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妖しのハンター  作者: 小笠原慎二
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生徒達の引率

前回のあらすじ~

ホームに戻ってきたはいいものの、やはり戦闘狂の血が騒ぐのかじっとしていられなかった。

また行こうかと思ったら「生徒達の引率して♡」と頼まれてしまった。

基本の「き」の荷物チェックを済ませる。学校でも習う必要最低限の荷物と言う奴だ。まあ3日間だけなのだし、今回は卵付きなのでそこまで深い場所までは行かないし、基本装備だけで大丈夫だろう。

いちいちバッグから出すのも大変なので、メモだけで確認した。入ってなかったら知りません。自己責任です。


「じゃ、行こうか。手続きも済ませなけりゃならないし」


手荷物、装備のチェックを終え、ゾロゾロと受け付けに向かう。ちなみに全員黒スーツの戦闘服を来ている。肘や腹、胸などの急所に補強する物が付いている。


(天の声:イメージはフ○メタやガ○ツと行った所です)


腰に短銃と、魔力を込めると剣になる柄(ソードと呼ぶ)を装備。肩には長銃。戦闘慣れしていないと近接戦は難しいので、主に長銃が使われる。弾はない。弾の代わりになるのが魔力。つまり自分の魔力が弾代わり。

毎度1メモリでも空になったら魔力を吸われるなんてことがあるとすぐにへばってしまうので、きちんと安全機能が付いている。緊急時などはそれを外してオートで魔力補充されることもある。しかし魔力が尽きても倒れてしまうので、本当に緊急時しかやらない。

受け付けに行くとヒュルリィちゃんがいてくれた。出発前の癒やしだ。


「チェック終わったよ。手続きは?」

「すでに終えていますよ。なのですぐに出発出来ます」

「あんがと。んじゃ、準備は良いな? もう一度トイレに行くなら今が最後だぞ」


それを聞いて女性達が動き出した。外に出れば嫌でもその辺りですることになる。綺麗なトイレは帰ってくるまでおあずけである。

女性陣が帰ってくるまで少し待ち、揃った所で出発門へと向かう。


「いってらっしゃいませ」


ヒュルリィちゃんが頭を下げて見送ってくれた。
















出発の門と帰ってくる門は場所が違うのでそれも説明する。なだらなか上りになっている通路を進んでいくと、じきに道は平らになる。その間にも帰ってくる時のような一定の間隔で、分厚い扉が開いたり閉まったりする。これも一応侵入者対策だ。侵入者と言っても人間じゃなくて魔物だけどね。


「チーム分けは出来てるんだよね?」


すぐ後ろを歩いていた男の子に聞く。確か名前はトニーレオンとか言ってたな。


「あ、はい。男女混成のチームです」


見るからに女性が多いものね。これで混成となると、男1に女2の混成のチームになるんだろうな。ハーレムかよ。


「今からチームに分かれておいて。最後の扉が開いた途端に戦闘ってことも無きにしも非ずだから」

「は、はい!」


若干遠足気分が抜けていないようだけど、まあ扉を開けて戦闘なんて滅多にないから平気だとは思う。

街、ホームの外壁からおよそ5㎞圏内は草原になっていて見晴らしが良い。その先からポツポツと木が生え始め、やがて林になり森になっていく。

草原にいるのは弱い魔物ばかりだ。ホームの壁には魔物除けの対策がされているが、弱い魔物は良い練習になるので弱いものには効かないようになっている。最初はそこでスリーマンセルの練習だな。学校で習うことと実践は必ずしも同じものでは無いからな。

最後の扉の前に来る。ここは自動では開かない。


「ここからはすでにソナーを使えよ」


ソナーとは探索の魔法。簡単に言えば魔力を薄く周りに広げて周りの気配を探る魔法だ。それに変わる技術も開発されたが、直の感覚で知ることが出来るソナーの方が使い勝手が良いと、ソナーの魔法だけは必修科目となっている。

今回は俺もソナーを使う。いつもは妖しの術で探ってるんだけどな。そっちの方が感度がいいのよ。


「ここな」


壁に赤いセンサーが埋め込まれている所へ近づき、手を翳す。念の為腰の短銃に手を掛けておく。何が起こるか分からないからな。

特に問題も無く扉は開き、外から何かが襲ってくる事もなかった。時々だが感知できない魔物がいたりすることもある。まあそうなると高位になるから壁の近くにはいないと思うが。

