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妖しのハンター  作者: 小笠原慎二
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血の呪い

前回のあらすじ~

「俺、主人公シアン・クーパー! よろしくな!」

動物を飼っている人間ならば多分1度は思うだろうこと。


「飼っている動物と話しが出来たらいいのに!」


教えてやりたい。


「実際はそんなに良いもんじゃない! 動物なんて喋らない方が可愛い!」


と。






「おい、我が輩は今日頑張ったのだから、高級猫缶を所望するのだの。あのベリーキャットとかいう猫缶、あれストックがあったろうの」

「やかましい」

「なんだと! 我が輩頑張って(・・・・)やった(・・・)のだぞ! もっと年寄りを労れなのだの!」

「やかましい! 2千歳越え老人! いや老猫! 労って欲しけりゃそれなりに可愛くしろ!」

「なんだと! 我が輩はほれ、この通りいつでもプリチィなのだの!」

「ぃやっかましゃー!!」


端で聞いてれば何を器用に独り言を言っているのかと首を傾げていただろうが、これはしっかり2人、いや1人と1匹の会話なのだった。

動物病院ではしおらしく普通の猫を演じていたクロであったが、帰って来たらばこの体たらく。お気づきとは思うがこいつは普通の猫ではない。昔の日本の言い方で「猫又」という妖怪らしい。

今までにも31階の窓から何度放り投げてやろうかと思ったことか。実際に放り投げても空中闊歩して帰ってくるだろうから意味が無いからやらないけど。

黙って座っていればただの(見かけだけは)可愛い黒猫なのだが、口を開くとやれ高級猫缶をよこせだのもっと美味い飯食わせろだのと我が儘ばかり。ブラッシング嫌いでシャワーも濡れたまま逃げ出しやがる、まさに小悪魔。部屋中をビショビショにされたことも幾数度。飼育放棄してやりたいというか、母親の元へ送り返したいのだけれど、当の母親からは、


「きちんと面倒見ないと磨り潰すわよ♡」


と怖い笑顔で押しつけられたのでそれも叶わない。

いやまあ、俺が今こうして活躍できているのもこいつがいるおかげなのもあるのではあるけれども…。


「納得いかん…」

「何をブツブツ言っとるのだの。ほれ、背を撫でさせてやろうというに」


撫でさせてやろうではなく撫でろ、だろうが。

動物病院からようやっと帰って来られて、ソファにぐでっと座りこんでいたらば、その横に座り出すクロ。こういうところ甘えん坊だなと思う。

仕方なしにその頭から背を撫でてやると気持ちよさそうな顔をする。くそう、可愛いだなんて思いたくもない。これも血の呪いなんだろうか…。


俺の血、というか、母方の一族から続く俺の血族にはある呪いがかかっている。そもその原因は目の前の黒猫なのだが。呪いと言っても死ぬとかそういうわけではなく、生涯に持てる子供は1人だけ、というなんじゃそりゃ、な呪いである。

その理由が、


「我が輩が子孫の面倒を見ると約束してしまった故にの。複数いたら追いかけられぬであろう」


ということらしい。

おかげで母方から続く一族は、ずうっとひとりっ子なのだそうだ。そういう俺もそうだけど。

その昔、魔法がちらほら使われるようになっていた頃の大昔。こいつが魂になってもストーカーし続けていたとある人物と恋仲になってしまったのだそうな。


「そんなつもりではなかったのだが…。向こうに惚れられてしまっての」


と、母親と酒の席で呟いているのを幼い時に聞いてしまった。その時に子供を授かることとなり、その時に血の呪いを掛けたのだそうだ。以来、此奴は自分の子孫を追いかけて守り続けているのだそうだ。

それもその時のお相手、つまりは俺のひいひいひいが何個か続く婆さんが、


「子供達を守ってあげてね」


と言ったかららしい。


ある種、その一言がこいつにとって呪いになっているのではないかと思えてしまう。

幾度となく黒猫に転生して一族に纏わり付き、およそ2千年もの間守り続けて来た。その時の婆さんだって2千年も縛り続けるとは思わなかっただろうな。人と妖の時間に対しての認識の差からくるものだよな。


こいつがその呪いとも言える約束から逃れるには、簡単な方法が1つある。俺が子供を残さなければ良いだけのことだ。

有り難い事に今気になる女性などはいない。というか気になる女性が出来たとしても、子供は作らないと決めている。こいつを解放してやりたいから、などと口が裂けても言えないがな!

