50話〜エピローグ3・修羅場〜
こんばんは!
バラッパーです
今回も楽しんでいただければ幸いです
「すみません……そこの病室は田中実さんの病院ですか?」
私に声をかけてきたのは制服を着ているボブカットの女の子だった
身長はミノルより少し小さそうで男ウケしそうな体
走ってきたのか息は乱れ、制服の第1ボタンは外されて扇情的な鎖骨が見え隠れしている
「あの……」
「ああ。ごめんなさいね濱上渚。」
「え?」
目の前の少女、濱上渚は呆気にとられたように間抜けた顔をする
「なんで名前を?」
「そりゃ知ってるわ。だって日本最強の上級探索者だもの。」
「そうですか。すいません。少し田中君に用事があって、そこを通してください。」
少し語気が強まってしまった
何故だろう……ミノルに彼女を近づけたく無かった
「ごめんなさいね?今はミノル、検査中なの。だから今日は遠慮してちょうだい?」
「嘘……ですよね?それ……さっき、あなたもドアをノックしようとしてました」
「?なんの事かしら?」
濱上渚は能面のような表情で問い詰めてくる
「というか、あなたは何者ですか?田中君にとってどんな存在ですか?」
「そうね……命を預けあった仲間よ。アナタは?」
「私も同じ学校の同じチームの「違うわ」ッ!?」
強い口調で否定する
その言葉はアナタが言うべき言葉では無い
「違うわ」
「何が……違うんですか?」
分からないのか分かっているが目を背けているのか、顔をひくつかせながら聞いてくる
「アナタはミノルの仲間じゃない」
「何を……「去年の10月」!?」
私がある事件の日付を言うと、濱上渚は体を震わせ、黙り込んでしまう
「去年の10月、アナタ、ミノルのこと見捨てたでしょ?」
「違う!「何が違うの?」……ッ!!」
「アナタのチームメイト達がダンジョン内でミノルのことを後ろから刺して聖遺物を横取りしたのは確認が取れてるわ。後、その3人が彼に罪を着せたのも、アナタが庇って無かったのも知っているわ」
ルーニャ・アンドロメダの最も嫌っていること
間違ったことをした人間が数の暴力で少数の弱者を悪者に仕立て上げ、周囲の人間もそれを鵜呑みにして責める
「それは……私は必死に!」
「なら、なんでミノルはソロで潜っていたの?」
「それは……」
濱上渚は何も言えなくなったのか俯き、言葉を探している様子だった
「まぁ、良いわ。もうアナタとミノルは関わることは無いでしょうしね」
「何を……言って…」
「だってそうでしょう?ミノルを危険に晒した元凶を近づけさせるわけないでしょ?」
「ッ!……あなたにそんなこと言われる筋合いはありません!」
濱上渚はヒステリックに叫ぶ
「大体!あなたも仲間ではないじゃないですか!」
「ええ。そうよ?まぁ、これから仲間になろうとしてるのよ」
私は濱上渚の目を真っ直ぐに見つめながら言う
「ごめんなさい。嘘ついてたわ。ワタシも今からミノルに会いに行こうとしてたのよ」
「今から言おうとしてたの。ワタシと組まない?って」
もう嘘はつかない
目の前の女に言外に伝える
この先にいる男はワタシのものだ
オマエはもう他人なんだと
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濱上side
「今から言おうとしてたの。ワタシと組まない?って」
目の前の女……サングラスで顔は見えないけど、知っているような気がする
「まず、あなたは誰ですか?」
私は目の前の女に問いかける
「ああ……ごめんなさい。ワタシが一方的に知っているだけも悪いわよね」
女はそう言うと帽子を脱ぎ、サングラスを外す
「っ!?あなたは!」
目の前の女が帽子とサングラスを外すとまるで恒星が目の前にいるように輝いていると錯覚するような美しさを持っている顔が見えた
「初めまして濱上渚。ルーニャ・アンドロメダよ。アンドロメダって呼んでね」
「ルーニャ・アンドロメダ……合衆国最強の特級探索者……そんな人がなんで田中君と」
「言ったでしょ?彼とは命を預けあった仲間なの。だから、今日一緒に組もうって言いに来たのよ」
目の前の女はなんてことも無いように言う
私はその言葉をもう言えないのに……
「でも……まだあなたも田中君も18歳ですよね?他校以外の探索者とチームを組むには大学生以上じゃなければ出来ないはずです」
「ああ……そうだったわね」
そう、高校生はまだ他校や他国の探索者とチームを組むのは禁止されているのである
「なら……あなたこそ今日は「なら、こうしましょう」…なにを」
「今は11月よね?しかも、今彼は停学中だったと思うのよ」
「ええ……それがどうしましたか?」
「なら!ワタシとエデンに来れるわね!」
「は?」
今、目の前の女はなんて言った
エデン?えでん?彼を?
「そうね!そうしましょう!ならアナタとも会うことは無くなるでしょうし!」
こいつは1人で納得して話を進めようとしていた
「いや……少し待ってください……」
「ん?何?」
「彼は……高校を今停学中で……エデンに入る条件は高等教育修了後ですよね?」
「ええ。そうよ」
「なら!彼は条件を満たしていない!」
そう、ダンジョン地域エデンには高等教育修了程度の学力が最低条件としており、田中君は条件を満たして居ないのである
「そう……」
「だから!「それで?」……は?」
「それはワタシとミノルに何か関係があるの?」
「……は?」
こいつは何を言っているんだ?
「だから!探索者として彼はエデンには入れ「なら入れるようにしましょうかね」な…い」
「ねぇ?アナタ、何か勘違いしてないかしら?」
「勘……違い?」
「ええそうよ勘違い」
「何を言っているんですか?」
「だから、ワタシと他の探索者が同じと考えてもらっちゃ困るのよ」
目の前の女は当然のように宣った
「ワタシは「恒星」よ?他と違う特別なのよ?」
「ワタシは欲しいものは必ず手に入れるの」
「だから、ワタシをルールで止められると思わないでね?」
私は目の前にいる女は自身が特別なのが当たり前だとでもいうかのように宣っていた
「だから……彼から離れてくれると嬉しいな?ね?濱上渚さん?」
私は何も言えなかった
今まで田中君に感じていた後ろめたさや罪悪感、拒絶されることへの恐怖などが混じり身動きが取れなくなってしまったのだ
身動きの取れない私の耳元にルーニャ・アンドロメダは近づき、囁いてきた
「もう……ワタシのミノルに近づかないでね♪」
私は足に力が入らなくなり、その場にへたり込む
私はルーニャ・アンドロメダが病室に入っていくのを眺めるしか無かった
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また、次のお話で!
 




