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輪廻転SHOW!魔王の息子  作者: 月のそうま
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秘めし力なのです

リオラディッタと勇者ミズキ、二人の視線が絡み合う。

期せずして同じ文言を反対の意味で発した二人。

お互いに反発しあうように相手を見た。


リオラディッタは親愛の剣を構え、弟の命を断つことになろうとも、想いだけは不変だと言い聞かせる慈句を。

勇者ミズキは断罪の剣を構え、魔王は魔王であるだけで悪であると、それを斬り裂くこれが破滅だと、魔王への警句を。


そして、それが戦闘開始の合図となった。


六名の『皇龍騎士団員』が、儀礼用の長柄武器を一斉に勇者ミズキへと投擲しようとする。

ミルキルの矢が騎士団員の一人を射抜くことで、投擲される長柄武器は五本になる。

内、二本は黒銀騎士レオンの振るう剣に叩き折られる。

残り三本は勇者ミズキの振るう風の精霊剣が纏う気流に巻き込まれて、ガラガラと落ちた。


リオラディッタは玉座のある壇上から、距離を詰め、ウイングを串刺しにせんと、最初から必殺の連撃を繰り出す。

だが、そこに割り入ったのはアリアだ。


「やらせません!きゃあっ!」


一撃を小盾で、一撃をメイスで捌くものの、リオラディッタの連撃はそれでは終わらない。

肩の鎧が弾け、腹当てごと穴が開き、態勢を崩したために、ギリギリで心臓は守れた。


「アリア!」


ウイングがアリアを守るように前に出た瞬間、リオラディッタは身を引いて、後ろに跳ねた。

そのウイングの背中にアリアが苦悶を堪えて語る。


「ウイング……お姉さんと戦うなんて、悲しすぎます……私が代わりに……」


ウイングはリオラディッタと向かい合ったまま、背中越しに叫ぶ。


「チヤリス!アリアを頼むです!」


「は、はい!」


聖女チヤリスが回復の魔導具を手にアリアの元へと走る。


「ダイジョーブっ!……まだ、やれます!」


「アリア。嬉しいですけど、やっぱり違うですよ!

姉様と僕は、どっちが勝ってもいいんです……。

どっちが勝っても、父と母だけは守れるです。

だから、遠慮なくやれる……姉様は強い。だから、僕が適任です。僕なら殺さずに止められるです!」


自分に言い聞かせるような言葉。

ウイングに躊躇がない訳がない。

それでも、ソレを選ぶのは自分でありたい。自分でなければならないという想いが、リオラディッタへと剣を向けさせた。


「……もう、いいかしら?」


リオラディッタは冷たい瞳でウイングを見据える。

ウイングはこういう時に、待っていてくれる姉に笑いが隠せない。

優しく強い姉のまま、何も変わっていないのだと安心する。


聖女チヤリスはアリアを引きずって部屋の隅に運ぶ。

チヤリスとアリアは「やれる!」「ダメです!」と口論しながらも、アリアのダメージは無視できるものではなく、結果として非力なチヤリスに引き摺られてしまう。


ウイングが改めて、二剣を構えて飛び込もうとした頃。


アキラは大きく跳んで、近衛騎士の一人を斬った。

残る近衛騎士五名は、それぞれに得物を抜いて勇者ミズキ、黒銀騎士レオンと乱戦になっていた。

ミルキルは走り回って、距離を取りながら援護に徹する。


ミルキルの援護があることで、勇者ミズキはともかく、黒銀騎士レオンも魔性族の近衛騎士と互角以上に戦えている。


「ウイング特製『究極矢』だ!食らいな!」


ミルキルは残り少ない矢を非常に上手く使う。

ウイングの『究極矢』は残り八本。

通常の矢は十二本しか残っていない。それが尽きれば後は蹴術のみになってしまう。

だから、最初から出し惜しみはしない。

上手く相手の死角に入って、通常の矢で黒銀騎士レオンの隙を補うと、大胆に近付いて蹴術で撹乱する。

相手を惹きつけたら、勇者ミズキの方へ寄ってなすりつける。

勇者ミズキは文句を言うが、それが有効な戦術だと理解していて、駄目とは言わない。

近衛騎士にしてみれば、技量に劣る黒銀騎士レオンを先に沈めてから、数で勇者ミズキを攻めたい。

だが、半端な人数では勇者ミズキの攻めを凌ぐだけで精一杯だ。

二人で抑えていたのが、三人になってもあまり変わらない。

その間に、するりとミルキルは距離を取って、一人を狩ることにする。

やはり、防戦一方になる黒銀騎士レオンに向かっている一人だ。

『究極矢』が、ぎゅわぁああんっ!と空気をかき混ぜる異音を発して、近衛騎士の右太股の後ろに刺さる。と、近衛騎士の足が爆散した。

そうなると、黒銀騎士レオンは近衛騎士と一対一になる。

黒銀騎士レオンの剣は決して侮っていいものではない。

それはこの九層に到れるだけの技量が物語っている。

勇者ミズキに手間取る近衛騎士の一人がなんとか戦列を離れ、黒銀騎士レオンへと向かう。


足が爆散した魔性族の近衛騎士は、必死に糧を送って『再生』の魔王の資質を発動させる。

魔鬼族の『回復』などと違い、『再生』は千切れた四肢すら生み出す。

しかし、高いマナとの親和性を持たない近衛騎士程度では、満足に『再生』を使えるのは一回がぎりぎりである。


こうなると、近衛騎士たちはミルキルを意識せざるを得ない。

動きが消極的になり、勇者ミズキが動きやすくなる。


「おいおい、守ってばかりじゃ、こいつの餌食だぜ!

