彼女達の想い
私はリン王女が頼んだ修道女たちが、私の身代わりになって助けてくれたのだと、周りの皆へ話して聞かせた。
「アネッサとリーリャを助けなくっちゃ‥‥‥」
「アイリス様。今から戻って城に乗り込むのですか? おやめください。アイリス様が捕まれば、『彼女達の想い』をも踏みにじることになるでしょう」
「そんな!! 私は、どうすれば‥‥‥」
困ったようにエリオット様とオーベル様に視線を向けたが、2 人とも気まずそうな顔をしている。エリオット様とオーベル様の他には護衛騎士が3名しかいない‥‥‥。そんな少人数で他国へ来るなど、よほど急いで駆けつけて来たに違いなかった。
「アイリス、私達もここへ来るまで大変だったんだ。何度も幻影の魔術の罠に嵌まってしまってね‥‥‥。やっとの事で、アイリスを見つけ出すことが出来たんだ」
「でも、助けてくれた人達を見捨てるなんて‥‥‥」
エリオット様は困った顔をしながら、話を続けた。
「他国との外交は難しくてね‥‥‥。今、城へ数名で向かうのはカルム国として問題になるし、王家としても看過できない問題になってくるんだよ」
こんな時に王家とか‥‥‥。身分のある自分の立場が歯がゆかった。エリオット様の言葉に、オーベル様も執り成すように言った。
「最終的には、魔力を使用してくれたお陰でブレスレットの正確な位置が分かったのです。あれがなければ‥‥‥。そして、近くにいなければ分からなかったでしょう」
「アイリス様‥‥‥。ここは一旦、戻りましょう」
結局、サラの言葉に私は頷くより他なかった。
「分かったわ。それにしても、2日しか経っていないのに‥‥‥。来るのが早くてびっくりしたわ。助けが来るとしても、もう少し時間が掛かるのかと思っていたのだけれど」
少人数で、一体どうやって来たのだろうか‥‥‥。オーベル様の新しい魔術だろうか? そう思って顔を上げると、3人は何とも言えない表情をしていた。
「「「‥‥‥」」」
「アイリス様、大変申し上げにくいのですが、アイリス様が攫われてから5日経っております」
「5日?!」
どおりでふらつくはずだわ‥‥‥。サラのその言葉に、私は急激にお腹が空くのを感じ、その場に倒れたのだった。