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ユリカ界  作者: 碾貽 恆晟
第1部 2つの勇者の物語
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第3章 破滅を告げるエピローグと破王対戦の始まり





 神の肉体の再生は体を構築しているのが魔素ということもあり大抵は1秒もかからない。しかし、それは通常時のことである。この通常時というのは同じ神からの攻撃もそれにあたる。唯一違うのが、神からの自らの魔素の回復を阻害する効果などを持つものである。直接関わらないことでも、回復に時間を有したり、回復ができなくなるようなことはいくつもある。そして、聖精霊神サケルはその唯一違うことに今、直面していた。幾重にも体を貫かれ続けた体はボロボロだ。再生は追いつかず、破王フィーニスが見下ろす自分の体は4分の1ほど欠けている。その中でも、聖精霊神サケルは思考を放棄することなく、破王フィーニスを睨む。


 ーーありえない。破王フィーニスの力は破壊の力だが、継続的な破壊を齎す能力ではない。しかも、破王の魔素が私の力を削いでる様子もないーー


 目の前には紫色の魔素が充満し、魔法陣が宙に描かれた空間が広がっている。破王フィーニスが魔素を使い作り出した世界は全ては破王フィーニスの思いのままだ。


「そろそろか」


 破王フィーニスの声が聖精霊神サケルの耳朶を打つ。聖精霊神サケルが見上げれば、黒い笑みをした破王フィーニスがこちらを見ている。手には黒と紫の色が混ざりあったように渦巻く手のひらに乗るほどの大きさである球体。


「そっ、それは」


「これのことか? これはな、神すら数十年間は封じ込めることのできる宝玉だよ。大量の魔素とこの世の理から外れし獣の血肉で出来ている」


 神はこの世界の法則を司ると共に、この世界から外れた法則を持つ存在である。故に、神はあらゆるものに縛られず、あらゆるものの影響を与える存在である。自らの存在自体が、影響を受けるものというのは同じ神しかありえない。そして、それは相手側の神にも言える。相手の神がわかればその受ける影響を解く、無くす、消滅させるといったことは簡単にできる。そう、簡単にできるはずなのだ。


「理外の獣、それも神の系譜に連なる存在。神獣と呼ぶには強くありすぎ、神と呼ぶには弱すぎる。この世界では中途半端な存在だが、あちらの世界では人のようによくいる存在だそうだ」


 とても嬉しそうに語る破王フィーニスはこちらを向く。


「二つの神、それも片方は異界の神の系譜。これで、邪魔者には一旦退場してもらう」


 そう言って、破王フィーニスは聖精霊神サケルの額にその宝玉を当て、押し込む。聖精霊神サケルの魔素が紫色に染まっていく。水に絵の具を垂らしたように、変色していく姿は痛ましさを覚える。


「ふふふ、ちゃんと染まりましたね」


 破王フィーニスが行なったことを簡単に言えば、聖精霊神サケルの作った魔素の肉体を自分の魔素に替え、聖精霊神サケルの本体を辿る。そして、ある魔法を発動する。


「 見つけた。”時破”」


 ”時破”とは、時を破壊するその魔法だ。蜘蛛の巣のように【神界】で砕かれた空間が生まれ、聖精霊神サケルを巻き込む。砕かれた空間が広がり、一瞬にして収束するようにして消える。後には、聖精霊神サケルが何の変哲も無くそこにいるだけだ。ただし、魂と魔素は完全に【神界】ではない時の存在しない世界に隔離されたが……。


 聖精霊神サケルの仮初めの肉体を使ってその瞬間を感知した破王フィーニスは口元を歪め笑う。その陰惨な笑顔は絶世の容姿と相まり、見た人に敬虔な心や恐れや恐怖を覚えるかもしれない。


「これで邪魔なやつを一柱、退場できたな」


 場を支配していた紫色の魔素が破王フィーニスのもとへ引くようにして戻っていく。


 そして、変わらぬ恒星ランヴォの炎の光が破王フィーニスの顔を照らす。見下ろしていた視線を上に向ける。そこにはユラマ星が見える。破王フィーニスは手を広げユラマ星を掴むような仕草をする。


「次はそっちだ」


 服の袖に刻まれた魔法陣を起動する。”転移”の阿呆が発動し、破王フィーニスは恒星ランヴォから姿を消した。



 = = = = = =



 プランテスナ大陸には広大な砂漠が存在する。そして、その砂漠において最も重要な都市はオアシスに生まれる。そして、その都市もオアシスがあったため生まれた都市だった。木々が生え、水が街中に溢れ、家々が立ち並んでいた。毎日、市が開催され、砂漠でしか手に入れられないようなものや、外国から運ばれてきた物が売買されていた。


 空には恒星ランヴォが高く上っている。そして、普段であれば街は賑わい人々の笑顔で溢れていただろう。しかし、今は人の声一つ聞こえない。風が舞う音が聞こえるだけだ。理由は一目でわかる。街がなくなっているのだ。まるで何かに潰されたかのようにあらゆる物、家々や木々一つ残らずだ。


 その潰れた家々のうち一つの上に一人の男性が座っていた。男は空を見上げて言った。


「破王様の作戦は順調に進んでるね〜」


 男はそう言い軽快に笑う。男は立ち上がると腰に手を当て胸を張る。


  ふ〜


 と一息つき、男は歩いて行った。後には潰れた街の跡があるだけだった。



第3章は終わりです。

『第4章 反撃の狼煙のプロローグ』は4月22日(予定)です。

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