123話〜嫉妬〜
こんばんは!
バラッパーです
今回も楽しんでいただければ幸いです
実side
道を進み、広い空間に出る
その空間はただの広間
しかし、異様なのは真ん中に佇む……いや浮いている女性
捻れた角に魚の下半身を持つ女性
あまりに普通の人間には見えない
「……なんだよアレ」
[……悪魔を検知……七つの大罪1柱…嫉妬の悪魔レヴィアタン]
「七つの大罪……まぁ、ギリシャ神話のやつとかもいたからな……そりゃいるか」
「へぇ……なんで知ってるか知らないけど……知識があるなんて妬ましい」
「あっ…初対面のやつにそういうこと言っちゃう感じ?」
急に妬み始めた女性に困惑する実
「その態度も妬ましい…筋力も…能力も…全部妬ましい」
その間にも妬ましいと言い募るエンヴィー
その手には段々と水が集まり…
「妬ましい…妬ましい…妬ましいいいいいい!」
水は三又の銛を形成し、それを実に投げつける
「ッ!?」
それを跳躍で避ける
着弾地点には水溜まりが出来る
そして、そこから無数の水の銛が生み出され、発射される
「2段構えかよ!?」
無数の銛が着弾した場所に水が付着し、そこからさらに銛が生み出される
空間は水で埋め尽くされ始め、実は水に吞み込まれていった
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レヴィアタンside
水の体積も段々と増え、レヴィアタンも動き始める
「妬ましい?ねぇ妬ましい?水の中でこんなに動けて妬ましい?」
その顔は恍惚と、優越感に染まっていた
そして水の中に沈んだ実に近づき、頬を撫でる
「ああ…この瞬間に代わるものはない…持っている奴にそいつが持ってないもので上回る…ああ…気持ちぃ」
水の中では人間は生きられない
その当たり前のことを疑わず、実を絞め殺そうとする
首に巻き付き、苦しむ瞬間をみようとした瞬間、実の眼が開く
「は?」
「ぶっばばぜ」
視界が白く染まる
水が凍る…いや…水が減っていく
(水が…乗っ取られている!?)
レヴィアタンの扱う水はレヴィアタン自身の魔力が混ぜ込まれており、増えたように見える水は魔力によってかさ増しされただけに過ぎなかった
もし…もし水系の能力で上位のモノとぶつかり合ったら?
答えは簡単…弱者は排斥されるのみ
「あ…あんた…」
顔が引きつる
目の間にいる男の抱えているものに恐怖して
「けほっ…ひどい目にあった…」
「あなた大丈夫?」
「センキュ助かった」
いつの間にかいた白い少女
その姿をみた瞬間、女性の体に棲む悪魔がひどく恐怖する
「概…念種?」
「あら?私の旦那をいじめるのは誰かしらと思ったら悪魔…人に棲む愚かな寄生種じゃない」
視線が交わる
片方は恐怖、もう片方は睨む
「お、おまえ…なんで…そいつに」
震える声でレヴィアタンは問いかける
「は?旦那助けて何が悪いの?」
「え?」
概念種から言われる上位種の口からでた言葉に開いた口がふさがらない
「だ、旦那?」
「そうよ旦那よ」
レヴィアタンの脳内は疑問で埋め尽くされていた
もともとレヴィアタン達、悪魔も神話種であり、ダンジョン内で生きるにあたり上下関係を理解していた
その上下関係のなかでも最上位に存在する概念種
その姿は一様に概念をあらわしたかのような姿をしており、一目見ただけでレヴィアタンは足の力が抜けたのを未だに覚えている
しかし、自分たちとは違うあり方に恐怖しながらも嘲笑していた
かの存在は孤独だと…自身を埋め、寄りかかれる存在などいないと
寄生種たる悪魔だからこその思考かもしれないが、その思考でレヴィアタンは概念種への恐怖を右腕売りしていた、嫉妬しなかった
しかし、目の間にいるそいつはどうだ
男に侍り、完全に寄り添っている
その姿は彼女にはとても眩しく、とても輝かしく見えて…
その姿を見ていると…
ガリッ…ガリッ…
いつの間にか爪を噛んでいた
この動作は彼女の癖であり、彼女たらしめる行為だった
その心には1つの感情しかなく
「…しい」
目の前ではまだ実と概念種がいちゃついている
その姿は…彼女の追い求める姿
「…ましい…妬ましい!」
「あら?初めてね。寄生生物如きから敵意を向けられるのは」
「な、なぁ?なんか髪うねうねしてっけど!?あれ大丈夫!?」
今まで恐れていた心は消え去り、在るのは心を蝕む嫉妬のみ
「お前らは力があるだろう!お前らは1人で完成されているだろう!?なのに何故!?なぜ私たちより先に…先に…」
その言葉には嫉妬のほかに少しばかりの失望が混じっていた
圧倒的な力に対する憧れ
1人で完成されていたことに対する憧れ
それ以外にも表には出せなかったが憧れは確かに存在していた
しかし、今の概念種はまるで従者のように男に侍り、媚び、寄り添っていた
その姿はあまりにも無様で、失望した
(でも…あんな怪物にも出来るなら…)
甘い考えを振り切る
そして力を全開放する
嫉妬の鉾が向かう先は完全を捨てた上位者か…
それとも…
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実side
「じゃ…おもしろくなさそうだし、私戻るわね」
「は?おいま…「行ってらっしゃいのちゅ♡」…はぁ」
何かわからないが目の前の女性の地雷を踏みに踏み抜いた氷河期の聲は指輪に戻る
残るのは状況の分かっていない実と何か激情している寄生種と言われていた女性
[選択は1つ]
[声]が語り掛けてくる
[目の間にいる女は攻撃を仕掛けてきた]
[声]のいうことは事実だ
事実しか囁いてこない
「妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい言いいいいいいいいいいいいい!」
女性は既に激情に身を任せ、話し合いは不可能であろう
[ナイフを抜け]
ナイフを抜く
キィィィィィンと音叉のような音が響く
このナイフはある女の遺品であり、本気で戦う際のメインウェポンだった
[■■■確認…▲▲▲▲▲の現身…条件達成…●●●のドッグタグ…未所持…追加効果未発動]
そのナイフは手に馴染む
刀身は血のにじまない白
切っ先は鋭い
そして、何より重かった
「キれいなおト……ネたまシイ」
もはや正気を失い、声音もおかしくなったレヴィアタン
実は彼女に目を向け、ナイフを構える
「妬ましい妬ましいうるさいんだよ。そんなに妬ましかったら奪いに来いよ」
その言葉にレヴィアタンは虚空を見つめていた目を実に向ける
そして、沈黙し、水の鉾を作り出す
「それでいいんだよ……悪魔やら寄生種やら言われてたけどよぉ……」
口角が鋭く上がる
その顔は善人にはあらず
「まぁ……殺す気もねぇし、半殺し位で済ませてやるよ」
しかし、非常に徹しきれる悪人でもあらず
「あんたが俺に攻撃すんなら……俺もしなきゃ行けねぇ……だろ?」
その様は聖人でもなく、外道でもない
凡そ、この者、凡人なりて
「田中実……敵対生物を確認、戦闘に移行する」
凡人が戦いを始めた
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では、また次のお話で!




