先生なのです
夜、宿での楽しみな食事を終え、今日こそひとり大浴場でゆっくりと羽を伸ばしたアリアは、ウイングの部屋を訪れる。
ノックして開かれた扉に立っていたのは、何故か黒いローブにいつのまに買ったのか、黒い眼鏡に黒い教鞭を握るウイングだった。
「ようこそ、アリア。なのです。
本日は魔法の基礎から始めるとしますかな……です」
「誰?」
とりあえずアリアは眉間に皺を寄せてまじまじとウイングを見つめて問う。
「わたくしめは、ウイングと申しますです。ウイング先生と呼ぶのが妥当でしょうな、です」
ウイングの理想の先生像、レンバート先生を必至に模倣しているのだった。
眼鏡と教鞭は、少しでも先生らしくしようという、ウイングのお手製だ。
アリアは非常に反応に困る。
「あの、ウイング?」
「ほう……そのように呼ぶというのは、わたくしでは教師として役不足ということですかなです……?」
胸を逸らして上から目線を作り、尊大で圧力過多な感じでアリアを威圧しているつもりのウイングだが、身長差がそれほどないため、アリアからは滑稽に見える。
なんだか、自分に魔法を教えるためにここまで役作りをしてくるウイングが、かわいらしく見えて仕方がない。
「いえ、そんなことないです。
今日からよろしくお願いします。ウイング先生……ぷっ……」
アリアはこのごっこ遊びにのってみることにした。
言葉の終わりに、つい笑いが漏れるのはご愛嬌というものだ。
「いいでしょう……入りなさいです……」
ウイングは部屋に備え付けの机にアリアを座らせると、その横に用意していた椅子に自分も座った。
「まず魔法とは何か分かりますかなです?」
「えっと……この世界にあるマナに魔法力を使って特定の呼び掛けをすることで得られる事象改変の力です」
「ふむ……」
ウイングは考える。微妙に自分の魔法と違う。
「まず、前提が僕の魔法と違うのです……じゃなくて、違うようですなです。
マナへの呼び掛けに魔法力は使わないです。魔法力、糧と呼ぶですが、あくまでも呼び掛けはイメージを伝えるものであって、人によって向き、不向きがあるのです。そして、糧はマナに与える報酬なのです」
「えっ!?マナに与える報酬?」
「えっと……アリアが言うマナ魔法、精霊魔法、神聖魔法は同じものだと考えて欲しいです。
何故なら、マナは糧を得て成長すると、精霊になるからなのです。そして、肉体に宿るマナこそが神聖魔法の正体なのです……」
「えっ!?えっ!?マナが成長する?肉体に宿るマナ?」
「そうなのです。そして、肉体に宿るマナを生命のマナと呼ぶようにマナは一種類じゃないのです。ちょっと見るです。サアラ、姿を現すです」
ウイングが説明するより、サアラを見せるのが早いと呼び出す。
この時、サアラには最初光の粒、マナの姿で出るように頼む。
アリアの目の前に赤い光の粒が現れる。
「これがマナと呼ばれるものの姿なのです」
アリアはその光の粒をじっと見入っている。
「綺麗です……」
「目に見えないこういう光の粒が地上……世界には溢れているのです」
「こんな綺麗な光、見たことないですけど?」
アリアが光の粒に触れようとするが、身体を通り抜けてしまって触れられない。
「マナを見たり触れたりできるのは、特殊な体質が必要なのです。残念ながらアリアにその体質は無いみたいなのです……」
ウイングはすっかり先生設定を忘れて、自分の言葉で説明していた。
「ウイングは見えるんですか?」
「見ようと思えば、見えるです。でも、普段は見ないようにしてるです。マナだらけで光の粒に押し潰されちゃうです。それから、マナに糧を与えると成長していくです」
サアラは、ウイングの言葉に合わせて、成長していく。
光の粒は大きくなっていき、星形の光になる。その星形の光は次第に人の形を模していく。
