第十七話Σ(*'ω'*c)
結論も出し、すっきりした僕は、皆と一緒にテーブルを囲んだ。
テーブルには先程頼んだ寿司が並んでいる。
海「無理しなくて良かったのによぉ…」
普段からは想像出来ないような豪勢な料理を見て、海さんは僕がどんな思いで寿司を買ったのかを理解したらしい。
篠崎「わぁ、美味しそうなお寿司ですね。」
普段から食べている皆にとっては、別に普通の光景。
篠崎さんも僕がいつもはこんな豪勢な物を食べないと知っている。
だからこそ、敢えて喜んだフリをしているのだろう。
美藍「……。」
芙乃「………!」
美藍さんと芙乃さんは何故か微妙な顔をしていた。
でもどうして…?
寿司を見るなり顔色が悪くなる芙乃さん。
…!
魚嫌いだったのか!
生魚だからありうる!あぁ、僕はなんてことを…
僕「芙乃さん…だ、大丈夫?寿司が嫌なら他の物頼むけど…。」
芙乃「別にいいわ、気にしなくて。さっさと皆で食べて頂戴。」
……。
僕「…じゃあ僕が。」
芙乃「何?」
僕「何か作ってあげるよ。お詫びといってはなんだけど。」
芙乃「…じゃあ、サラダパン。サラダパンを頂戴。」
僕「サラダ…パン?」
どっかで聞いたことあるような…
よし、ここはサラダパンを作るとしよう。サラダパンならそんなに技術要らないだろうし。
良かった、得体の知れない物とか、高価な物じゃなくて。
早速僕は台所に行き、冷蔵庫を開いた。
そこから野菜を取り出し、千切り等していく。
ミシャル「へぇ~、鈴村くんって料理得意なの?」
僕「いつもは自分で料理してるからね。」
海「いい特技じゃねぇか。」
鈴鳴「凄ぃです…」
え、えへへ…
誉められちゃった…
誉められて鼻を長くしていた僕は、包丁で野菜を切っていることをすっかり忘れていた。
ザクッ!
痛っ!!
安定のドジっぷりだ。
指を包丁で怪我させてしまうなんて。
篠崎「だ、大丈夫ですか!」
篠崎さんが駆けつけ、すぐさま絆創膏を貼る。
僕「あ、ありがとう…」
篠崎「もう、心配して駆けつけちゃったじゃないですか!気をつけて下さいよ。私達と違って治りにくいんですから。」
心配、という言葉を聞いてドキッとしたが、まぁ…そのままの意味だろう。
期待はしない。
美藍「…私が代わりに。」
そう言って野菜を切り出した美藍さん。
この前、ご飯を作って貰った時は、シェフが作るような凄い料理作ってたし…
料理、慣れてるのかな。
それにしても油断した。
いつも料理してるからって手元を見てなかった。
さっき切った左手の中指、第二関節の傷が痛い。
僕「ごめんね…僕が作るっていったのに。」
芙乃「いいわよ。別に。怪我されてこっちが冷や冷やしたわ。全く、無理しなくていいのに…馬鹿ね。」
えっ…デレた!?
き、貴重すぎる!
芙乃「何よ、そんな顔して。」
そんな顔ってどんな顔ですか!?
美藍「…出来ましたよ。」
サラダパンが完成したみたいだ。
何か僕が思ってたより豪華になってる!
芙乃「ありがとう、二人とも。」
ちゃんと僕も作った事になってるんだ…何か嬉しい。
僕「芙乃さんの為のサラダパンも出来たことだし…僕達もお寿司食べようか!」
海「やっとか!」
クピド「魚かぁ~久しぶりに食べるなぁ。」
僕「じゃあ…いただきます!」
僕の声で、皆がお寿司を食べ出す。
海さんは、烏賊…
クピドくんは…玉子?
篠崎さんは無難に鮪で、ミシャルさんは帆立、澪さんが海老。
梓さんは…あれ、食べないの?霊奈ちゃんとクリアくんは食べない…いや、食べられないの方が正しいかな?
霊奈「本当は皆と一緒にわいわい食べたいんだけどなぁ…触れないし…」
霊奈ちゃんはお寿司に手を伸ばす。しかし手はお寿司をすり抜けた。
霊奈「はぁあ~。誰かに取り憑いて食べようかなぁ…」
ちらり、とこっちを見る霊奈ちゃん。…まさか僕に取り憑く気!?
僕「僕は駄目だよっ!?」
霊奈「…ちぇっ。一番取り憑きやすそうなのにぃ…」
クリア「…我慢するしかないっしょ。透けちゃうんだから。…もぐもぐ。」
そういうクリア君が食べているのはサーモン。…って食べた物がくっきり見える!さすが透明人間!
うわぁ~…ゆっくりだけど確実に流れてるよ…
クリア「ごくごく…」
あ、緑茶!
