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毒見

「どういうことだ? 魔素が含まれているのか?」


「オーベル様?」


「アイリス様。緑の光は私には見えませんが、キラキラの光は見えています。これが一体、何なのか……」


 カルム国の森に設置されていた魔素の生成を抑える小さな塔は、必要とされなくなったため、アーリヤ国協力のもと既に取り壊されていた。


 魔素は大気中へ戻りつつあると思われるが、いくら何でも、こんな風になるのは流石におかしいと思った。


「それにしても魔素が含まれるクッキーか……。配分に意味があるのか? 新しい物質の化学変化? 分からないな」


「オーベル様? 何を仰っているのです?」


 オーベル様が眉間にシワを寄せ、ブツブツと呟いていると入口に人影が現れた。


「アイリス様! 探しましたよ。エリオット殿下がファーゴ王子の件でアイリス様に話があるそうです」


「あら? ジルがここへ来るなんて珍しいわね。わざわざ、ありがとう」


「おっ、旨そうなクッキー。アイリス様の手作りですか?」


「違うわ。オーベル様の専属シェフ、ジェイドが作ったものよ」


「ジル。毒見ということで、よければ一つ試しに食べてみてくれないか?」


「えっ、いいんですか? 毒見ですね。はい、はい。いただきまーす」


 本当に毒見ということを知らないジルは、私が注意する前にクッキーを口の中に素早く放り込んだ。


「え?」


 私とジェイドは同時にジルを見たあと、フリーズしてしまった。


「あれ? アイリス様、顔が青いですよ。まさか、このクッキー本当に毒入りなんですか?」


「いえ、それは……」


「死なないので、とりあえずは大丈夫だと思います!」


「まさか、媚薬入りとか?! うっ……」


「だ、大丈夫ですか?」


「ジル!」


 ジルは一度俯いた後、何かを堪らえるかのように顔を上げた。


「オーベル様、かっこいい」


 オーベル様は、自分の腰に巻いてある小さなポシェットから素早く小瓶を取り出すとジルに押し付けた。


「ジル、解毒薬だ。今すぐ飲め!」


 再び俯いていたジルは、肩を揺らしながら震えていた。


「ふふっ、冗談ですよ。でも、このクッキーは迂闊に誰かに食べさせない方がいいですね。僕は多少、こういうのに耐性があるせいか、何ともありませんが――たくさん食べると危険かもしれません」


「ジル、お前……」


「じゃ、これはありがたく頂いていきますね」


 ジルは小瓶を手に取ると、上着の内ポケットに入れていた。


「行きましょう、アイリス様」


「え? ええ……」


 私はジルにエスコートされながら、部屋をあとにしたのだった。




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