だが、人とは違う。不思議な形の何故か神々しさを感じる服を着た、狐人。ウイングの知識によれば巫女服姿の稲荷の使いという感じだ。
アリアは食い入るように見ている。
不思議な光景だが、何故か間違っているとは思えない。
完全に普段の形を取り戻したサアラは折り目正しく一礼すると挨拶する。
「我が主様により顕現いたしました。焔の精霊です。以後、よしなに……」
アリアはその神々しさに魅入られたように、口を動かす。
「喋った……焔の精霊……精霊魔法……。
サ・ア・……むぐっ!」
アリアにしてみれば驚くどころの話ではない。
精霊という存在を知ってはいても、見るのは初めてだし、ましてや精霊が喋るなど、こうして自分に挨拶してくるなど、想像の斜め上の話だ。
ウイングがこの精霊を何と言っていたか思い出し、その名前を呼ぼうとしたところで止められた。
「ダメです!それを言ったら、精霊は凄く怒るです!」
ウイングが手でアリアの口を塞いで、言わせない。
アリアはその剣幕に押されて、こくこくと理解を示すように肯いた。
「いやですわ、我が主様との絆はこの程度の器に真名を呼ばれたところで毛ほども揺らぎません。大丈夫で御座います」
サアラはウイングに気遣われたのがよほど嬉しかったのか、上機嫌で口元に笑みを見せている。
その割にはサアラは、アリアに名乗らなかったのです。
たぶん、真名で呼ばれてたらキレてたですね……。
「ですが、力の弱い精霊やプライドの高い精霊は真名を呼ばれるのを嫌がります。主ならば別ですが、うかつに真名を呼ばぬ方が良いでしょう……」
堂にいった上から目線で、サアラはアリアに忠告してやっていた。
「は、はい、すみません……」
ウイングの手を外してもらったアリアはそう答える。
だが、マナ?真名だろうか?魔法ギルドで教わったような気もするが、名前という意味だろうと当たりをつける。
「マナと精霊が同じものって分かって貰えたです?」
「な、なんとなく……でも、マナって性格とかあるんですか?」
「マナは基本的には明るくて、魂の器が好きですが、個々の性格みたいなのはないです。でも、精霊になるとそれぞれの個性みたいのが出てくるです」
「あの、あの、魂の器というのは?」
アリアはウイングの話に何とか着いていこうと必死だ。
「それなのですっ!魂を持つ者は、魂の器というモノが決まっているのです!それを調べるのです!」
そう、それが分からないことには最初の呪文すら唱えられないのだ。
ウイングは皿を一枚出すと水差しから水を注ぐ。
初めてレンバート先生に魔法を教わった時もこういう感じだったと懐かしく思いながら、呼び掛けを行う。
「マナよ、集いて器を示せ!
水鏡の法」
触れていないのに水面に波紋が浮かぶ。
それが何かの力に操られたように、ピタリと止まる。
「この水面に触れてみるのです」
アリアがウイングの言葉に、恐る恐る指先を出す。
触れた波紋が拡がるのに合わせて、あちらこちらから波紋が拡がり水面が跳ねる。
と、ある瞬間で時が止まるように水面が固まる。
アリアが浮かび上がる文字を、うわ言のように呟く。
「慈悲の宝石……」
「魂の器には上から順に魔法石、宝石、石、雫石、欠片と五つの大きさがあるのです。
アリアは慈悲の宝石だから、かなりたくさんの糧が使えるはずなのです」
「はあ……?」
ウイングが説明するが、アリアはいまいち要領を得ない。
ウイングはあえて自身の器である宝珠についての説明を省いていた。それを説明するには地下世界、魔界の九層について話さなければならなくなる。
魔王族でありながら、人間に化けているウイングとしては避けたい話題だ。
「この魂の器というのが凄く大切なモノだというのは、直感というか……それこそ魂が震えるような感じで理解できます……でも、実際にどうしたらいいのか……」
「それをこれから教えていくのです!
