↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

71/86

幸せの定義

「何だか、すごい熱気でしたね」


「え、ええ……」


「このパンは、全てアイリス様が食べられるのでしょうか?」


「まさか。私の分もありますよ。余ったら、皆様にお分けすることも出来ると思いましたので……」


「そうですよね」


「……」


「……」


 宿へ戻る途中でサラに話を振ったものの、警戒されているのか、彼女の表情は何だかぎこちなかった。沈黙が続き、宿屋の看板が見えてきたところで、サラは私に言った。


「私は平民出のメイドなんです。オーベル様には、よくしていただいていて、こんなことを言うのは申し訳ないのですが――私を気に入って、くださってますよね?」


「えっと、あの……。はい」


「私の、どこがいいのでしょう?」


「いや、その……」


 即答出来なかった。『前世で夫婦だったかもしれない』なんて、答えにならないだろう。私はサラ自身を見ているようで、見ていなかったのだ。


 急に目の前に現実を突きつけられた様な気がして、私は苦し紛れの言い訳をすることしか出来なかった。


「動きが……」


「動きが?」


「滑らかで、所作が美しいなと……」


「それだけ? それだけで私のことを?」


「はい。いえ、これから知っていきたいなと思ったのです」


 サラは私の顔を見ると、溜め息をついた。


「私が思うに、オーベル様は誰か他の人を見ていると思います。ご自分で気がつかれませんか? 誰かと私を重ね合わせているように思えるのですが……」


 あまりにも適切な指摘に、私は息を呑んだ。


「そんなつもりは、なかったのですが……」


 私は気まずさに視線を逸らし、口元に手を当てると俯いた。


「図星のようですわね。その方に、思いを告げてみてはいかがですか? 申し訳ありませんが、誰かの代わりなんてまっぴらごめんです。それに……」


「それに?」


「魔術師団長兼騎士団長代理兼護衛の方と、お付き合いなんてしたくありません。私は結婚するなら、()()()幸せを掴みたいんです」


「……」


「失礼いたします」


 サラは私に対して一礼すると、宿屋へ走っていったのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。