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妖しのハンター  作者: 小笠原慎二
3/28

再びハンターのお仕事へ

前回のあらすじ~

クロの血を引く者は生涯1人しか子供を持てないという呪いを受けているらしい。

自慢じゃないが、これまで女に困ったことはない。自慢じゃないが。自慢じゃないが!(フンスー!)

顔はモデル並、背は高く、魔力量も多いのでいわゆる高収入というやつである。となれば、数多の女性に群がられることとなる。ついでに言えば、ハンター用品のモデルなども時折受けたりするのでそこそこ顔も知られている。となれば、引く手数多となり、声を掛ければ引っ掛からない女性などいるわけがない。

友人メールも半数以上は女性からのお誘いだった。もちろん全部お受けする。ハンター業の後は無性に人肌が恋しくなるもので。

誰か1人決めたらどうだと同性の友人にもしつこく言われたりはするが(僻みで)、もちろんだがそんな気はない。俺は子供を持つ気は全くないのだから。

有り難い事に血の呪いのおかげで子供が作りづらい体であるらしい。そのおかげでまあ色々色々、である。


高量納力者は結婚はあまりしないのが一般的であったりする。女性は自分の側に子供を置きたいと考える者が多いが、男性は少数。もちろん結婚という形を取って側に置くことをしないわけではないが、男の場合、養えるならば何人でもOKみたいなところがある。つまりあれだ。一夫多妻制みたいなものだ。ただし、女性も1人の男に縛られるのは嫌だと子供を産んでも結婚はせず、自由恋愛を楽しむ者も多い。生まれてから少しして埋め込まれるチップによってDNA判定なども速やかに出来るので、誰が誰の子供かすぐに分かる。なので「あなたの子よ!」という偽りは全く出来ない世界である。男にも優しい世界だね。その分男にも作るなら作るである程度覚悟は必要になってくるが。

とまあそんな説明は置いといて、つまりはしばらくそんな友人(・・)達ととても楽しい時間を過ごしたのである。


が。


「やっぱつまらん」


こうなるのだ。

あれだよね。人ってある程度ストレスがないといけないとかいう、あれだよね。

高量納力者はハンターという仕事があるので、決まった仕事を持っている者は少ない。皆ハンターの時以外は何かしら遊んでいるものだ。それで経済を動かしているわけだし。

最低3日間の命がけの仕事をしなければならないのだ。それに毎日魔力を街に納力しているわけだし、遊んでいても文句はないはずだ。

だけど、やはり遊んでいると、時折何かが足りないと思う時がある。そこで奮起して専門ハンターになるのは極一部だけれども。俺の場合は母親の血と、妖の血のせいなのかもな。

帰って来てから遊んだりだべったりゴロゴロしたりと、何もしないでいたが、飽きた。


「やっぱだめだ…」


外へ行きたい。森へ行きたい。狩りをしたい…。とにかくあの興奮を味わいたい…。いつも緊張しっぱなしで気の休む暇もないあの劣悪な環境で過ごす時間。何もしないとあの時間が無性に恋しくなってくるのがとても不思議だ。

一応バーチャルで狩りのゲームが出来る施設などもあるけれど、あんなちゃちい(・・・)ものとは全く違うのだ。ちなみの俺がそこでプレイしたら、歴代最高点を叩き出してしまった。未だにその記録は破られていないらしい。


「また行くのかの」


日向で微睡んでいた黒猫がじとりとした目を向けて来た。


「まったく、カレンといいお前といい、何故そんなにも命を粗末にしようとするのか。分からんのう」


ふんす~とこれ見よがしに盛大な溜息を吐きやがる。


「母さんは知らんぞ。クソジジイが叩き込んだんじゃねーのかよ」


クソジジイとはこの黒猫の呼び名である。父方母方の両祖父母には「くそ」なんてつけません。


「あれは何故か昔から好戦的だったの…。誰に似たのやら…」


両方の祖父祖母とも片方ずつすでに亡くなっている。昔揃って会ったことがあったが、父方はもちろん、母方も穏やかな人達だった。何故母のような娘が出来上がったのか、母方も首を傾げていたな。

母の現役時代の2つ名は「紅剣の妖姫」だった。「姫」ではなく本当は「鬼」だと裏では噂されていたとかなんとか。

母親は銃があるのに剣を愛用するというまた変わったハンターだった。しかも今では効率が悪いので殆ど使われない魔法を使い、剣に炎を纏わせて相手を切るという感じだったらしい。俺がハンターになる前に引退したので俺は知らないけれど。おかげで俺は影で「紅剣の息子」と呼ばれているみたいだが…。変な2つ名よりはましなのか?!