蠢く地脈爪シャープネスクロウ!」


近衛騎士の背後から、勇者ミズキの糧を得て、地の精霊が爪を伸ばす。


「なっ……精霊が二体だとっ!」


離れた場所から魔法を操るなど、精霊の仕業しかあり得ない。

近衛騎士の驚きに、勇者ミズキは鼻を膨らませて満足そうな笑みを浮かべた。


他方、アキラは近衛騎士の一人を斬り捨ててから、ひと息に魔王の玉座を狙う。


「キミに余裕なんかないって、分からないかな?」


アキラは魔王へ向けた掌から巨大な火球を飛ばす。


火球は玉座を中心に爆炎を噴き上げる。


「あれ?避けなかった?」


あまりの呆気なさに、アキラが逆に驚いてしまう。

だが、そうではなかった。


「……ふむ、宝珠オーブの力とはこういうものか。

悪くない……」


爆炎が晴れた先には、変わらず玉座に座す魔王テセラスタが居た。


「マナが見える……こいつらが全て俺の意のままか……一際デカいのは、それはお前の精霊か?ブラーガスが言うには、精霊は作れるという話だったか……」


魔王テセラスタがアキラに問いかける。


「ああ……全能感に浸ってる訳だ、キミは……。

魔法が効かないアピール?

本当に効かないのかな?歴代の魔王って、それでも倒されて来たんだよね?なら、無駄でもないのかな?」


感触を確かめるように両者は相手を気にしていない。

いや、気にしながらも力量を測り、次の手を練っている。


ふいにアキラが動く。

ウイングの見様見真似で、身体に糧を送る感覚で自身を操作する。

それはウイングの邪眼とは違うが、魔王の資質『膂力』を全身に巡らせた状態。

言わば、天使の資質と言うべきものだった。


「ステータスアップ、とでも言うのかな?」


瞬足の動きで、魔王テセラスタの眼前に立つと剣を振るう。

魔王テセラスタは杖代わりにしていた魔導機槍でそれを受けた。


「ふん、剣技という程でもないな……身体能力任せでは、剣筋が見え見えだ」


「うん。受けたね……つまり、斬られたくはない訳だ……」


アキラは距離を開けて、また次の思考へと移る。


「少々、小賢しいな……」


魔王テセラスタが立ち上がる。


「ふふ……やる気になった?」


「ああ、少しだけな。勇者が相手ならば不足はなかろう……」


その言葉にアキラは気まずそうな顔をする。


「あ〜、ごめん。ボクは代用品。本命はあっちだよ……」


「代……用……。な、なるほどな……まあ、いい。

少し試させてもらおう……」


それまで作ってきた魔王テセラスタの威厳が、音を立てて崩れていく瞬間だった。

しかし、完全に瓦解するではなく、どうにか立て直すと、魔王テセラスタは器用に槍を振り回し始める。

チラリ、魔王テセラスタは勇者ミズキに視線を送ると、改めてアキラへと向き直る。

風と地、ふたつの精霊が従っているものの、どうも目の前の少女の方が地力は上という印象を受ける。

あちらの少年の方が力を秘めているということだろうか?

どちらにせよ、この無限に湧き出るような宝珠の力があれば関係ないと、魔王テセラスタは魔導機槍を起動させる。


「炎陣、始動……」


槍の穂先のすぐ下に付けられた傘の骨状の八本の筒。そこから炎が豪音と共に吹き出した。

魔導機は、魔導具をふたつ以上取り付けた、言わば魔導兵器の前提となる技術である。

ミルキルが使っている『究極矢』も魔導機矢というのが正しい。

この魔導機というものは、取り付けた魔導具の数によって扱いが加速度的に難しくなる。

特に魔王テセラスタのように状況に合わせてそれぞれのパワーバランスを組み換えるとなると、糧を細かく調整できる使い手側の技量が求められる。

だが、魔王テセラスタはそれを手足の如く軽々と扱う。

この魔導機槍は、かなりのじゃじゃ馬で、魔王テセラスタならばこそという品であった。


「ああ……魔導具による攻撃はまだ試してなかったか……魔法がダメだと望み薄だけど、一応、試しておかないとね!」


アキラも自分の魔導剣を使うことにする。


氷飛刃ひょうひじん!」


アキラの放つ魔導剣からの氷の刃。

それを魔王テセラスタは槍を背中に回して、片手の掌をそれに向ける。

無詠唱で、掌から炎が迸ると、氷飛刃を相殺した。


「その程度か……?」


期待外れだという顔で魔王テセラスタが構えを解く。


「あれ?失望させちゃったかな?」


アキラは魔王テセラスタが氷飛刃を魔法で防いだことで、魔法も使える、と確信めいたものを感じて内心喜んでいたが、それを面に出さないように、軽口を叩く。


「ああ……この程度なら戦いにはならなそうだ……」


そう言った魔王テセラスタは、溢れる糧を目の前の火のマナに注いで作った精霊から「もっと、もっと!」という思念を感じて、苦笑する。

精霊視覚を使うブラーガスから、膨大な糧を与えればマナが精霊化する可能性を聞いていたが、それがこうも簡単に作れるとは思っていなかったのだ。

それに、膨大な糧を使ったはずなのに、宝珠を通してまだまだ糧が溢れてくる感覚がある。

この精霊による魔法の力押しだけで勝てそうだと考えていた。


「そう?なら、もう少し頑張ってみようか!」


アキラは挑発するように笑ってから、魔王に向けて駆け出した。


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