124話~一方的~
こんばんは!
バラッパーです
今回も楽しんでいただければ幸いです
レヴィアタンside
勝負は一瞬だった
レヴィアタンは嫉妬に狂い、正気を失っていた
ただ狂い、攻撃するだけの獣に成り下がっていた
ぼんやりとした視界の中で実がナイフ抜いたのが見える
響き渡る澄んだ音
そして、何かを言った後、奇妙な体勢を取った
右足を後ろにし、半身のような体勢
手はダランと下げ、脱力しきっている
「あああぁぁあああぁぁあぁ!?」
ただ叫び、水の鉾を射出するレヴィアタン
しかし、実はナイフで切り裂く
そして、跳躍し、レヴィアタンと同じ位置に並ぶ
「さっきから飛んでてめんどいんだよ!」
そのままげんこつのように拳を振り下ろす
拳を受けたレヴィアタンは地面に向かって落ちていく
「う、ぐぐぅぅぅぅっ!?」
地面にたたきつけられるレヴィアタン
その腹にさらにドロップキックを叩きこむ
体はクの字に曲がり、血反吐を吐く
「ッシャオラァ!見たかクソが!」
女性にドロップキックをしたのに心配もせずに喜んでいる男
やはりカス…凡人では行わない鬼畜の所業である
「ッゴホッ...ヴ...ゲホッゴホッゴホッ...」
下敷きになっているレヴィアタンは苦しそうに咳き込む
先ほどまで握られていた手は解かれ、震えていた
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実side
下敷きにしている女の手が少し動くのが視界に入る
「あ?まだやるか?」
身動ぎをするレヴィアタンの腹をぐりぐりと踏む
レヴィアタンは呻き、目を開く
その目にははっきりと恐怖が刻まれていた
「ヒッ!?こ、殺さないで!?」
体を震わせ、四肢は降参を表すように投げ出されていた
「は?」
[神秘種からの畏怖を確認…その存在より上位に立っていることを確認…情報解禁…神話種:悪魔…上位種:七つの大罪…嫉妬の1柱レヴィアタン。]
実は神話種に恐怖を埋め込んだことで情報が脳に流れ込んでくる
[神話種レヴィアタンはお前に恐怖している。神話種にとって恐怖とは敗北そのものだ]
「へぇ…つまりどういうことだ?」
[神話種レヴィアタンはお前に屈服した。お前の思うがままに動かせる]
[声]がそういうと手の中に鎖が現れる
その鎖はレヴィアタンの首に繋がっている
しかし、首輪は見えない
[神話種:悪魔は寄生種だ。この鎖はレヴィアタンのみに繋がれている]
「なるほど…じゃあ引け…ば!」
「きゃあ!?」
さきほどまで踏みつけていた体からもう1人女が引っ張られて出てくる
その容姿は先ほどとは打って変わり、黒い長髪にやせ細った体
そして一番目を引くのは全身に巻かれた包帯
[神話種:悪魔本体だ。その体はあまりにも貧相で、その頭の中は余りにも醜い。他人への嫉妬にあふれ、誰にも褒められない。その在り方は悪魔に選ばれた]
実は眼下でへたり込み、自身を睨む少女を見る
その目に少女はまたもや悲鳴を漏らす
「おい…」
「はっ!はいいいいいい!?」
実は少女に声をかける
その行為でも大げさに声を荒げる
「す、すみません!わ、私知らなくて!貴女様がそんなに強いなんて…ち、違います覇気がないって言っているわけじゃなくてその…あの…すみません!命だけは!命だけは助けてください!必要ならお金もあげますから。寄生してたこの娘、実は暗黒大陸の部族の長の娘でお金だけは有り余っているんですよ…お、お金だけじゃないです!力だって全部あげます体も捧げますなんならこの娘の体も良いですよ?それ以外にも他の悪魔を倒すのも協力します!それに部下も沢山いるんですよ?私暗黒大陸の中でもトップの位置にいるんです…なんならアジトも教えます!世界的犯罪組織の本アジトですよ?そこを攻め入れば一網打尽、ひとたび世界の英雄ですよ?ほら…魅力的でしょ?今見逃してもらえれば貴方にここまで利益があるんですよ?だから見逃してくれませんか?ほらこの通りですよ?」
実が何か言おうとした矢先に早口でレヴィアタンが命乞いを始める
「ね?ね?ね?」
実が呆然としている間にも足に纏わりつくレヴィアタン
実の顔は髪の影で見えない
「はぁ…」
一息
溜息を吐く
「もういいや…なんかバカバカしくなってきた…」
踵を返し、いつの間にか開いた扉のほうへ歩く
震えるレヴィアタンの横を抜ける
その目にはもうレヴィアタンは映っていなかった
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レヴィアタンside
歩いてくる実が見え、殺されると思い縮こまる
(殺される…なんで?人間は金や権力、女が好きなんじゃないの?それを全部上げるって言ってるのに…なんで?怖い怖い怖い…嫌だ…死にたくない…)
頭の中で嫌だという言葉が渦巻く
近づいてくる足音
それはまるで世界の終わりが狭められているかのような絶望感で
またあちら側に戻るという絶望
弱いものは痛めつけられ、ゴミ以下の扱いを受ける世界
こちらの天国のような場所から戻ることに一番の恐怖が湧き出る
(嫌だ……死にたくない……嫌だ嫌だいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや……)
目を瞑る
しかし、いつまで経っても痛みは来ない
「えっ…」
呆然としたレヴィアタン
その目にはレヴィアタンに一切目を向ける事無く扉に歩いていく実の姿
(許……され……た?)
自身の命を奪う者が去る
本来なら宿る感情があった
安堵……命の危機から脱した生物の当たり前としてある本能
しかし、レヴィアタンはただの生物では無かった
心には安堵?
いや、嫉妬が満ちていた
(ふざけるな……)
先程まで消火されていた嫉妬の炎が再燃する
それは力あるものへの僻み
自身を見ろという叫び
その衝動が体をつき動かしていた
「私を!見ろぉぉぉぉぉぉぉぉォ!」
紫色の炎を纏った貫手が実の背中へ迫る
「はぁ……やっぱバカか」
振り向き、貫手を避け、首を掴む
そのまま壁に叩きつける
ビキッ!
壁が割れ、後ろの方へ進んでいく
「こりゃ楽でいい!さ!掘れ掘れ!」
田中実、神話種:悪魔、七つの大罪……嫉妬の1柱:レヴィアタン……討伐
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では、また次のお話で!




