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ユリカ界  作者: 碾貽 恆晟
第1部 2つの勇者の物語
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第4章 第5話





 #side フォールティア


 ”対破王戦における条約”の会議における臨時会議は、定期会議と違い、事前の話し合いなどはあってないようなものであった。理由は定期会議であれば一年間に一回であるために、事前に話のすり合わせを行なえる。しかし、今回の臨時会議が通達されて、会議が始まるまで9廻日だけであった。


 当然、ぶっつけ本番であるこの会議に、さしもの各国の首脳は閉口し、多くの国家元首が天を仰いだ。故に、会議は紛糾し、未だ終わりの兆しすら見せないのである。


 そして、結論をいうなれば、会議は明日も行なわれることになった。内容を一言で説明するならば……『大国の説明が終わり、議長が次の議題へと移ろうとした時。ある一国の我が国も説明をさせてもらおうという言葉を発した。議長はそれに反発するも、追随する言葉が現れたため。議長が折れて、数ある小国の全てが報告をすることになった』である。


 それは、恒星ランヴォが地に沈む頃になってようやく終わった。


「定期会議でもあんな感じなのか?」


 明日に持ち越しになった会議から大使館に戻ったので食事が終わった後の時間を使って、オラリエムイに疑問に思ったことを聞いてみる。


「それはないでしょ」


「普段はどんな感じだって聞いてるんだ?」


「そりゃあ、にこやかに笑顔はりつけて会話をして、にこやかに取り決めの再確認を行なって、はいまた来年やりましょうね〜。みたいな感じでって聞いたけど?」


「それってただの牽制をし合ってるだけか?」


「そうとも言えるわね」


「それじゃあ、長引きそうだな」


「えぇ、数倍か十数倍かは知らないけど、長引くわね」


「何も起こらなきゃいいんだけどな」


「そうね」


「……余計なフラグを立てたか?(ボソッ)」


「うん? 何か言った?」


「いや、なんでもない」



 = = = = = =



 そして数日後、会議は一向に進まず膠着状態。しかし、嬉しいことに(今現在までは)余計なフラグは立たなかったようだ、ということがわかった。


 会議の最大の議題は破王と対抗するのに各国がどれだけ親密な条約を構築するかということだ。食料や武器の融通まではまだ良い。しかし、自国の抱える戦力を派遣するかどうか、またする場合は各国が派遣する最低限度の戦力はどれほどなのか、決めなければいけないものごとは山済み。されど、破王は待ってはくれない。今は鳴りを潜めてるとは言え、いつ攻勢に出るかはわかったものではない。早急に各国は(急ごしらえでも)新たな条文、条約を作ることになった。これまで、お互いに牽制をするだけという杜撰な定期会議ばかりを行っていたツケを払う羽目になっているのだ。表面上は手を握り握手をしているがもう片手ではいつでも相手を殺せるように合図の準備をしているような状態だ。早急に進む方がおかしいのかもしれないが……。


