トラスト国への帰還
私とエリオット様が応接室に到着した時、ファーゴ王子は応接室の中にあるソファに腰掛けていたが、落ち着かないのか部屋の中を何度も見回していた。
「ケガは、大丈夫なのか?」
ファーゴ王子の頭には包帯が巻かれていた。既に右目に包帯が巻かれていたため、かなり顔は隠れてしまっている。
「はい、大丈夫です。階段から落ちた時に、頭を打ったみたいなのですが、今日一日安静にしていれば問題ないということです」
「……大事なくて良かった」
「あの、王太子殿下――で、合っているのでしょうか? なぜ、私はこのようなところに?」
「それは、君がトラスト国の王子だからだ」
「トラスト国の王子?」
「それも覚えていないのか? トラスト国の次期国王だ」
「次期国王? まさか私が?!」
ファーゴ王子は青ざめ、意味もなく口をパクパクとさせていた。エリオット様は、こめかみに手を当てると溜め息をついた。
「トラスト国の側近が、そなたの帰還を待っている。一度、本国へ戻ってみてはどうだろうか?」
「なぜ自分がここにいるのかは分かりませんが、その方がいいでしょう」
「階段から落ちたということだったが、誰かに突き落とされたのか?」
「申し訳ありません。目が覚める前のことは、何も覚えていないのです」
ファーゴ王子の祖国トラスト国は、周辺国の人間から恨みを買っていると言われていた。エリオット様は、城内に刺客がまぎれている可能性も視野に入れているのだろう。
「トラスト国への帰還は、こちらで護衛をつけよう。ジル、頼めるか?」
「えっ、私ですか?」
話を振られると思っていなかったのだろう。ジルは狼狽えていた。
「いつ、どこに、どんな敵が紛れているか分からないんだ。信用できるジルに頼みたい」
「殿下の護衛は、どうなるのです?」
「当面はオーベルに頼もう……。アイリスと兼任になってしまうが。オーベル、頼めるか?」
「はい。承知いたしました」
オーベル様は後からやって来たのか、部屋の隅に控えていた。一歩前へ出て騎士の礼をすると、また部屋の隅へ戻っていく。
「それから、ついさっき極秘で情報が入った。トラスト国内で革命が起きるかもしれないとのことだ」
「革命?!」




