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撤退

 数日後。トラスト国との間にあった臨戦態勢は解除された。トラスト国から『休戦協定』の申し入れがあったという‥‥‥。次期国王が誘拐されたとなれば、戦争どころではないだろう。


 休戦協定の申し入れがあった次の日、トラスト国からカルム国へ書簡が届いた。エリオット様が朝早くに書簡を握りしめて、何故か私の部屋へやって来た。


「アイリス、おはよう」


「おはようございます。エリオット様‥‥‥。何かありましたか?」


 エリオット様は、眉をハの字に曲げて困った顔をしながら怒っていた。


「トラスト国から書簡が届いたよ。『ファーゴ王子を、アイリスに探して欲しい』っていう‥‥‥」


「え‥‥‥。先日まで臨戦態勢にあった国ですよね?」


「ああ。アイリスを誘拐したことを認めて、謝罪している‥‥‥。王子を見つけ出す有力な手掛かりが一切ないらしく、『アイリスに協力して欲しい』と手紙には書いてあった。多額の和解金と謝礼も出すって書いてあるけど、そんな都合のいい話、ありえないよ?! もちろん『出来ない』って、答えたんだ」


「え、ええ」


「ただ‥‥‥。父上は隣国同士、協力出来る時は協力し合わなくてはだめだと‥‥‥」


「エリオット様?」


「アイリス‥‥‥。断るよね?」


(私だって頭にきてるけど‥‥‥。ここは1つ、エリオット様の為にも、私情は忘れて協力するべきだと思うわ)


「エリオット様‥‥‥。王命であれば、公爵令嬢として協力しない訳には参りません」


「アイリス‥‥‥」


(何だか、朝からエリオット様のメンタルが崩壊しそうなんだけど、大丈夫かしら?)


 私はエリオット様の前に立つと、誰もいないのを横目で確認しつつ、自分からエリオット様へキスをした。


「協力しても、直ぐに戻ってくるので、待っていてくださいませ」


「アイリス!!」


 エリオット様は私を抱きしめると、しばらく私の肩に顔を埋めていた。


「アイリス様、朝食をお持ちしました」


 サラはエリオット様がいたことに驚いていたが、紅茶を2人分淹れると、何も言わずに部屋を出ていったのだった。




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