おぅおぅ、凄い速さで流れてますなぁ…
流れていく食べ物や飲み物を見つめていた僕に、クリア君が気付いた。
クリア「じろじろ見るなよ~。」
僕「ごっ、ごめんっ!不思議だからつい…」
見入ってしまう。まだ子供みたいな好奇心が残ってるのかな?
クリア「気分悪くならないの?」
僕「全然。」
クリア「…変なの。」
僕「ガーン( ̄○ ̄;)」
な、何か悲しい。
美藍「それより鈴村さん。食べないんですか?無くなりますよ?」
お吸い物を用意しつつ美藍さんが言う。
この時には既に、さっきまであった筈のお寿司は半分姿を消していた。
…あ、呆気ない…。まぁ、人数が多いから仕方ないけどね。
うん、分かってるんだけどね…
クピド「そういやさぁ。鈴村ってバイトしてる?」
僕「え?してないよ?」
クピド「じゃあなんでお寿司頼めるの?」
僕「あぁ、お金の出所の事が知りたいの?」
クピド「そう。一般の学生にしては豪華だなぁって。」
僕「それは…」
お小遣いとかお年玉とかを貯めた、クピドに向かって小さな声で言う。
別に隠す程の事でもないけど…何か、ねぇ…。
クピド「ふぅん…成程ねぇ…。」
篠崎「バイトする気はあるんですか?」
僕「ま、まぁ…」
ここは空気を乱さないように…。
鈴鳴「篠崎さんはぃぃバィトを紹介してくれますょ。」
美藍「私もこの前助けられました。」
美藍さんがバイト…?何か想像出来ないなぁ。
海「俺達は…財産結構あるしな。恵んでやってもいいぜ。但し条件はあるけどな。」
梓「海さん。私達の所にこれ以上男を呼ぶのは止めて下さい。」
ミシャル「買い物一緒に行くっていうバイト募集するけど、どう?」
クピド「モテモテだねぇ、鈴村くん。」
そこ!ニヤニヤしない!
…どうせなら、鈴鳴ちゃんの彼氏になるっていうバイトしたいよ…
ミシャル「ねぇ、買い物に付き合うっていうバイト、やるのぉ?やらないのぉ?」
僕「いや、買い物くらいならバイトじゃなくても付き合うよ。」
ミシャル「本当ぉ?やったぁ!じゃあ、約束ねっ♪」
僕「うん。」
海「って言ってる間にお寿司がラス1だぜ。」
篠崎「じゃあ、ここは鈴村さんが食べるべきです。」
僕「でも…」
鈴鳴「そぅですょ。ここはこれを頼んだ鈴村さんが食べるべきです。」
美藍「私も同意見です。」
澪「多数派意見に賛成です。」
クピド「遠慮はいらないでしょ。頼んだのは鈴村くんなんだから。」
僕「じゃあ…食べちゃうよ?」
ミシャル「一口で食べちゃって♪それともミシャルがあーんしてあげようか?」
僕「じっ、自分で食べるよ。んじゃあ…パクッ!」
う…うんまい!
篠崎「御馳走様でした。」
美藍「美味しかったです。」
海「上手かったぜ!」
芙乃「サラダパン美味しかったわ。二人とも、ありがとう。御馳走様。」
僕「お粗末様でした。」
海「ところで…俺達、どこで寝ればいいんだ?」
クピド「結構人数いるしねぇ~。」
僕「僕の部屋にあるベッドと、布団に皆は寝て。」
篠崎「鈴村さんはどうするんです?」
僕「僕はそこらへんに寝るから平気。」
とは言ったものの…。
僕の部屋にベッドはあるし、客人用の布団もあるけど…まだ足りないよなぁ…
お母さんの部屋も使っていいかな。寝るのは女の子だし、いいよね。
僕の部屋は…まぁ、頑張れば二人いけるけど…流石にダメかな。
海「俺は別に何処でもいいからな。いつもは野宿とかしてるし。」
の、野宿!?
梓「私は帰らさせて頂きます。」
クピド「あー、うん。男嫌いなのにごめんね。その代わりあっちは任せといて。」
梓「あ…はい。」
!?
梓さんが…照れてる!
うわぁ…っ、普段冷たい人が照れてるとなんか可愛いなぁ。
梓「…こほん。では、さようなら。」
僕「…帰りは気をつけてね。」
海「送ってってやるよ!」
梓「えぇ、お願いします。」
海「じゃあちょっくら行ってくるわ。」
僕「いってらっしゃ~い。」
まるでそれが当たり前、というように送っていく海さん。
…カッコいい。
あぁいう気が利く人ってモテるんだよな。
それにしても、梓さんがクピドさんに頼んだ事って何だったんだろう、気になる。
後でそれとなく聞いてみようかな。
さて…と!
皆が眠そうな顔をし始めたし、布団の準備をしようかな!
※鈴村もちゃんと寿司食べてましたよ、一個しか食べてない訳じゃないですからね(笑)
後、美藍はお吸い物用意して皆と一緒に飲みました。
どれも文中にはなかったけれど。一応説明でした!w