周りを探っても近場に魔物の気配はない。


「よし、出るぞ」


壁の外へと足を踏み出した。


















自然の風が吹く。自然の緑の臭いがする。そして土の臭いがする。

思わず深呼吸。いや、ホームの壁の中でも気温湿度は丁度良い感じに保たれて、時に風もそよっと吹いていたりもするのではあるが、自然のものには敵わない。


「これが外…」

「なんか臭くない?」

「うわ、広…」


それぞれに感想を言い合う卵達。いや、ちゃんと生徒達と呼ぶべきか。


「よし、じゃあまずは、この草原で習ったことの実践だ。ソナーで魔物を見付けて、3人一組で何か1体狩ってみようか」

「「「はい!!」」」


みんな良いお返事。なんだかんだ皆狩りは好きなのだ。

余り離れるわけにもいかないので、1チームがやっている間は皆でそれを見学。3チームしかないのですぐに終わる。

1チームずつネズミのような魔物「囓る者」を仕留めた。


「大体の動きは分かったか?」

「「「はい!」」」


索敵を皆でしつつ、2人はすぐに戦闘に移れるように前方と後方に銃を構えつつ歩く。1人は索敵漏れがないかを確認しつつ、援護に入れるようにスタンバイ。これが基本の「き」。

「囓る者」ごときにそこまでの警戒をする必要は無いが、何事も練習が肝心です。


「んじゃ、次は銃じゃなくて、ソードを使って、1人1体狩ってみようか」

「「「はい!」」」


何人かの女子が嫌そうな顔になったが、これは必要な事なのよ。もしもの時にソードを使って反撃できないと、まさに命に関わるからね。

スリーマンセルで行動し、役割を交代しつつ全員が何かしらの獲物を狩った。「齧る者」と、同じくらい草原にいるウサギのような魔物「跳ねる者」。これでそれぞれのバッグに最低1体の魔物が入ったことになる。


「よし、それじゃあ移動しながら狩りをしよう。皆は周りを警戒しながら、俺の後についてくるように」

「「「はい!」」」


3チームが先程のような隊列を組み、俺の後に続く。俺も使い慣れないソナーを使いつつ、どこまで潜って良いものかと思案するのだった。


















森の浅瀬の辺りをウロウロすることにした。あまりホームから離れても初心者には心理的にも辛いだろうし。

浅瀬辺りなら「囓る物」「跳ねる者」「巻き付く者」「血吸い」そして有名な「子鬼」などの低位の魔物がいる。「子鬼」とはつまりゴブリンだ。こいつの肉は美味くないうえに、人型の魔物なので人気がない。いや、魔物自体みんな好きじゃないけどね。

