「綺麗な薔薇には棘があるもんだろ……悲劇のヒロインみたいな顔してると、幸せは逃げるんだぜ!」


「ふっ……違いない……」


諦観なのか何なのか、その言葉を聞いたダンマクは憑き物が落ちたような顔で普通に笑うのだった。


おかげさまで、五万PV越えました!

いつも待っていて下さる皆様、ありがとうございます。


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