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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

花に幸せを

作者: Zeri

初投稿です。

よろしくお願いします!

むかしむかし、少年は街はずれの花畑で同い年くらいの女の子と出会いました。毎日のように遊ぶ2人は自然と恋に落ちました。


しかし数年後、2人で街の祭りに出かけた際に街全体が魔獣に襲われ、逃げ遅れた2人は怪我を負ってしまいます。


少年を守ろうと魔獣に向かって飛び出した少女は意識がなく、足を怪我した少年が近くの人に助けを呼ぼうにも周りには誰もいません。


すると、突然そこに花の妖精たちが現れ、少女が花の精霊王だと教えられます。瀕死の彼女を助けるには代償がいると言われ、助けることに必死な少年は、妖精の要求通りに彼女との記憶全てと答えてしまいます。


記憶と引き換えに少女を助けた少年は、その場で気を失い、気がつくと自分の部屋にいました。実は貴族である少年は、使用人たちに1人で屋敷の近くで倒れていて心配したと言われ、足が治るまでしばらく外出禁止と言われました。


その後、少年は少女のことを思い出すことはなく、万全に体調を整えてから王都へ戻り、貴族の生活に戻りました。







一方で、少年との記憶と引き換えに治療された少女は、長い眠りから目を覚ますと彼を探します。

しかし、もう少年は何カ月も前に王都に向かった後で、会うことは叶いませんでした。




それから何年か過ぎ、少年だった彼が成長して学園への入学を迎えた年、2人はついに再会します。


しかし、彼は覚えておらず、急に話しかけてくる知らない女の子を不審に思うばかり。そこへ、彼が小さい頃から仲良くしているという可愛らしい令嬢が現れます。


令嬢は、彼女に嫌そうな顔を一瞬見せたが、直ぐに柔らかな表情になり、

「人違いですわ。だって小さい頃から一緒にいるけどあなたなんて一度も見たことないもの」

と言い、彼女のことを否定します。



その後、彼女が学園内で彼と2人で偶然会った際、

「僕は小さい頃の記憶が事故でないんだ。だから君のことはわからないし、記憶がない時もあの子ががいたと言ってたから多分人違いだと思う。ごめんね」

と彼に謝罪されます。


彼女は彼に会うために必死で頑張ってきたのに覚えていないと言われ、人違いとまで否定されてしまった事で心が傷つき、そしてその頃から少しずつ体に異変を感じていました。







令嬢は彼が彼女に人違いだと告げるところを遠くから見て心の中で喜んでいました。


何せ、自分が彼と出会ったのは彼が事故から王都に戻ってきた後だったからです。

たまたま大きなお茶会で彼を見かけて一目惚れして近づき、彼について調べ、彼の記憶がないことを知って彼を自分のものにしようと嘘をついたのです。


もちろん彼の家の人間は彼が事故に遭うまでに女の子と出会っていたことは知っていましたが、名前やどんな子かまでは詳しく知らなかったようで、それは自分だと嘘をついて彼とは相思相愛で、将来結婚の約束をしたとまで話を作り、彼と婚約まで頑張ったのです。



それなのに学園に入った時に本物が現れたことで、令嬢は焦っていました。

何がきっかけで彼の記憶が蘇るかわからなかったからです。

しかし、彼は彼女との記憶を否定し、自分ではないとまで本人に告げました。あとは彼が思い出す前に彼女が彼の元から去って別の人の元に行くだけだ。と、この時はそう思ってニヤニヤしていました。

まさか、あんなことになるなんて思いもせず……。








彼女は自分だけが記憶を持っていて彼の中に完全に自分との記憶がない事、人違いであるときっぱり言われた事などを振り返ると、彼女自身少し思い当たることがあり、突然学園を次の日に去ると、故郷の街へ帰りました。


街へ帰るとすぐさま両親の元へ行き、自分は何者なのかと問いただしました。


両親は顔を見合わせ、何か王都であったのかと聞きました。


彼女は彼と再会したが全く覚えていない、記憶がない頃に会っていたのは別の子で自分ではないと言われたと言いました。

夫婦はそれを聞いてどうしたいかと彼女に聞きました。


自分だけが覚えていて他の人からは覚えていないと言われて帰ってきた彼女が、家を出る時よりガリガリに痩せ細って突然帰ってきたからです。


それを聞いた彼女は深呼吸すると

「自分は両親と髪も目の色も何もかも似ていない。捨て子でもないと聞いて今まで生きてきた。生きてきて一度も病気や怪我をしたことがない私が今回急に骸骨のように痩せてきた。私は一体何者なのか知りたい」