僕の使う魔法は、呼び掛けが全部で五つに分かれているのです。
まずはマナを集める呼び掛け。
これは様々な属性のマナを集めることで自分のイメージを通しやすくするものなのです。
次に効果を求める呼び掛け。
これで大体のイメージを伝えて、マナをより分けているのです。
それから、守護や加護の呼び掛け。
簡単に言うと、自分の後ろ盾を伝えることでマナに仕事をさせやすくなるのです。
そして、魂の器による呼び掛け。
これは守護や加護の呼び掛けに似ているですけど、糧の保証みたいなものです。
最後に呪文名を言うです。
イメージの最終決定を伝えて、事象改変をさせる合図になるのです……」
「なんだか、難しそうですね……」
「そんなことないです。……自分がギルドでマナが冒険者だと思えばどうです?」
「えっと……
冒険者の皆さん集まってくださーい!仕事、あげますよー!(マナを集める)
魔物の素材を持ってくる仕事でーす!(マナのより分け)
怪我した人には神殿で安く治療が受けられますから、はりきっていきましょー!(守護・加護)
素材はギルドで買取ますからねー!(魂の器)
魔物退治にれっつ・ごー!(最終決定)
……こうですか?」
「まさにそういうことなのです!」
さすがに普段からギルドで世話になっているアリアなので、この置き換えはわかり易かったようだ。
「おお!なんだか分かった気がします!」
アリアが興奮したように頬を上気させている。
ウイングは実際の呪文行使へと移ることにした。
「じゃあ、冒険者をマナ、神殿を月の宝珠の加護、ギルドを慈悲の宝石に言いかえるです。
イメージはこの水差しに水を入れるように考えてみるです」
「はい!
……えーと、マナの皆さん、集まってくださーい!
水差しに水を足すお仕事でーす!
……なんでしたっけ?」
「月の宝珠の加護です」
これはつまり、ウイングがアリアに加護を与えるという宣言でもある。
だが、それを説明するつもりはない。
それは、マナとウイングが知っていればいい話だ。
「つ、月の宝珠の加護ですよー!
慈悲の宝石……えっと……」
「願うとか、命じるとか付けるです」
「慈悲の宝石が願います!」
「自分のイメージを端的に言うです」
「水よ出ろ!」
アリアの拙い呪文が終わると同時に、アリアの中から魔法力、糧が流れ出すのをアリアは理解する。
今までマナ魔法を使う時の魔法力が消えるような感覚とは違い、徐々に流れ出すような感覚があるのだ。
その感覚に驚いたアリアは慌てて、止まれ、止まれと念じる。
ぽちゃん!
アリアの指先から一滴だけ水が落ちる。
「で、出ました!」
「糧を流す量で魔法の規模は変わるです……今は糧を止めたから一滴の水で終わったですが、慣れてくれば感覚的にどの程度の糧でとの程度のことができるのか分かってくると思うです……」
言いながら、ウイングは水鏡の法で皿に入れた水を窓から外に捨てる。
それから、空になった皿の上に、半分程になった水差しを置く。
そして、水差しを指さして言う。
「これが魂の器なのです。そして、皿が肉体です……」
ウイングは水の精霊アンディに思念で命じて、水差しに入った水を増やしていく。それは湧き出すというのが正しい。
やがてそれは溢れて、皿に流れ出す。
その溢れた水を示しながら、更に続ける。
「これが、普段、僕たちが魔法力、糧と呼ぶものです……まあ、例えですけど……」
それから、水差しに溢れる水を一度止め、水差しをどかす。
残った皿の中の水を示す。
「普段使える糧はこれなのです」
「このお皿から零れた水はどうなるんですか?」
「零れないです。魂が糧を出すのを止めるです。でも、減った分は……また溢れ出すのです」
また、皿から水を捨てて、水差しを置くと水差しから水が
溢れ出す。だが、皿が水で満たされると、ピタリと湧き出る水が止まる。
「こっちの魔法力は使えないんですか?」
アリアが指さしたのは、水差しの水だった。
ウイングは昨日の風呂での出来事を思い出して、気恥ずかしさを思い出しながらも、伝えなければならないと意を決する。
「使えるですよ。でも、水差しを削らないといけないのです。
昨日、アリアの魂の器は少しだけ水差しが削れたのです……」
「えっ!?」
「あ、えと、給水の魔導器が暴走した時、魔導器がアリアの糧を吸い込んだのです。途中で止めたですけど、少しだけ……少しだけ削れてしまったのです……ごめん、なのです……」
