137話~人間~
こんばんは!
バラッパーです
今回も楽しんでいただければ幸いです
実side
「もう大丈夫なのか?」
「え、ええ…ご心配なく!私には神の御加護がついてるので!」
「そーいやそういうやつだったな…」
「そー言うやつ?貴方みたいな化け物は知り合いには…まさか…」
セネカは信心深いからこそ疑い深い
誰を信じ、誰を疑うかを見極めることが出来るからこそ今まで彼女は騙されずに生きていたのである
だからこそ先入観や思い込みから逃れ、向き合うことが出来ていた
しかし、人間とはそもそも先入観や思い込みが強い生き物であり、それが集団で起こった時の行動は迅速だった
「おれは田な…「離れろ化け物め!」…ギャッ!?」
実が名乗ろうとした時、銃声が響き、頭が吹き飛ぶ
次々に銃弾は放たれ、体を傷つけていく
「なっ…どうして…」
セネカは銃弾が飛んでくる方向を見る
「殺せぇぇぇぇぇ!」
「俺らが守れ!」
「死ねぇぇぇ!」
「ヒッ…」
そこには狂気があった
目の前で仲間を失い、自身の命も失う寸前だった彼ら
その彼らの前に怪物たちを更なる力で蹂躙する化け物が現れたらどうなるか
「ギャッ!?やめっ!?目が!」
「効いてるぞ!そのまま撃ち続けろ!」
「やれぇぇえぇぇ!」
その力に恐怖し、殺しにかかるだろう
ひたすらに撃たれる実
肉が抉られ、そこは歯車によって埋められる
骨が砕ける…そこはワイヤーがねじりこまれ、骨の代わりになる
[肉体損失率…10%]
[肉体置換率60%]
[100%になればお前は完全に人間じゃなくなるぞ]
「やべぇッ!?アギャッ!?」
[声]が告げる更なる「万象の鏡」の使用に焦りを見せる実
しかし、銃弾の雨は止まない
撃っている相手が化け物ならばどれほど良かっただろうか
しかし、目に写っているのは人間だ
探索者ならよく見る顔
死に晒され、狂気に溺れてしまった人間の顔だ
だからこそしようと思えば出来ることが出来ない
[よく見ろ…本当に人間か?]
[声]が聞こえる
その言葉が脳髄に染みわたる感覚と共に目に映る人間の姿が変化する
人型の…しかし人間でない姿
「あれは…化け物」
[そうだ…お前の邪魔をする奴は全員化け物だ…お前は探索者なんだろう?なら殺せ…一匹残らず]
「一匹残らず…」
[肉体損失率30%]
「肉体置換率80%]
[肉体の置換率70%を超えたため、探索者強度がⅤからⅩに上昇]
[急激な上昇により、脳の構造が変化する]
[思考能力低下…感情の鎮静化…戦闘時の思考能力・動体視力が上昇…闘争本能が常時アクティブ状態になる]
(めんどくせぇな…なんでこんな奴ら守らねえといけねんだよ…)
しこうが急激に冷える
今、思考は目の前の人間全員を殺す方向に傾いていた
(時間もねぇし…やるか)
手に力を籠める
それだけで銃弾が停止する
「な、なんなんだ…一体…」
「うろたえるな!超能力の類だろう…撃ち続ければ勝てるぞ!」
少し怯んだ彼らもすぐに持ち直し、撃ち続ける
しかし、銃弾は空中で止まる
そして先端の向く方向が変わり、彼らに向けられる
そして腕は振るわれ、銃弾が彼らに向けて放たれる…ことはなかった
「どいてくれ…アンタは違うだろ…」
「でも…ダメでしょ!今見て見ぬ振りしたらワタシ!後悔する!絶対!」
セネカが彼らの前に立ちふさがり、大文字のように手足を広げていた
「アンタも!今ここで殺したら後悔するよ!」
「お前には関係ないだろ…」
「ある!あんた!ルーニャ様の秘書探索者でしょ!あんたが人殺しになったらあの人が悲しむでしょ!」
「…なんでそいつらを守る…もしお前が怪物どもを倒していれば…ここに立っているのはお前だったのかもしれないんだぞ」
「確かに…アンタに助けてもらったのに攻撃したのは悪いと思う…でもさ…ちょっと待ってほしいんだ…彼らは今、恐怖に呑み込まれて正常な判断が出来ていないとおもうんだ…だからさ…ここは見逃してあげてほしい…確かに…確かに恩を仇で返したよ…でもさ、こいつらも怖かったんだよ…逃げて、死にかけて…別に許せって言ってる訳じゃないんだ…でもさ…人間ってそういうもんでしょ?誰だって間違えるし、誤ることもある。この1回…今回だけ信じてくれない?もう攻撃しないって約束する…信じられないんだったらワタシもついてく…まだ助けを求める人も大勢いるんだし…さ」
下から覗き込み、完全に許しを乞うセネカ
周りの彼らも次々と銃を降ろし、両手を頭の後ろで組む
その顔は恐怖に歪みながらも自分たちのしでかしたことを認識し、反省の色が見えていた
それを見て実は両手で顔を覆う
「ああ~!ハッッッズ!恥ずかしいいいい!」
「へ?」
先ほどまでの鬼気迫る雰囲気から一転して急に悶え始めた実に固まるセネカ
後ろにいる彼らも呆気に取られていた
「本当に恥ずかしい!何ラスボスみてぇなテンションになってるんだよ俺!落ち着け俺!」
「あ…あの…大丈夫?」
「ああアンタ!ありがとな!おかげで目が覚めたわ!まだまだやることあるし、アンタ特級探索者だよな?一緒に怪物ども殺しに行こうぜ!」
「え…ええ…」
そのまま扉に向かう実に困惑しながらもついていくセネカ
怪物の死骸を退かし、扉から出ていこうとする実に声がかけられる
「なぁあんた!」
「ああ?急がなきゃいけないんだ!まだ邪魔すんなら容赦しねぇぞ」
「いや…先ほどはすまなかった。健闘を祈る!全員敬礼!」
その言葉と共に自衛隊全員が敬礼する
「頑張れ~!」
「頼んだぞ~!」
「勝ってくれ!」
先ほどまで怯えて物影から出てこれなかった一般人たちも次々に応援する
「ああ!」
それに実は右手を挙げて答える
人々は恐怖から脱し、また目に活力が戻っていた
そして実は声援や敬礼を背に受け、また怪物の蔓延る地上に繰り出した
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では、また次のお話で!