ちなみに「巻き付く者」は蛇。「血吸い」は蚊の魔物だ。蚊と言っても30㎝くらいでかい奴だからちょっと怖いよ。


「「子鬼」は出来るだけ狩れよ。繁殖力が強い上に群れで出るとそこそこ手強い。襲われたらまあ、女性は色々覚悟しておいた方がいいかな…」

「やだ! そんなこと言う前に助けて下さいよ!」


金髪フワ髪の、確かアリーフェアと言った女の子が叫ぶ。


「群れで来られると俺でも厳しい。助ける余裕なんてないよ。自分の身は自分で守れ」

「え~、クーパーさん優しくな~い」

「そ、俺は優しくありません」


変な期待されても面倒だからね。それでも女の子は寄ってくるんだから、イケメンはお得だ。


「俺は助けに行くよ!」

「ありがとうダルシュ」


同じチームのダルシュという男はアリーフェアにデレデレしている。まあ顔だけは可愛いからだろうな。

1日目、無事に終わる。特に怪我をする者もなく、成果も順調。交代で見張りをしつつ、支給されたテントで眠った。

2日目もそんな調子で特に何事もなく終わった。


「なんだ、楽勝じゃん」

「思ったより大変じゃないわね」

「結構量も獲れたんじゃない?」


そんな事を言い合いながら、見張りを続ける生徒達。まあ浅瀬しか探索してないからね。

そんなこんなで3日目。


「荷物まとめたかー?」

「「「は~い」」」


今日で生徒達のお守りも終わり。無事に連れて帰ったら仕事も終わり。その後また1人で1日で良いから狩りに行こうと考えていた。

だって、うるさいんだもんこいつら。碌な獲物にも会えないし、欲求不満だよ。

再びスリーマンセルの形を取ってホームへと向かう。若干慣れから来る気の緩みが出ているが、特に強い魔物もいないし、まあ良いだろう。


「・・・・・・」


俺のソナーの探知範囲に、それが現われた。何食わぬ顔をしてそいつの接近を待つ。

木立の間からそいつが見え隠れし始める。


「よう、シアン」

「…クロ…」


平静を装っているのだが顔が引き攣ってしまう。

そこには人型の姿、つまりは俺にそっくりな姿になった、クロが立っていた。

この顔をみると、血の繋がりというものをまじまじと感じてしまう…。


「え? 先生そっくり…」

「誰?」


不安そうな声が後ろから聞こえてくる。

そりゃそうだ。こんな森の中から知らない人がやって来たら怪しい。


「ああ、この人は俺の親戚でクロってんだ。俺と同じソロ活動してるけど、それほど成果を上げられてないから知られていないと思うけど」


みんながへ~という顔をする。上位は名前が知られるけれど、下位の方はあまり人に知られることはない。


「シアン、ちと話しがあるのだがの」

「分かった。ちょっとみんな待っててくれよな」


クロと共にみんなから離れる。


「おい、こんな所にどういうつもりだよ」


聞こえないように低い声で睨み付ける。こいつが出てくると碌な事がない。しかも人の姿にまでなって。裏道使ってホームから出て来やがったな。


「うむ。お主に伝えねばならぬ事が出来ての」


飄々とクロが喋る。若干だがクロの方が目線が高いのが気になる。背の高さだって思いのままなのだったら、俺と同じくらいでいいじゃないか。くそう。


「なんだよ?」

「うむ。我が輩の予知に引っ掛かったの。もうすぐあの街は「全ての頂」に襲われる」

「・・・・・・はあ?」


間抜けた声が出た。


「なんだ? 我が輩の力を疑うのかの? まったくこんな時も生意気…」

「いや違うそうじゃなくて!」


大きくなりそうになった声を絞る。


「「全ての頂」てなんだよ「全ての頂」て!」


「全ての頂」。いわゆるドラゴンだ。その存在はまさに天災。

何十年かに1度、ホームを襲いに来る悪魔として恐れられている。こいつが来ると人々は逃げる以外に選択肢を持てない。なにせ人の魔法などへのかっぱ。数々の改良を重ねられた兵器もこいつの体に傷を付けられたら良い方。しかし傷を付けたらまあ怒りだしてそのまま焼け野原、なんてこともあったらしい。

こいつがホームに来る理由は、捕食。つまり人間を食べに来るのだ。研究者達は繁殖の為の行動ではないかと言っているが、それが分かった所で人にどうにかする術はない。

草原の真ん中に位置する、数多の人々が暮らすホーム。ドラゴンから見たら格好の生簀のようなものなのだろうな。


「おふくろ達は…」

「我が輩がすでに他の街へ旅行へ出したの。「全ての頂」なんぞと言ってみろ。嬉々としてソードを構えて出ばるぞ彼奴あやつ

「そこだけは礼を言う」


うん、ソードを振り回してる姿が目に浮かぶよ。

幼い頃みっちり俺に稽古付けてくれてた時の光景が浮かんでくる。あの姿こそ鬼婆と言って過言ではない気がする。


「我が輩の予知が外れることはないことはお主も知っておるの? 「全ての頂」が来るのはすでに確定事項だの。故に、どうする? 彼奴あやつらを置いて逃げるなら、手を貸すぞ?」


顎で生徒達を指した。

裏道を使って逃げると言うことだろう。あそこは人も入れないわけではないが、あの人数を連れて行くには難しい。


「ちょっとまて…、さすがに置いて行くわけには…」


優しくないと言ってもそこまで冷たい人間じゃない。


「そう言うとは思ったの。ま、影ながら我が輩も手を貸す。出来る所までやってみろ」


そう言って肩に手を置くと、クロは背を向けて歩き出した。


「ではの、紫闇・・。何かあったら呼べ」

「・・・・・・」


俺のその名を呼ぶんじゃねーよ。


お読みいただきありがとうございます。


書いていて何か変だなと思って前を読み返したら間違っていたり、直し忘れていたり。

これからも加筆修正が入ると思いますが、なが~い目で温かく見守って下さい。

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