アリアもその時のことを思い出したのか、顔を真っ赤に染める。
「あ、で、でも、ウイングは助けてくれた訳ですし……その魂の器のこともその時は分からなかったですし……その……」
アリアがしどろもどろにウイングをフォローしようとしていると、青い光が生まれて、それは形を成していく。
裸ワイシャツに仮面をつけた水の精霊だった。
「あ、な、なんで出てくるですか!」
「主様とぉ、主様がぁ、いらっしゃるのでぇ……真名をいただけないかとぉ……」
「わぁ……!ウイングの水の精霊でしょうか?なんだかセクシーな方ですね!」
アリアは出自を知らない上にサアラとのことがあったため、敬意を払いつつも好意的な印象だったようだ。
普通、精霊魔法では契約する精霊は一体なのだが、ウイングは規格外という認識のアリアはさほど驚かなった。
だが、ウイングはこの、まだ名前のない水の精霊がウイングだけでなくアリアのことも主様と呼んだことに驚いた。
「お前、アリアも主だと認識してるですか?」
「はい、お二方に多大なる恩恵をいただきましたからぁ……」
何故か上目遣いで恥ずかしそうに応じる水の精霊。
「ウイング様の水の精霊は我だけで充分だと言ってるだろうが!」
現れたのは水の精霊アンディだった。
「えっ!?わっ!凛々しい方ですね」
アンディはアリアをチラと見て、ウイングに片膝立ちで頭を垂れる。
「ウイング様にお願いしたき議があります!」
ウイングも分かっている。だが、その為にはアリアの許可が必要だ。
ウイングは精霊たちを手で制してから、アリアに向き直る。
「あの、アリアに聞いて欲しいことがあるです……」
その改まった言い方に、アリアも少し身体を固くして応える。
「な、なんでしょう……?」
「実は……こっちの精霊なんですが……昨日の給水魔導器の中にいたマナが、アリアと僕の糧を得て精霊化したものなのです……」
「えっ!?」
「アリアの魂の器を削るところまで糧を吸い込んだのは、魔導器の暴走であって、この精霊のせいじゃないのです……でも、その糧を得たのはこの精霊で……気持ちとしては複雑だとは思うですけど……この精霊をアリアが従えるつもりはあるですか……?」
「えっ!?そ、それって精霊と契約する精霊魔法ですよね?精霊魔法はその精霊に則した魔法しか使えなくなる代わりに強力な魔法が使えるようになるっていう……」
「えっ?精霊魔法ってそういう扱いになってるですか?」
「あれ?また何か違うんでしょうか?」
すでに色々とぶっ飛んだ話をされすぎて、アリアはウイングの言葉を全面的に信用しなければならなかった。
それゆえ、真理に触れる素地が出来上がっているとも言える。
そこで話に割り込んできたのはサアラだった。
「僭越ながら、自然発生的に生まれた精霊は、ひとつの器と契約を結ぶと、他のマナを排除しようとするモノが多う御座います。
それゆえに、契約者が他のマナに糧を渡そうとすると、それを妨害するのではないかと愚考いたします……。
ですから、この水の精霊を慈悲の宝石に遣わすことに何の問題もないかと存じます……。
契約ならば対等か、精霊が上になることも御座いますが、この場合は主従のけじめ、まして真名を与えたとなれば親と子の如き関係になりますゆえ……」
ウイングはサアラの言葉に頷くと、アリアに笑みを見せる。
アリアはサアラの言葉が難しかったのか、顔に疑問符を浮かべていた。
「たぶん、精霊魔法よりも強力な結び付きで、他の魔法の邪魔にもならないみたいです」
「え?そんな都合の良い精霊魔法なんてあるんですか?」
「あるです。この精霊はアリアと僕の子供みたいなものなのです……」
「こ、こここ、子供!?そんな、まだ何にもしてないのに……ま、ままま、まさか!?いや、そんなことって……まだ十七なのに……でも、成人はしてる訳だし……」
ウイングの下手な説明は、思いきりアリアの誤解を生んだようだ。
「あ、えと、な、何か変な言い方になったです。あの……そだ……二人の家来みたいな立ち位置にいるのです!」
「え?……あ、でも子供……や、でも、子供で!そ、そっちの方が分かり易いですし……」
急に残念そうな表情をしたアリアだが、何故か立ち直ったかと思うと、子供説を推してくる。
「あ?え?そ、そうです?