あと俺が男だからか、それほど子供が欲しいとも思ってないしな。いなきゃいないでいいと思ってるし。母親は早く彼女作れ子供作れとうるさいけれど。


それにこいつはまたその婆さんの魂を追いかけたいと時折呟いている。


「今頃どこにおるのかの…」


などと虚空を見つめながら言われたら、こっちだってちょっと胸に来るものがある。いや、やってることはしつこいストーカーなのだけどな。俺がいるから追いかけることも出来ないらしい。

なんだかな。

子孫の存在に縛られてるって、なんだかなだよな。


その婆さんの遺伝なのか、もしくは婆さんが同じように血に呪いでもかけたのか、母方の一族は皆猫好きだ。かくいう俺も猫は好きだ。ただし、喋らない猫が飼いたい! もう喋る猫はうんざりだ!


「…うんざりだ…」

「心の声が漏れておるの」

「うぐっ」

「ふん、そう言いつつ、我が輩の腹に顔を埋めたいと思っておるくせに。ほ~れ、どうだ?我が輩の腹だぞ?」


と、これ見よがしに腹を見せてきやがる。


「その手にのるか! しっかりモフってやるわ!」

「ぐにゃあぁぁぁぁ!!」


意に反してしっかりモフってやった。

誰がやらないなどと言うか! あの腹は天国じゃ!










モフリ倒してやったらクロが逃げていった。これでしばらくは寄って来るまい。この間に来ていた残りのメールをチェックする。

ダイレクトメールはまあいつもの通り。今回は5日ほどハンターに出ていたのだが、その間に来ていた母親のメールがいちいちうざい。


「シアン~? またハンター行ってるの? 帰って来たら連絡頂戴! たまには親子水入らずで旅行にでも行きましょ!」

「シアン~? 返事がないけど、まだ帰ってないの? 来週には行きたいと思ってるんだけど~。早く連絡頂戴!」

「シアン~? いい加減にしないとママ、そろそろそっちに突撃したくなるわよ。久々稽古を付けても良いわね~。連絡待ってるわ」


背筋がぞっとする。その後来ていた親父のメールには、


「シアン、ハンターの仕事頑張っているようだね。父さんはとても誇りに思っているよ。でもね、ごめん。そろそろ母さんを抑えるのが限界です。早めに連絡下さい」


尻にしかれまくっている親父の顔が浮かぶ…。苦労掛けさせてごめん、父さん。

すぐに電話かけたら母親がハイテンションで早口でベラベラと何か喋ってきた。早すぎて聞き取れないけど、辛うじて連絡が遅いだのもう予約がいっぱいだのと文句を言われているのが分かった。なんで命がけでハンターの仕事やってるのに怒られなきゃならないんだろ? 母さんだって38歳で引退するまでやっていたろうに。


「も~、だからね、旅行に行こうと思うんだけど、シアンはいつがいい?」


と俺の意見も聞かず、行く前提で話が進んでいく。女性ってこういう所あるよね?


「いや、俺も忙しいし、少し休んだらまたハンターに行くから…」

「もう! 家族との時間をもっと大事にしなさいって言ってるでしょ!」


現役のころ一ヶ月は余裕で壁の外に出ていた人が何を言う。


「いや、ほら、俺も、友達とか、会いたいし…」

「彼女? 彼女さんとか? 出来たの? 出来たなら1度は見せに来なさいな?! ママがちゃんとシアンに釣り合う相手か見てあげるからね!」

「いや、そう言うんじゃないけど…」

「じゃあなんなのよ!」

「いや、父さんと2人で行って来なよ。家族水入らずもいいけど、ほら、父さんとラブラブするのも大事でしょう? 俺がいたら出来ないでしょ?」

「んも~う! パパとはいつもラブラブよ!」


あーはいはい。


「とにかく、俺は俺で忙しいから、父さんと2人で楽しんできてよ。それじゃ」

「あん! シアン…」


急いで電話を切った。これ以上話しをするのも聞くのも疲れる。だいたい、俺もう23歳よ?この年で親子水入らずで旅行ってどうよ? ついでに言えばもう独り立ちしてるからね?

残りの友達からのメールをチェックして、急ぎではなさそうなので明日に回す。

料理は注文すれば備え付けてある調理器から自動で作られて出てくるから問題ない。そのまま食べて、もう疲れていたのでベッドに倒れ込んだ。久々のベッドはやっぱりいい…。

微睡む意識の中、クロが左脇にやって来たのが分かった。無意識に布団を上げて入れてやったのは、猫飼いあるあるだと思う。


お読みいただきありがとうございます。


まだ手探り状態で書き始めたばかりなので、後々修正が入るかも知れません。あしからず。

今度こそ長くは、長くはならないはずです。はず、です…。

キーナを入れると3連続更新かぁ…。え?キーナを書け?たまには息抜きというものをですね…。

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