と彼女は言いました。


夫婦はじっと彼女を見つめたあと、何かを決意した顔になり、街の奥にある花畑に向かおうと言いました。


3人が花畑に向かうと、彼女の髪と同じ色の薄い紫色の花が咲き誇っていました。ここの花畑は季節関係なく年中咲いており、よく彼女もここで彼と遊んでいたと思い出します。3人は花畑の中心に向かって歩き、中央に咲いている他の花たちと同じ色にも関わらず一際輝く一輪の花の前で止まると、無言だった男が静かに話し出しました。




「自分の正体を知りたいと言ったね。……お前は、いや、あなた様の正体はここの花たちを守る花の精霊王でおられます。精霊王様は我々人間に興味を持ち、人の生活をしてみたいと私たちに仰りました。

そこで我々の子供となって生活をすることになったのです。しかし、人間として生きることになった時、精霊王様は自分が精霊王であるという記憶がありませんでした。記憶がなくても楽しそうに生活をする精霊王様を我々は我が子のように可愛がり、楽しく生活していました。……あの事故の日までは」


そして、男は一息つくと再び話し出しました。


「あの日、精霊王様が王都から遊びに来ていた貴族の少年とお祭りに行くことは知っていました。しかし急に街に魔獣が現れ、逃げ遅れた精霊王様が怪我を負ったと花の妖精たちが教えてくれたのです。

それを聞いてすぐに向かいました。そこには血だらけになった精霊王様と少年がいました。

そして、ちょうど彼があなたを助けるために代償を払ったところでした。代償を受け入れた妖精は、彼を眠らせ、人目につく場所に運ぶと、私に言ったのです。王は怪我を負い瀕死になったと。治療のため少年から王と過ごした記憶を代償に元に戻した。ただ、生命力を元の状態に戻すためには花畑に行かないといけない。そこでしばらく眠らせないといけないと。


そして精霊王様はこの場所で3ヶ月ほど眠られておりました」


男が話し終えると、辺りは静寂に包まれました。

数分後、今度は女が口を開きました。


「大体正体が分かったと思いますが、あなた様の体は花から作られています。花が生きるために水が必要なように、必要な養分として必要だったのが彼の記憶でした。その彼から完全に存在が消されてしまったため養分が得られなくなり、痩せてしまっていると思われます」


男たちから話を聞いた彼女は、彼女の元となる花にそっと近づいて優しく花に触れると、

「ああ、そうだった。思い出した」

と言いました。


彼女はそして夫婦と向き合うとこう告げました。


「記憶を思い出させてくれてありがとう。このまま干からびて思い出すことなく一度最悪の終わりを迎えるところだったわ。あなたたちのもとで貴方たちの子供として生きられて本当に嬉しかったし幸せだったわ。記憶が戻ったからにはもうこの身体で過ごすことは禁じられているの。最後に貴方たちに会えてよかった。ありがとう」


そう彼女が言うと夫婦は、こちらこそありがとうございました。また会いたいです。こんな別れは辛いですと涙を流して別れを惜しみました。



最後に3人で抱きしめ合うと、彼女は花に再び触れました。すると彼女は意識を失ったように倒れ、どこからともなく現れたガラスのような棺に彼女が閉じ込められました。そして、妖精たちが集まると幸せそうに眠った彼女を花畑の中心に眠るように置いたのでした。


夫婦は最後までじっと見届けると「また来ます」と言って彼女のそばを泣きながら離れました。





一方、彼女が急に学園を去ってから何か違和感を感じ始めた彼。そして精霊王が眠りについた時に代償として失っていた記憶を思い出したのでした。


それは突然でした。いつも通りに授業を受けていると、突然幼い頃の思い出が蘇り、令嬢ではない子と過ごしていた自分の記憶が蘇ってきたのです。その子はどう見ても学園を去ったあの女の子であり、今になって彼はようやく過ちに気がついたのでした。




fin


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