ま、まあ、アリアがいいなら、そうしとくです……」
「はい!えへへ……子供かぁ……」
アリアは急に母性に目覚めたようで、水の精霊を朗らかに見つめている。
「それで、この水の精霊の名前をアリアに決めて欲しいのです」
「えっ?お父さんは考えてくれないんですか?」
「おと……あ、いや、僕が決めたら、僕の精霊になっちゃうです」
そこでようやく我に返るアリアだった。
これは、アリアが精霊魔法を手に入れる気はないかという話だったのだ。
今後のための真剣な話で、親権の話ではない。いや、ある意味、親権の話だが。
「そ、そうなんですね……名前……名前……」
「あ、僕は聞かない方がいいです。真名というのは、相手の全てを表すモノで、真名を知るというのは精霊の支配権を持っているようなものなのです。
本来は魂の器の名前にも、真名と似たような効果があるので、みだりに教えていいものではないのです。
アリアに魔法を教える必要上、僕は知ってしまったですけど、他人に言うことはないと約束するですし、僕もそれを言うことはないのです。
そこはアリアも気を付けて欲しいのです……」
「ああ、だから……」
焔の精霊の名前を口にしようとした時、ウイングに止められたし、自分の魂の器の名前を知った時に、魂が震えるような感覚があったのか、とアリアは納得する。
ウイングのことは信用している。今の言葉にも嘘はないだろうと考えている。
でも、だからこそ、ウイングはこの水の精霊の名前を知るべきだとアリアは思うのだ。
何しろ、ふたりの子供なんだから、と。
「じゃあ、タマにします!いい、貴方の名前は今日からタマですよ〜」
不意打ちでアリアは名前を決めた。言った。
たまごのタマ。精霊が卵生かどうかは知らないが、元は光の玉だったのだから、いいだろうと思ったのだ。
それに響きも可愛らしい。
「えっ!?」
「はい、主様ぁ……ありがとうございますぅ……」
ウイングは驚き、タマは身をくねらせて喜んだ。
タマの甘ったるい話し方も聞きようによっては舌足らずな子供のものにも聞こえる。
「あの、だから、聞いてたです……?」
「もちろんです。でも、ふたりの子供なら、ふたりが知っててあげなきゃ、タマが可哀想じゃないですか。
タマもその方がいいよね?」
「はい、幸せですぅ……」
「はぁ……もういいです……と、とにかく、これでアリアは水の魔法に関してはかなり自由度の高い使い方ができると、思うです。
それで、他の魔法に関しては、さっき教えた魔法の詠唱を短くできるように練習していくです。特に魂の器の名前無しで魔法が使えるようになるまでは、人前で魔法を使うのは禁止なのです!」
「はーい!ウイング先生!」
すっかり上機嫌になったアリアは冗談めかしてそんなことを言う。
対してウイングはというと。
「あ、すっかり設定忘れてたです……」
ウイングは今更なことを言った。
これより二十マワリ(日)の間、二人は依頼も受けずに朝は宿の中庭で身体の動かし方を、昼はギルドの座学や世間知らずなウイングの社会科見学と称してあちこちに観光に、夜は魔法の勉強を、とひたすら準備に費す日々を送るのだった。
そして、二十マワリ(日)後、パーティーとしての初めての依頼を受けるべく、ギルドの汚い扉を潜るのだった。




