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ユリカ界  作者: 碾貽 恆晟
第1部 2つの勇者の物語
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第3章 第9話





 6月5廻日、この日は歴史に刻まれ、長らくユラマ星の人々に恐怖を覚えさせる日となった。それと同時に、この日は破王対戦の幕開けとなったこととして有名になる。破王フィーニスが宣戦布告をしてから数十年間の間、鳴りを潜めていたことに人々は安堵と、明日はなにか起こるのではないかという恐怖を抱きながら日々を生きていた。


 しかし、今日この日人々は知ることになる。これまでの平和は仮初めのものでしかなかったのだということを。これからはいつ、自分の国が、街が破壊されてもおかしくないことに気づく。


 火山大陸フローギウスの港街シギアを襲った破王フィーニスが来るかもしれない。同じく、火山大陸フローギウスの魔王領とウェステル帝国とを隔てる壁を壊した”獄炎”魔王イフェスティオが”獄炎神”バネッタが現れるかもしれない。岩石大陸エダフィミネの砂丘都市キルアを滅ぼした”地”魔王キネハが滅びをもたらすかもしれない。創造大陸クレアトライ・ディミルゴのミレラル国を海に沈めた魔王シャネハのように滅ぼされるかもしれない。


 その他の大陸でも魔王の右腕とまで言われるような存在達が暴れ、都市や街は良くて半壊、普通で全壊、悪くて塵一つすら残らない有様だ。


 歴史に傷跡を残すように刻まれたその日は、もう一つ重大なことが起こっていた。それは、破王対戦が終結してから数年の時を経てから世界が知った事実であり、誰もがその事実を知った時、改めて人々は破王の残忍さを、非道さを、冷酷さを知ったのだ。



 = = = = = =



 恒星ランヴォはユラマ星の凡そ150倍を誇る恒星だ。そして、そこには【現界】で過ごすため人ほどの大きさの仮初めの姿ではあるが聖精霊神サケルが恒星ランヴォの表面に横たわるようにして漂っていた。薄く開かれた瞳は金の色で、同じ色の腰まで伸びた長い髪に、透き通るような白い肌をした20代の女性のような姿をしている聖精霊神サケルは、白の衣を羽織っている。


 聖精霊神サケルが見つめる先にはユラマ星がある。もちろん、恒星ランヴォの光が当たっている部分なので陽日の場所しか見られない。しかし、それは聖精霊神サケルを含む神々(かみがみ)との協定により定められたことである。そしてなにより、当神(?)が希望したことだ。そして、その心境はというとーー


「あぁ〜。平和っていいよね〜。だらけられる〜」


 ーー恒星ランヴォの表面温度はとても高い。それこそ、鉄など一瞬で蒸発するレベルだ。その温度に平然と住むことができ、尚且つだらけることができるなどと宣うことができることを凄いというべきか、それとも神としては出来て当たり前なので、だらけることについて文句を言うか呆れるか……。結論として、どちらにしろ神という名の理不尽の権化は今日も優雅に恒星ランヴォ(一切の肉体を持つ生物が住めない)で生活をしていた。


 その微笑はまさに神々(こうごう)しいと言うに相応しい……のだが内面では残念といってしまいたくなる。


 しかし、聖精霊神サケルは【原初の神】である。恒星ランヴォの地平線からやってくる破王を一瞬にして知覚できるその能力の高さはその性格からは考えられないが事実である。決して残念っ子などと言ってはいけない。


 聖精霊神サケルは恒星ランヴォの表面に平行になるようにして横たえていた体を起こし、聖精霊神サケルは力を解放する。魔素が空間に満ち、飽和する。金色の魔素に満たされた空間を破王がただ自らの魔素をまとい存在するだけで破壊する。


 紫色の魔素と金色の魔素が拮抗する。


「…わかってるでしょう? 私は仮初めの肉体、私を倒したところで何も意味をなさないと」


「そうですね。それは十分にわかっています。しかし、私の目的はあなたを倒すことではないのです」


「……どう言う意味ですか?」


「すぐにわかります」


「話す気はないということですか……」


 聖精霊神サケルの問いに、破王は返答の代わりに魔法を放つ。放たれたのは”破”属性の力を込めただけの魔素だが、それは相手に牽制をするという目的を十全に果たす。そして、始まるのは双方一歩も引かぬ戦い。魔法が乱舞し恒星ランヴォの表面にいくつもの被害を与えていく。


 魔法とは魔素を使った全ての技術の総称だ。そして、神の本来の肉体は全て魔素で構成されている。ゆえに神は魔法そのものとも言える。もちろん、人の”魂”というのも魔素で構成されているため魂は魔法と言えるが、神は魔素そのものが肉体であり、人は魔素の魂を持ち肉体を魔素で制御しているというのが近いだろう。


 だからこそ、神々の戦いは魔素をどれだけ効率的に使えるかということが肝なのだ。自分の魔素を守り、相手の魔素を削ぐ。それが神と神との戦いだ。


 破王フィーニスは破神の眷属神であり本体、聖精霊神サケルは仮初めの肉体。どちらも、互いに相手を滅ぼすことは不可能。破王フィーニスは聖精霊神サケルの本体の場所を知らないため、聖精霊神サケルは【現界】での肉体では本体を持つ破王フィーニスを倒す力を持っていないため。


 二柱の戦いは膠着したように思えた。



 = = = = = =



 最初、攻勢にでたのは聖精霊神サケルだ。破王フィーニスの周りの空間に魔素を満たし、閉じ込める。そして、その魔素を使って破王フィーニスの魔素の防御を壊し、攻撃をする。


「私があなたと戦うのを忌避してこの肉体をなくすなんてすると思ったの? 私はあなたを足止めすることなら簡単にできるのよ」


 ”聖”属性を帯びた魔素で破王フィーニスの身体中を穴だらけにしながら聖精霊神サケルはそう宣いーー胸を貫かれた。目の前には体を穴だらけにした破王フィーニス、後ろには無傷で聖精霊神サケルの体を右手で貫いている。


 神の肉体は仮初めとは言え魔素でできているため聖精霊神を貫いた破王フィーニスの手は血に濡れていない。しかし、破王フィーニスの手は紫色の魔素を纏っている。本来であれば傷は簡単に塞がる。しかし、今回の傷は眷属神とは言え神に付けられた傷だ。しかも、破壊の属性を持つ神。破壊で生まれた傷を治すことは同じ神でも(それも仮初めの体で)難しい。追い打ちをかけるようにーー


 ズジャッ


 ーー聖精霊神サケルに貫いた手を破王は振り抜き聖精霊神サケルの体をくの字に曲げる。その反動を使い聖精霊神サケルは破王フィーニスの右手を切ろうとして……再び体を貫かれる。今度は胸ではなく首の部分だ。首が体から落ちていないのが不思議に思えるほどだ。


「まだ、終わりじゃないだろ?」


 戦いはまだ続く。



次話は4月15日(予定)です。

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