48話〜エピローグ1・少女の疾走〜
こんばんは
バラッパーです
今回も楽しんでいただければ幸いです
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走る走る走る
私は病院に向かって走っていた
走りやすいように履いたランニング用の靴、靴に似合わないセーラー服を纏っている少女は街中を疾走していた
呼吸は上がり、汗は流れるがそんなことお構い無しに走り続ける
「早く……もっと早く!」
段々と人が増え、道が混み始める
「もう……すいません……どいてください!」
声を上げるが人は増え、進むこともおぼつかなくなる
「こうなったら……」
少女は探索者になったことで得た身体能力を使い、屋根に跳び乗る
そのまま屋根伝いに走り、遠くに見える病院まで走る
「ハッハッ……田中君……」
彼女は昔、田中実と同じ学校のクラスメイトであり、ある事件で田中実とは疎遠になっていた
(多分……あの時……坂田君達は……)
ダメだ……この考えはあまりにも傲慢で自惚れている
自身の考えを諌め、足を急がせる
私たちのチームは元々仲が良くなかった
仲が悪いと言っても悪いのは坂田君、庭君、永田君と田中君だった
そして、あの日、3人が田中君がダンジョンの崖から落ちていったと言われた時、思考が白く染まったことを覚えている
私は田中君が落ちたダンジョンに行こうとしたが、一緒に探索に行っていた探索者達に止められた
その後、協会に救助要請を出したが、何故が1日も経たずにUPとして処理された
田中君が行方不明になってから1週間後、妙な噂が流れ始めた
〈田中実は一緒にいた3人を殺そうとした〉
〈ワールドアポカリプス級の魔物3体を倒した3人を後ろから刺そうとした〉
〈田中実は同じチームの女子に付き纏っていた〉
このようなことを吹聴する輩が増えだした
このことを3人に聞いても事実だと言い、まともに話し合ってくれなかった
そして田中実を救助しようとする探索者もいなくなってしまった
(あの時、もっと強引に探しに行ってれば……今も隣で……いや、もう考えるのは止めよう)
行方不明になってから1ヶ月後、彼は急に帰ってきた
装備はボロボロになり、魔物の皮で作った装備に変わっていた
私はすぐに駆けつけようとしたが、協会の上層部が事情を聞いているらしく会うことが出来なかった
その後だった……彼が裁判にかけられ、誰も弁護せずに彼が有罪判決を受けたことを知ったのは
彼は私たちチームメンバーへの暴行などの容疑にかけられ、懲役5年に課せられた
私は彼の無実を叫び続けた
しかし誰も彼も田中君に脅されている可哀想な女の子としてしか私を見なかった
その事件があってから彼の近くに行くことも周りが許してくれなくなった
そのまま高3の夏休みになり、ダンジョン実習が進んでいた中でのこの事件だ
もしもあの時……などというタラレバの話が頭の中に浮かんでは消えていく
今更こう言っても今は変わらない
私は拒絶されるのを恐れたのだ
拒絶を恐れて今まで関わるのを避けていた
そのせいで彼はソロになり、このような事件に巻き込まれた
(あの時、一緒に探索していれば……)
やはりあの日の探索に全てが戻る
頭の中で自省していると探索者用端末から着信音が鳴った
<田中実、意識回復>
病院からの簡潔な報告、しかし私には待ち続けていた言葉だった
私は病院に一刻も早く行くため、屋根を蹴る足に力を込めた
読んで頂きありがとうございます
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ではまた次のお話で!




