ヤンデレ(小書き)
(主人公=藤原圭太、妹=藤原香織、幼馴染み=北条香奈)
午後六時半俺は家に帰ってきた。
俺は妹との二人だけの生活だ。
いつも幼馴染みが両親がいない俺たち兄弟に、この時間帯は家で夕飯を作ってくれる。
余談だが、俺と妹は料理の才能が無い。
いつもならちょっとブラコンな妹が、帰ってきたとたんに、
「お帰り、お兄ちゃん」
と云ってくれるが今日は違った。
不自然なことに妹の声が聞こえない、リビングで寝ているんだろう。部屋の電気も付いていないし。
流石に寝ているのを起こすのは気が引けるので、俺は足音を立てずに廊下を歩いた。
なんのためらいもなくリビングへと続くドアを開けた。
次の瞬間俺は呼吸をするのを忘れるほどの錯覚に陥った。
俺が見たのは、一部黒か赤か形容し難い血に塗られた、妹だった。
多分腹にナイフか何かで刺されたのだろう。だが今そんなことは頭で考えられなかった。何故なら、血に塗られた妹の横で血に塗られた包丁を握っている幼馴染みがそこにいた。「お前、な...に...を...」
嫌悪感が腹の底から汲み上げてきた。
幼馴染みがこっちを振り返る。
時々見せる満点の笑顔で言う。
「お帰りなさい!けいくん」
「意外と早いんだね!」
俺は言う。
「香奈...何を...」
「何って邪魔だったから消したの?」
本能がこいつはヤバイと云ってくる。
なんとか動かない足にムチを打って足を動かす。
「何で逃げようとするの?」
香奈の声など聞こえずこの場から撤退しようとした。
だが、恐怖感と嫌悪感で足がうまく動かない、やがて胸から前面に強い衝撃をくらう。
「あ そっか悪いのはけいくんじゃなくてその手足だよね。」
「なら その手足を切り取れば問題無いよね」そう香奈は云い俺に近ずいてくる。
「や...めろ...」
俺は今にも消えそうな声で抵抗する。
実際はそんなことは意味を持たない。
香奈はその距離を確実に詰めてくる。
「あ...でも手足を切ったら出血死しちゃうよね。なら手足を縛った方が良いよね。」
「でも実際あんまり縛る道具って私持ってないんだよね。」
「俺は逃げもしないから安心してくれ」
嘘だ。
実際には俺は香奈から逃げるための道を探していた。
「え...そうなの?じゃあ縛らなくて良いんだね♪」
「あ...それとこの部屋からは逃がさないから。」
目が本気だ...
俺は今すぐ逃げることはほぼ諦めた。
「香奈...何で香織を殺したんだ!」
せめてもの抵抗で香奈に怒鳴った。
これで香奈が正気か気が動転すれば逃げる手口ができるはずだ。
だが実際は
「?何で怒鳴るの?私はただけいくんを助けただけだよ?」
「何が助けるだよ!お前がやっているのはただの人殺しだろうが!」
「何でそんなひどいこと言うの?」
香奈はまるで俺のいっていることが理解不能といわんばかりだった。
「私にはけいくんだけがいれば良いんだよ?」
「それなのに香織ちゃんは私がいるとお兄ちゃんが変になるとかいってきてね。」
「だから殺したの...それに前から邪魔だったんだもん」
「いつもけいくんの横にいて...まるでけいくんは私のもの~っていってるようなんだもん」
もう逃げるのは諦めた方が良いだろう。
「私にはけいくんだけがいればいいの、他の女どもはけいくんに絶対に近づけない」
「なぁもうこんなことやめよう」
「こんなこと間違ってるよ!」
だんだんおかしくなる香奈に向けていった。
「うふふ。嬉しいな~けいくんがそんな風に心配してくれるなんて。」
「嬉しいな~けいくんがここにすんでくれるなんて♪」
は?俺は理解出来なかった。
「けいくんはもう絶対に離さない♪今日から私が毎日お世話してあげるから。」「けいくんは何も心配しなくて良いんだよ。」
............それから俺は香奈の部屋という檻で半年も経たないうちに死んだ............