四大精霊
「何が、どう違うのです?」
「まず、処刑は行わない。ファーゴ王子には次期国王になってもらう」
「えっ……」
「消えた命は戻らないし、農民に国王をやらせる訳にもいかないからな」
「……」
イル王はトラスト国の王族が、既にファーゴ王子しかいないことを知っているようであった。
「大精霊が言っていた。ファーゴ王子の記憶は失われたまま、元に戻らないそうだ。どうも、谷底で二人が必死になっている時に力を貸した代償らしくてな……今のファーゴ王子は、魔眼や魔力を使えないただの人間だ。しかし、王族の血を引いているのは間違いない。国に戻ったら、妾なんか相手する暇がないくらいに、こき使って働かせるさ。今まで、ほとんど何もしていなかったらしいからな」
「それでは……トラスト国は、アーリヤ国の属国になるということですか?」
「今のところはそのつもりだ。賠償金を納め、国としての誠意を感じられれば少しずつ返還していくことになるだろう。他の国の意向もあってな。私も砂漠に覆われている国を治めたいとは思わない。今、手中に治めているものだけで十分だし、本当のところを言うと、それを守るだけで精一杯だ」
「そんな……ご謙遜を」
「そんなことはない。私は、よく好戦的だと言われるが、そうでもないんだ。みんなが幸せに暮らせる世の中であれば、それで構わないと思っている。本当に幸せにしたい人ほど、幸せに出来なかったりするんだ。それこそ、手からこぼれ落ちてしまいそうになるほどに」
イル王からは、いつものように厳格な雰囲気が感じられた。ただ、言っていることはいつもと違って少し弱気だった。
「イル王……」
「アイリス嬢、そなたも少しはエリオット王太子の気持ちを察してやれ」
「え?」
「いつまでも、お転婆がすぎるようでは見放されるぞ」
「ご忠告、ありがとうございます」
どういう訳か、私はイル王にオーベル様と同じようなことを言われてしまっていた。
「明日の朝、また来る。そういえば、結婚式は明後日だったか」
「はい?」
「期待しているぞ」
イル王は話が終わると、すぐに転移陣で帰っていった。イル王の言葉に少し呆けた顔をしてしまった私は、慌てて持っていた扇で自分の顔を隠し、エリオット様のいる方へ向き直った。
「アイリス!」
「エリオット様!」
「結婚式だ!」
「結婚式よ!」
(そうだった。結婚式があるのを、すっかり忘れていたわ)
「アイリス、結婚式は延期しよう」
「エリオット様、各国の主要人物を招いているのです。今から、変更なんて出来ませんわ」
「そうか……そうだよな」




