魔眼の力
部屋へ戻る前に、私はオーベル様を捕まえて魔眼について聞いてみた。ファーゴ王子やアリエルが使っていた魔眼の力が、私にぶつかると消えてしまったように感じて、少し不思議に感じていたのだ。
「アイリス様。今の話だと、アイリス様に消滅の魔眼の魔力が残っているように聞こえるのですが……」
「私もそれが気になって――北塔に戻る途中で、こっそり植木に向かって、それらしき魔力を放ってみたのよ」
「勝手なことをなさらないでください。後で殿下に叱られても知りませんよ?」
私の話を聞いたオーベル様は半眼で、こちらを見つめていた。
「ごめんなさい。上手く言えないけど、たまに魔力が上手く吸収できない時があるのよ。跳ね返ってしまうと言うか何というか……」
「今までも、そういう事はありましたか?」
「ええ。でも分からないから、違う魔力や魔術に吸収されたのかな? ぐらいにしか、思っていなかったの」
「アイリス様。魔力は基本的に混ざり合う事は、ありません。例えて言うならば、『水』と『油』です」
「なら、どうして……」
「お待ちください」
そう言うと、オーベル様は懐から、さっき使っていた計測器みたいな物を取り出していた。
「……やはり、魔眼の魔力は検知されませんね。私が付与した魔術しか、アイリス様には残っていません」
「では、魔眼の魔力はどこへ……」
「魔眼の力は『特殊』だと聞いております。おそらく識る力をもってしても、吸収する事は出来ないのでしょう」
「でも、アリエルは『魔眼』を消滅させたのよね? 自分の魔力によって『消滅』もしてるし……」
「アイリス様、魔眼は『魔術具のようなもの』と、お考えください。魔力が魔眼を通過する事によって、魔術が生まれるのです。それに、アリエル伯爵令嬢が消えたのは、自身の膨大な魔力によるものでしょう。あの膨大な魔力量では、ファーゴ王子と共に消滅していても、おかしくはなかった」
「魔眼の力によるものならば、魔力自体は私達と何も変わらないのよね?」
「ええ。魔眼の力を操るのは難しいと言われていますし……まだ全て解明されていないので何とも言えませんが、大気中の何らかの成分に触れる事によって、魔術が消えるのかもしれません」
「空気に触れると駄目になるとか……何だか接着剤みたいね」
「はぁ……」
「酸化して駄目になるのは、銅だっけ?」
「そうですね」
オーベル様は疲れていたのか、騎士の礼をすると帰っていった。私は魔術具に異変がないのを確認してから、部屋へ戻ったのだった。




