72話〜フェーズ〜
こんばんは!
バラッパーです
今回も楽しんでいただければ幸いです
「今回の要件ですが……1回”こちら”から”あちら”に帰っていただきますッス」
「「「「あ?」」」」
殺意…濃厚な殺意
神話を司る化け物たちは巫山戯たことを言っている目の前の女に殺意を向けた
向こう側にいる女に神話種はそれぞれの権能を向ける
しかし、その権能が女の命を奪うまでは行かなかった
「まあまあ落ち着いて欲しいッスよ」
私たちの権能はいつの間にか消され、私たち自身も椅子に座っていることにされていた
「てか、エンジェさんとゼウスさんは分かりますけど、他の御三方は何故そんなに殺気立っているのですか?」
私は右に座っていた3人に目を向ける
1人は青い髪で側頭部から鹿の角が生えている女性、もう1人は白い髪の魔女帽子をかぶった女性
最後の1人は…何の特徴もない黒い髪にパンツスタイルのスーツを着ているバリキャリみたいな女性だった
「まぁ、アンタ達も落ち着いたみたいッスね。んじゃ、今回のお話、詳しくしましょっか」
パチンッ
女が指パッチンをした後、円卓の真ん中に見覚えのある男が映し出された
「なんで!?」
「やっぱり…」
「ああ…やっと…」
ザワザワ…ザワザワ…
その男を見た途端、神話に存在していた化け物たちは目の色を変えて凝視する
その目は期待や歓喜などの明るい色とおぞましい暗い色を孕んでおり、その目がミノルに向けられていると考えると腹の中で何かがグツグツと煮え滾っていた
「さて、今写っているのはエンジェさんとゼウスさんの器であり、恐らくこの世で最も神話種と相性のいい雄です」
その言葉を言ったことで先程まで孕んでいた目の色は更に危うく深くなり、私たちへの殺意が新たに向けられる
「それで…今回の主題なんですが…今、エンジェさんとゼウスさんは神話種の中でもリードしています…それって他の皆さんに不平等ですよね?」
「は?」
「な訳ねぇだろ!!」
また巫山戯たことを言い始めた女に私たちは食い下がる
しかし、女はでニヤニヤとし舌を回し始めた
「だってアンタたちは元々違法出国者扱いですよね?追放された天使に…勝手に出てきた主神…私が面白そうだから契約しなければ”こちら側”には居れませんよね?その状況で得た器は流石に不当でしょう?なら1回条件をリセットしないと〜」
私たちは女の言う言葉に何も言い返せなかった
(確かに…でも…)
「だが!俺とミノルは互いに拳を交わしたことで契約したのだ!それに不当性は無いだろう!!」
ゼウスは立ち上がりそう訴えかけた
「まぁ…確かに…そうッスね」
女は何も言えなくなったのか頭を傾げ
ゼウスはそれを好機と責め立てようとした
しかし…
「なら!「でも、それだとつまんなくね?」…あ?」
女はゼウスの正当な訴えを面白いの有無で突っぱねたのだ
「今、この世界はフェーズ1なんですよ」
「なんの話だ?」
女は急に妙なことを言い始める
フェーズ1…今の世界はまだマ○オで言う1面であると言っているのだろうか
「フェーズ1…遺物や聖遺物、ステータスを得て人間が各地のダンジョンを攻略する」
「フェーズ2…ダンジョンが消滅し、その代わりに違う異世界からの干渉が発生する。その干渉は人間に害と益をもたらす」
「フェーズ3…古代人や宇宙人、未来人に亜人、地底人など…ああ後海の民も居ましたね…他種族が現れ、地球が拡大する。そこには人間を強化する古代の遺産に外来寄生生物、未来の装甲に亜人のDNA、地底の原石や海の秘宝」
「フェーズ4…神話や御伽噺が顕現し世界が人間のものでは無くなる。そこで器に選ばれた人間は英雄となり救世を成す。しかし器はひとつしかなくその器を奪い合う争いが世界を滅ぼす」
「フェーズ5…異星とのバトルロワイヤルが始まり、贋具を使い戦い抜く」
女が言う言葉に誰もが耳を傾け、考える
「まぁ、つまり…貴女達の出番はもっと先ですよ」
女の言うフェーズの言う通りにするなら…私たちのミノルは先に違うやつの力を使う
(嫌だ…)
「まぁ、今してる契約は勝手に切らせて貰いますね〜」
「やめろ!!」
私は目の前の女に殴りかかろうとする
しかし、女が人差し指を振った瞬間、体から何か大切なものが抜けていく感覚を覚える
「ッ!?ああ…」
「クソ…」
ゼウスも切れたのを感じたのか膝を着く
契約とは力を貸すだけではなくこちらでの存在の証明を補強する役割もあり、切られると急激に力が入らなくなるなどのデバフが少しの間付与されるのだ
「んじゃ…帰りましょうか」
女がそういうと見覚えのある忌々しいゲートが開らき、体から漏れ出る粒子が吸われていく
「嫌だ!ミノル!やだ!」
「チッ…」
私は吸われないように反対側に逃げようとするが力が更に抜け、這いずるしか出来なくなる
段々体が中に浮き、ゲートに吸い込まれていく
「嫌だ!やだやだやだやだやだやだやだ!!」
私は石畳に爪を立てて留まろうとする
しかし、手が石畳をすり抜けて留まれなくなる
「さよ〜なら〜次にミノルが欲しい時は地球を征服してね〜」
目の前の女がニヤニヤしながらそう言う
(そっか…フェーズ4になれば…盗れば…奪えば良いんだ…なら…)
私は力を抜き、心の底にあったドロドロとした感情に呑まれる
―ふふッ…良いッスね…―
―そうッスよ!貴女方は神話の上位存在なんだから!奪えば!蹂躙すれば!支配すればいい!―
―さぁ!フェーズ4までそこまで時間はかからないッス―
―貴女たちは軍力を磨いて待てばいい―
―それを”観客”は望んでるんだから…―
女の声が段々小さくなり、”こちら”が離れていく
(待ってて…ミノル…またボクと一緒に暮らそ…また一緒に…今度は誰も居ない…まっさらな世界で…)
ボクは決意し、ワープ特有の眠気に身を委ねた
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「あ〜…天照は逃げたか…まぁ、いっか!」
読んで頂きありがとうございます
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では、また次のお話で!
 




