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ユリカ界  作者: 碾貽 恆晟
第1部 2つの勇者の物語
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第3章 第5話





 都市キルアの4つの大門は固く閉じられた。向かい合った大門を結ぶ大通りは円の形をとっている都市キルアを四等分する。そして、そのちょうど向かい合った大門の大通りがちょうど交わるところに領主の館は存在する。そして、そこには今、多くの人が集まっている。医療を行うために作られた布団の敷かれた場所、予備の武器を置いている場所。たった数分で作られた簡易施設にいるのは9割が非戦闘員の人々だ。


 戦闘員は大門や、街を囲む壁の上。そして、街を出た砂丘の上で領主お抱えの近衛兵達は37体のゴーレムを見やる。人型のゴーレムは一列になって街の人々を威圧するように悠々と、それでいて堂々と歩く。そして何より、一際大きい獣のようなゴーレムが街に緩やかな傾斜がついてる砂の上を降りてくる姿は人々に恐怖を催す。


 頃合いを見計らったように、人型のゴーレムと獣のようなゴーレムは足を止める。獣のようなゴーレムの肩に座っていた少年が立ち上がり声を発する。


「初めまして、僕はこの街を滅ぼせって破王様に言われたからやってきたんだ。別に恨んでも無駄なあがきをするのもいいけど。つまんないことはしないでね。間違えて国を消滅しちゃったらいけないから」


「それがお前の言い分か」


「そうだよ。だから死んでね」


 その言葉が戦闘開始の合図になった。まず、先に仕掛けたのは都市キルアの人々だった。魔法使い達が放つ色取り取りの魔法はゴーレムを破壊戦へとその猛威を振るうーーはずだった。魔法の直撃したあとは砂丘の砂がもうもうと立ち昇り、ゴーレムの姿を晦ます。


 魔法使い達は可能な限り魔法を打ち続け、ほとんどの人が魔力を多量に消費し魔法を使えなくったため、前線から魔法使い達は引いて行く。代わりに、剣や槍などの武器を持った屈強な近衛兵などの男性達が前線に現れる。それだけではなく、女性もいるが、どちらかというと女性は魔法使いになるものが多い為、現在は前線から後退しているものが多いい。だからこそ、女性が現在前線にいるというのはとても目立つ。しかもそれが5人姉妹となれば尚更のこと。5人姉妹は、背の高さや、足、手などの特定の部位を特筆することもできるが、防具は、直剣のセイバーを手に持ち、銀色の鎧に体を包み、頭には防具がなく、髪は肩下まで伸ばし、統一しているようだ。


 そんな、姉妹達に声をかける者がいた。この戦いの総司令官を命じられた者だ。


「どう見る」


「会議で散々話し合っただろ」


 鬱陶しげに答えたのは姉妹の中で最も背の高い長女だ。


「それでもだ。今見てどう思った」


「……得体が知れない」


「ただのゴーレムじゃないってか」


「見えるだろ? あの一番大きいゴーレムの肩に座ってる最初の口上を述べたやつだ」


「あぁ、結局誰なのか見当がつかなくて保留にしたやつだろ」


「あれは人じゃない」


「……それには賛成しなくもないが、どうしてそう思う」


「直感だ。それと…多分だがあれは魔王か、それの側近か、それに類する存在だろう」


「……止めてくれ、お前らの直感は嫌になる程よく当たる」


「事前にその可能性が分かるだけいいだろ」


「そうそう、変な言いがかりはやめてよね。直感が当たるんじゃなくて、事実が直感を告げるの」


 次女が二人の会話に割り込んで文句のようなものを垂れる。


「……お前らの方がよっぽど人外に感じやがる」


 それを聞いて総司令官は顰めっ面を隠そうともせず言う。


「その考えも今日で多分、終わりだよ」


 三女でありながら最も背の低い彼女が皮肉交じりにそう述べる。


「………聞きたくないが一応聞こう。なんでだ?」


「本当の人外っていうのを見ると思うから」


 その言葉が三女から発せられたとき、ゴーレム達を覆い隠していた砂煙りが晴れていく。誰もが、崩れ、原型をなくしたゴーレムを拝めると思っていた。少なくとも、一体も倒れ伏していないなどとは考えもしなかった。そして、その結果を裏切るように、無傷で攻撃を受ける前と変わらぬ姿を見せるゴーレム達。