俺は剣は滅多に使わないのに…。母親に仕込まれたけどね。銃の方が便利じゃん。


ちなみに言うと、この世界で言う剣は鉄で出来たものでは無い。いわゆるラ○トセ○バー的なやつである。柄、というか持ち手の部分だけが有り、そこに魔力を流すと剣先が出てくるという便利アイテムである。魔力を流す量によって小型ナイフにもなる。母親はその剣を斬馬刀みたいな大剣にして使っていたというが…。


怖。


「さぁ~てと、ダラダラしたし、お仕事行って来るかな~」

「猫のように人間も寝て過ごせば良いものを」

「あ、にゅ~るは止めとくからな」

「やめい! 我が輩の毎日の楽しみを!」

「先生にも言われたろ。若干太り気味って。妖が太り気味って…いいのかよ」

「良いではないのかの! 猫は少しふくよかなほうが可愛いとテレビでも言っていたろうが!」

「健康第一」

「お主が言うなー!」


ま、俺もあまり健康的な生活はしてないけどね。

クロが飛び起きて足元で騒ぎ出すけれど無視。健康に関しては母親からも「そこは厳しくて良いからね♡」と念を押されているので。よく分かっていらっしゃるお母様である。

猫のご飯もおやつもトイレ掃除も、もちろんだが全部自動でやってくれるので、1週間だか1ヶ月だか留守にしても全く問題無いのである。文明の利器様様。


「せめてマグロ祭りを…」


まだしがみついてくるクロ。いや、マグロ祭りってなんだよ。


「魚ばっかでも健康に悪いんだろ」

「そこは猫だから大丈夫だろうがの!」

「母さんに聞いてみっか」

「やめい! カレンには聞くなー!」


クロも母親は苦手らしい。まあ、気持ちは分からんでもない。


「食べたかったら運動するんだな。ほれ、猫用のマシンだってあるんだからな」


と部屋の隅にある猫用のランニングマシンを指す。滅多に乗らないし、乗っても寝てるだけなんだけど。


「ぬぐう…」

「また2、3日で戻るから。長くても5日な。それまでは少し筋力トレーニングでもしておくんだな」

「早う帰って来るのだの! そして今度はもっと美味しいおやつを注文してやるのだの!」

「また勝手に注文するなよ? 里帰りしたいか?」

「ぬぐう…」


里帰りとは実家に帰る事であるが。そんなに嫌か。


「ちゃんと良い子(・・・)にしてるんだぜ。ク・ロ♪」

「くぅ…。この、馬鹿子孫めが―――!」


何を言われようと、猫に言われたことなど痛くも痒くもないのであった。

1人でお留守番は寂しいんじゃないかって? いいのいいの。一応猫用のドアもあって、いつでも散歩に行けるようになっているし、その気になればこいつは裏道を使っていつでも何処でも行けるからね。

時に俺の姿になって街中を歩いている事もあるらしい。

ハンターに行っていたはずなのに街中にいたと友人に言われたことがあり、発覚。やってもいいが知り合いには絶対に見られないようにと言い含めたけれど、何処まで分かっているのやら。結局は「猫」だしな!















