青く消えそうな月
「さっきいなかったと思うから説明するね」
え、いたけどな。そう思いながらも否定できずに説明を聞いた。
やっぱり聞いたことのある話だった。最近影が薄いのかこんなことを言われることが多い。
それどころか歩いていても異世界を見ているような、自分だけここに存在しないような気がしてくるときがある。
「気のせい気のせい」いつからこんなメルヘンになったんだ自分は。
気を取り直して仕事に戻った。
休みの日は意図的に人の目を気にせず自分の世界へ入ることにしている。
普段周りの目を気にしすぎているから。
好きな服を着て好きな音楽を聴いて散歩しているといつもは目に入らない不思議な空間があった。
いつもなら通り過ぎるけどちょっと気になって入ることにした。
入ってみると古いけど落ち着いていて清潔感のあるきれいな喫茶店。
いいとこみっけ!とうれしくなった入ってみるとお客さんはいない。
白髪頭のおじいちゃんが「ほぉ来てしまったか」なんて言うからなんて感じが悪いんだと思った。
「ちょっとついてきな」そう言われてついていくと、膨大な本がある部屋に入った。
「あったあった」「これが君だ」本には私の名前が書いてあった。
「君は少しずつこの世界から姿を消している。このままではいつか、誰も気づかないうちに君という存在はこの世から消える」それからよくわからない話をながながとされた。
消えてしまうと戻るには相当大変で、戻れた人はほとんどいないこと。
この世界に残るには、存在感のある人になること。
人の記憶に残り続ければ世界に残れる。
消えるというのは死とは少し違うこと。
消えるとは魂を全うせずに忘れられてしまうこと。
「最近、影が薄いと感じることはないかい?」
「あ、あります」
「それは、魂が消えかけている証拠じゃよ。気のせいではなく本当に消えているんだ。自分はそこにいるつもりでもほとんど周りには見えていない。来週もここに来なさい。君の魂が消えかけているのか濃くなっているのか評価してやる。消えたくなければどうするべきかをまず考えるのじゃ。時間はそう待ってくれないぞ」




