84話〜王子は姫となれるのか〜
こんばんは!
バラッパーです
今回も楽しんでいただければ幸いです
乾神姫side
目の前のこの雌がムカつく
自分よりも女の子らしくて…
自分よりも可愛がられて……
僕よりも……私よりも……
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数ヶ月前
「やっと見つけた……EEIに入学してるなんてね」
僕たちはこの数年間色々な方法を使って実験体000を捜索していた
そしてやっと実験体000と完全一致する人間を見つけたのだ
目、鼻、口、予想背丈、歩き方全てが実験体000と合致していた
「盟友か!?盟友なのか!!おーい!盟友!吾輩だ!おい!?聞こえないのか!」
「まりまり……パネルに喋りかけても反応しないよ」
「はっ!?そうか!!」
画面に向かって叫び続けていた玉藻交差を呆れたような眼差しと共に冠猋が咎める
「まぁまぁ久々に見るのだからテンションが上がるのは仕方の無いことだ」
冠猋の母、冠光粒が珍しくニコニコしながらそう言う
「それで?どうやって取り返す?」
「さて……EEIに入学しているのなら学長さんの弱みを使えば……いや、理事長の女が面倒だな……」
「正面から取り返しに行こう!」
「馬鹿か正面から行ったら面倒でしょ」
光粒、猋、交差が実験体000の取り返し方を議論していく
(やっと見つけたんだ……ふふふっ……また……お姫様って呼んでくれるかな……)
しかし、僕はそんなことよりもまた実験体000と会えることに頭がいっぱいになっていた
昔、昔1回だけ会ったことかがあるだけ
しかしその1回が初めてであり唯一であった
『なんかお姫様みてぇな図々しさだなお前』
(ああ……お姫様……もう1回言って欲しいな……)
私は疼く下腹部を押さえる
頬に灼熱が宿り、にやけが収まらなくなる
「ふっ……ふふふふっ……」
乾神姫は画面に映っている実験体000を眺め、過去に浸っていた
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現在
「ああ……そうだね。君とは違って王子様に見つけてもらったんだよ」
「ああ……アアア!!イラつくなぁ!!何だよその顔!その目!潤んだ雌の目だ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ気持ち悪いそんな目で彼を見ていたのかい?本当にキモイキモイキモイキモイ!!てか剣士なのにもう剣振れないんだろ?早く死ねよ!」
僕は目の前で憎らしく笑う女を殺すために剣を抜く
対して目の前の女は利き手では無いはずの右手で剣を構える
その構えは……その……
目の前の雌が実験体000と重なる
僕が…私が昔唯一傷をつけられた構え方……それは
「それは000の剣技だろぉがァ!」
乾神姫はそのまま目の前の雌に突く
しかしエーリはその大雑把な突きをふらりと避ける
その掴みどころない動きはまた乾神姫のイラつきを増幅させる
「ハハ!さっきまでの王子様風の優しい雰囲気が台無しじゃないか?」
「違う!僕は……私は王子様なんかじゃない!私はお姫様なんだ!お姫様お姫様お姫様!私は!私は!私は!」
エーリの煽りに過剰に反応し突撃していく
その怒りは自身を理解せず干渉してきた今までの愚か者達とは違う000に助けられ依存した女の末路を表していた
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エーリside
(ふぅ……これで五分五分になったかな……)
エーリは目の前の修羅のごとき形相をした女に相対しながら頭をフル回転させる
(あたしは右手持ち……利き手じゃないのよね…でも、相手は正気を失ってる)
「それは000の剣技だろぉがァ!」
乾神姫が半狂乱になりながら突撃してくる
エーリは実の剣技を使用しその突撃を躱していく
その剣技は昔の記憶、朧気な視界で見ていた剣技
殺す剣技……防御をせず敵の剣を避け攻撃する攻撃特化型剣技
その剣技を用いて雑とは言えども必殺級の威力のある突撃を躱す
「ハハ!さっきまでの王子様風の優しい雰囲気が台無しじゃないか?」
「違う!僕は……私は王子様なんかじゃない!私はお姫様なんだ!お姫様お姫様お姫様!私は!私は!私は!」
(よし……このまま煽り続けろ……)
煽れば利き手が使えないハンデを覆せるかもしれない
案の定剣技を忘れひたすらに突撃してくる乾神姫
その突撃を受け流す
「恤鬼式異型・刀舞・一閃!」
レイピアをすり上げ上段から袈裟斬りを食らわせる
「ウグッ!?」
肩から横腹にかけて斬撃が走る
赤い血が吹き出し、乾神姫の顔が歪む
乾神姫は後ろに跳び退き、傷口を押える
エーリはその一瞬の隙を逃さず、切りかかろうとする
しかし、乾神姫の力がそれを阻止する
「轟け!地底の奇跡よ!」
杖代わりにしていた剣が輝き、地面から輝く水晶が隆起してくる
エーリは隆起してきた水晶を避ける
「それは……何よ……」
乾神姫の体は段々水晶に変化していく
人間の形を保ちつつも体は化け物へと
「あははっ!少しチート使わせて貰うよ!」
いつの間にか顔の半分以外が眩いほどに輝く水晶に変わった乾神姫がそこには立っていた
傷跡もなく、先程までの狂乱ぶりも鳴りを収めていた
「さぁ!第2幕の始まりだ!!」
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では、また次のお話で!




