表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/86

司教の息子

 翌日。トラスト国へ向かうことになった。急な話だったが、内容が内容だけに、のんびり出発する訳にもいかなかった。


 出発前にオーベル様にお願いして、ジェイドに会う手筈を整えてもらった。単に情報収集が目的であったが、気になることもあった。


 ジェイドには、司教についての聴取を行うため、城に滞在してもらっているが、実際は軟禁状態だった。許可無しに、誰もジェイドに会うことは許されない状況であった。


「ごきげんよう、ジェイド」


 オーベル様と一緒にジェイドの部屋を訪ねると、ジェイドは驚きつつも、私達を部屋の中へ入れてくれた。ジェイドの部屋は、ベッドと机しかない四畳半位の小さな部屋だった。


「アイリス様、一体どうされたのです?」


「色々と聞きたいことがあるの。単刀直入に聞くけど、何故あのような場所にいたの? それから、気絶する前に私に何か言いかけてたわよね。それが私の中で、ずっと引っかかっていたのよ」


「‥‥‥アイリス様、これから少し突拍子もない話をするかもしれませんが、聞いていただけますか?」


「えっ‥‥‥。ええ、大丈夫よ。何かしら?」


 私は突拍子もない話と聞いて、アーリヤ国の難民やファーゴ王子、アネッサやリーリャの事を思い浮かべた‥‥‥。何かあるのだろうか?


「実は私には、前世の‥‥‥。前に生きていた時の記憶があるんです。この世界ではない世界なのですが」


「それは‥‥‥」


「信じられないかもしれませんが、あなたはゲームストーリーの中で、悪役令嬢なんです!!」


「へ?」


「『白薔薇シリーズ』の2作目は、1作目と違い、悪役令嬢が主人公の様々なストーリーが展開されます。トラスト国のファーゴ王子や、カルム国のエリオット王子、魔術師団長のオーベルに、護衛騎士のジルが攻略対象になります。この設定のある世界に転生したと気がついた時はもう!! テンション上がりまくりでした」


 ジェイドは、話しているうちに饒舌になり、身振り手振りを交えながら、興奮して話していた。


「ちょ、ちょっと待って。あなた前世では‥‥‥。えーと、日本人だったの?」


「はい。バリバリの日本人でした。料理の専門学校に通ってた中条玲太と言います。『白薔薇シリーズ』の大ファンです。アイリス様も、もしかして、もしかしなくても転生者ですか?」


「そうよ。学校に通ってたってことは‥‥‥」


「20才です。でも気がついたら、こちらの世界にいました。たぶん、転生? したんだと思います。どうしてかは分かりませんが‥‥‥。俺、びっくりしました。アイリス様も転生者ですか? 同じ人もいたんだ。良かったぁ」


 私が頷くと、ジェイドは嬉しそうに話をしていた。


「それにしても、白薔薇シリーズに続編があったなんて‥‥‥」


「俺も、続編はないって聞いてたんですけど、急にライトノベルで『悪役令嬢』を主人公にした話が流行り始めて‥‥‥。時代の流れを汲んだのか、業界としては異例の悪役令嬢が主人公の乙女ゲームが出たんですよ」


「まさかとは思うけど、バッドエンドは‥‥‥」


「俺もよく覚えてないんですけど、二人で谷底に沈む。とか、そんなストーリー展開が多かったと思います」


(主人公になっても、悪役令嬢だからバッドエンドばかりなのかしら)


「まだ命の危険があるのね‥‥‥。続編があるなんて油断大敵だわ」


「あー!! 本当に悪役令嬢のアイリス様だ。本物に会えるなんて‥‥‥。夢みたいだ」


 テンション上がりまくりのジェイドに、オーベル様と私は顔を見合わせると、肩をすくめていた。


「えーと、ジェイド? どうして、トラスト国にいたのか教えてくださる? 前世の記憶は最近、思い出したのかしら?」


 私がそう言うと、ジェイドは『心得た』とばかりに話し始めた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