「こんなんで大丈夫か? どの国も互いの足を引っ張り合ってんぞ?」


「大国ははっきり言って静観に呈しているわ。自分たちは負けないという自信があるんでしょうね」


 オラリエムイが疑問に答えてくる。


「……うちも大国だよな」


「そうね、だけどあの大量の小国を抑えるには役不足。もちろん、やろうと思えばできると思うけど、面倒なことはやりたくないというのが本音でしょうね」


「事実やってないじゃん」


「一応、根回しはしているみたいですね」


「……そうなのか?」


「又聞きですけどね」


「どこから来た情報なのか聞きたいね」


「それは秘密ね」


「は〜い」


「聞き分けがよろしいことで」


「珍しい……」


「何がですか?」


「僕の冗談に付き合ってくれるなんて……感動しました‼︎」


「感動する点がおかしい気がするのですが」


「冗談に決まってるだろ」


「……」


「ん?」


 オラリエムイがこちらを睨んでくる。怖い。


「……泣かしてやる」


 おい、めっちゃ物騒なこと言ってきやがった。


「誠に申し訳ございませんでした」


 ここは誠心誠意、謝っておこう。


「……次はないですよ」


 まるで蛇のような眼光で持ってこちらを睨んでくるオラリエムイに再び僕は頭をたれるのだった。



_____________________________________



 #side ナタイ


「……シシリア」


「はい?」


「ここであってるんだよな?」


 その問いを聞いたシシリアは資料として渡された手元の地図を見て、再び周りを見渡しーー


「……そうみたいです」


 ーーと答える。


「本当だな」


「間違いなく」


「なんで、こんな今にも崩れそうなんだよ」


 それは、アバディの心からの叫びといっても過言ではないことだった。そう、シシリアとアバディのいる場所はスラム街。前回の首都が半壊ーー現在はスラム街以外は修復が完了しつつあるがーしたなかで、唯一被害にあわなかった場所も存在する。シシリアとアバディが立っているスラム街もそのうちの一つだ。


「知りませんよ。愚痴言ってないで入りますよ」


「わかったわかった」


「二回も言わなくていいです」


 シシリアはそのアバディが”今にも崩れそうな”と評した家の扉を叩く。そして、扉からくぐもった声が聞こえてきた。


 「暗き場所に御座す我らの主は?」


 それを聞いたシシリアは再び地図を見て、そこに書かれている合言葉を言う。


 「いっ、未だ死を知らず。人々に望みを齎す」


 扉が開く。


「久しぶりの客だな」


 そう、なかにいた男は言う。


「付いてこい」


 無愛想に男は言って歩き出す。シシリアはアバディを見る。先に行けと視線で促されたのでシシリアは溜息を吐きながらも男の後を追った。


 長い廊下、そして暗く軋んだ階段。二階に上がった後も幾つか曲がり、とある部屋の前で男が立ち止まった。


「ここだ」


 コンコン


 男が扉を叩く。


「入れ」


 ギィー


 扉が開き男が入るようにシシリアとアバディを促す。


 部屋のなかには二人の男がいた。一人は体つきの良い若い男性。もう一人は初老の男性。前者はこの部屋で最も目立つ机に肘を乗せ、こちらを見ている。後者はその若い男性の後ろに控えて立っている。


「初めまして、話は聞いています。シシリア殿とアバディ殿でいいですね?」


「はい」


「おう」


 思わずシシリアはアバディの足を踏み躙った。ガッと音がしアバディが、


「グァ」


 と奇声を発する。


 それを見た若い男は思わずといったように笑い出した。


「ははは、仲がよろしいようで」


「ゴホン、お恥ずかしい限りです」


「それでは私も名乗りましょう。フイラーミ・カータルです。どうぞ良しなに」


「……男性でその言い回し使ってる人初めて見た」


「おや、女性なら見たことが?」


「ありますが」


「それはそれは、ぜひ紹介してほしいものです」


「それより本題に入ってくれませんか?」


「ふむ、仕方がありませんね」


 フイラーミは視線を彷徨わせると、意を決したように聞いてきた。


「それで、何が聞きたいんですか?」


「オリラ帝国について」


「……なぜですか?」


「先日、首都に被害を被らせた組織の隠れ家で書類を見つけました。その中にオリラ帝国を示唆する文が」


「それで、何が聞きたいのですか?」


「オリラ帝国の密偵はこの国のどこまで食い込んでいますか?」


「そういうことですか」


 フイラーミはシシリアを試すような目を向け、手の指を組み替える。


「答えは、国家公務員には一人も存在しません」


「公務員は、ですか?」


「はい、公務員の過去は簡単に調べることができます。しかし、それ以外の人となると関係者数はごまんと増えます。さすがにその量を調べ上げることは不可能です」


「それでは、この国にもオリラ帝国の密偵はいると」


「ほぼ全ての国が密偵を他国に派遣しています。オリラ帝国が、というわけではありません」


「……なぜそのようなことに?」


「例え、告発したところで意味がないからですよ。トカゲの尻尾切り。世の中はとても無情なのです」


「それでも……」


「だから‼︎ 始末するんですよ」


 最初の声は力強くはっきりと張り上げ、後の言葉は声を控え、それでいて力強く諭すように。フイラーミの視線がシシリアを射抜く。その視線からはっきりとした意思を、自らの仕事への自負をシシリアは感じた。


「それでは、話を戻しましょうか」


 フイラーミは先ほどのことなどなかったようにニコリと笑った。



次話は5月11日(予定)です。

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