 それは人々に圧倒的な格の違いを分からせることだった。


「酷い挨拶だね〜。けど、野蛮人にはそれなりのやり方があるのかな? だったらこっちもそれに則って返事をしないとね〜」


 その声はやけに場所が砂丘であるにもかかわらず、響く。


 誰もがその言葉を聞き、そして、恐怖する。


 人型のゴーレムは早足に歩き出す。そして、その速さは人型ゴーレムの足幅によって普通の人が全力疾走をする速さとなんら遜色のない速さだ。それは、『普通の人』が全速力で走った程度の速さと言える。戦闘を日常的にしている者にとってそれは少し速い程度にしか感じられない。それを見抜いた総司令官を任された男は声を上げる。


「案ずることなかれ、相手はそこそこ丈夫な的でしかない。貴様らは的に負けるような玉ではないだろう? 出撃‼︎」


 その言葉とともに総司令官は早く駆けていく。片手剣を右手にだらりと垂らす。しかし、その目は獲物を見るような残忍さを孕んでいた。それを見たからだろう、彼、彼女らは直ぐにほうけていた思考が正常に戻り、目の前の戦いに注意を向ける。総司令官の突撃に遅れないように駆け出していく。そこに戦術はあれど、戦略はない。しかし、それは何も考えていないのではない。ただ必要がないだけだ。寄せ集めの戦闘集団。しかし、全員戦闘経験は豊富な者が多いい。作戦会議の時に言われた言葉は簡単にすれば、こう集約される。『あのゴーレムどもがこちらに戦意を見せたら何が何でも倒せ。作戦については何も語らない、ただ言うとすれば、あれを戦うために臨機応変にしろ。相手の戦闘能力は分からない。しかし、それでも戦わなくてはいけない。ここにいるのは歴戦を潜り抜けた猛者が多数存在する。作戦を決めてそれに従ったため本来の力を発揮できなかったものなら意味がない。


 今回の戦いにおいて重要なことは援軍が来るまで悠長に待ってられないのだ。理由は不明だが転移門や魔道通信機は使用不可能であり、外部との連絡手段がない。時間稼ぎをするならまだしも、倒さなくてはならないとなると大まかな段取りを決めたあとは各自臨機応変にやってくれというのが一番手っ取り早いと都市キルアの上層部は判断したのである。上層部の誰もが負けるなどとは考えてはいなかった。誰かが死ぬかもしれない。その程度の認識だったのも今回の判断を下した理由の一つに挙げられるかもしれない。


 どっちにしろ戦いは始まった。誰もが駆け出し、剣を掲げ、ゴーレムを倒さんと動き出す。


 一番戦闘を走っていた総司令官の男の横を5人の姉妹と一人の男が追い抜いていく。


 5人の姉妹は一体の人型ゴーレムに狙いをつけ走っていく。最初に四女と五女が人型ゴーレムの両足を剣で斬る。両足を斬られ支えを失ったゴーレムは前に倒れていく。すかさず次女と三女が両手を肩から腕を斬り落とす。最後に長女がゴーレムの人にとって首にあたる部分をいとも簡単に刎ねる。


 そして六つに切り分けられたゴーレムはただの砂に戻っていく。あとには盛り上がった砂山ができているだけだ。


 一方、もう一人の総司令官の横を追い抜いた男といえば、ゴーレムを自分の作った水が満タンに入っている結界の中に閉じ込め、水流をつくり、ゴーレムは水に砂の肉体を削られ水を濁していくだけだ。


 一瞬にして、37体の中2体を戦闘不能に追い込んだ。しかし、逆に言えばまだ2体である。戦いはまだ始まったばかりだ。



次話は4月7日(予定)です。

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