「ちょっと待って。俺、やらないって言ってたよね?」

「すみませんクーパーさん。どうしても人が足りなくて…」

「他にいるでしょ? 6位とか、もっと下でも10位とかさぁ」

「生憎皆さん出払ってしまっているんです。担当の方も代わりの方も腰痛や急なご不幸でこちらにこれなくなってしまいまして。どうしても空いているのがクーパーさんしかいないのです」

「むぅ~…」


ハンター受付の所で出発の手続きをしていたら、呼び止められた。そして急な話だが引率をしてくれないかと言われた。

俺は今までにも言ってきたが、人と戦い方が違う。所々魔法ではなく、妖しの術を使う。それが単独行動している理由だし、そも教えるわけにもいかない方法である。ついでに見られるわけにもいかない。

学校を卒業間近の初めて壁の外に出る、まさに卵から出て来ようとしている新人の引率を頼まれてしまった。しかし俺は教えるに向かない。それこそ基本の「き」くらいしか教えられないのである。それまでに培ってきた技とか、ベテランならば教えることも出来るはずなのだが、俺には出来ない。

たまたま今回、引率するはずだったベテランハンター達が色々な所用で来られなくなってしまったらしい。それでたまたまここに来た俺が呼ばれたのだが。他のハンター達も生憎出払っているとか。


「俺、本当に教えるの下手よ? 本当にそれでもいいの?」

「今回は外に出て何をするかを教えるだけですから。日程も3日ですし。それで十分ですよ」


ヒュルリィちゃんがにっこり微笑む。絶対俺対策でヒュルリィちゃんを持って来やがったろう、受付め。俺がヒュルリィちゃんに強く言えない事を知っていて。男だったら問答無用で無視して行くところだが、ヒュルリィちゃんの頼みとあれば断れない。


「ぬぅ~、分かったよ。本当に基本教えるだけにすっからね! 俺知らないからね!」

「ありがとうございます! クーパーさん!」


そのヒュルリィちゃんの笑顔、ずるい。

その後、案内されて卵ちゃん達が待つ待機所へと向かった。

扉がスッと開くと、そこには男女合わせて9人が思い思いの格好で待っていた。


「皆さん、お待たせ致しました。今回急な用事で予定していたリンクワットさんは来られなくなってしまいましたが、なんとあの有名なクーパーさんが代わりを引き受けて下さいました!」


女子6人。そのほぼ全員が眼を輝かせる。俺売れてる。男子は憧れ半分やっかみ半分と行った所か。上位10位以内とは言え、下から数えた方が早い所にいる俺では微妙なところなのかもしれない。それと、顔が良いせいかもな。早くも女子全員の心を掴んでしまったし。

女子達はヒソヒソと、小さいながらも黄色い声を上げている。学校卒業ということは皆18歳くらい。良いお年頃。それ位の子は特に俺みたいないい男には眼が無いものね~。あ~また友達が増えそう。


「ええと、知ってる人が多いみたいだけど、シアン・クーパーです。3日間よろしく。ただし、俺、教えるのは下手くそなので、そこんとこよろしく」


とにっこり。

あ、女子の視線の温度が若干下がった。いやでもここで言っておかないと、後で分かるとこれ以上に評価が下がるからね。先に言ったもん勝ち。


「では皆さん、携帯用品のチェックを済ませたら、出発ロビーまでお越し下さい」


ヒュルリィちゃんが頭を下げ、部屋から出て行く。その後から俺も部屋から出て行こうとした。


「あ、クーパーさんやっぱり。荷物チェックから教えなければ駄目なんですよ。さ、部屋に戻って一緒にチェックしてあげて下さい」


とヒュルリィちゃんに回れ右をされた。クスン。


「ええ? 持ってくもんてなんだっけ?」

「いつもクーパーさんが持って行っている物を一緒に確認すればいいだけですよ。では」


部屋の中に送り返され、ヒュルリィちゃんはにっこり笑顔で立ち去った。


「ええええぇ…」


何持って行くんだっけ?

実を言うと、俺は裏道を利用して自分の空間を持っている。これも秘密事項。なので、消耗品などちょっと余計にそちらに保管していたりするんだよね。足りない時はそっちから補充したりなんかして…。


(いやいや、いつも必要最低限はチェックしてるんだし)


軽く頭を振って卵ちゃん達に振り向き、笑いかける。


「さて、じゃあチェックを始めようか」


女の子達が顔を赤らめた。

やっぱり効くなぁ、俺の笑顔。


お読みいただきありがとうございます!


新しい猫トイレ用意したのに、猫が入ってくれません。クスン。

どうしたらいいのかな?考え中。

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